表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

5 紅い女子高生

 深夜にコンビニで買物を済ませていたハルが、目玉焼きとトーストを用意したので、マイはテーブルについた。

 しかしメルクロフは用意された朝食をとらずに、管理会社でマンションを正式に契約してくるらしい。


「せっかく、メル先輩の分も作ったんだから、食べていけば良いのに」

「メルちゃんは慎重なんだよ」

「ボクに毒なんか作る暇ありませんよ」

「だよね〜」


 ハルが時間跳躍したのが昨日と限らなければ、彼女の用意した朝食をとらないメルクロフの判断は、けして間違いではなかった。

 それはマイだって気付いているのだが、仲間を殺すにせよ、仲間に殺されるにせよ、三人が疑心暗鬼になっている今の段階で動くのが、得策ではないと考えている。

 仲間殺しは全てを把握して嘘をつくが、下手に動けば、返り討ちにされる可能性があるからだ。

 つまり部屋に残ったハルやマイが、もしも仲間殺しでも、殺し屋稼業の相手に仲間殺しだと気付かれたら、殺される可能性がある。


「マイ先輩は、誰が仲間殺しだと思います?」

「その質問は答えづらいよ」

「なぜですか」

「だって私が仲間殺しなら、メルちゃんを疑ったせいで、ハルちゃんがメルちゃんを殺しちゃうかもしれないでしょう」

「マイ先輩が仲間殺しなら、任務を失敗する方を疑えば、殺す手間が省けて良いじゃありませんか」

「あのね、それだと追加されたハルちゃんも、任務遂行できないから、私的にアウトなわけよ」

「マイ先輩が仲間殺しなら、私に任務遂行させなきゃ駄目なんですね……。ところでマイ先輩は、仲間殺しなんですか?」


 マイは食べ終えた食器をキッチンに運ぶと、シンクにもたれて肩を竦めた。


「それこそ愚問でしょう。私が仲間殺しだと答えれば、ハルちゃんに殺されちゃうかもしれないし、違うと答えたところで、ハルちゃんが仲間殺しじゃないなら、メルちゃんが仲間殺しだと考えて、メルちゃんを殺るかもしれない」

「なんでボクが、仲間殺しを返り討ちにする前提なんですか?」

「私失敗しないので」

「ボクは失敗する前提なんですね」


 もっともハルが仲間殺しなら、マイかメルクロフがターゲットである。

 しかし三人が殺し屋ならば、仲間殺しも確実にターゲットを殺せる状況でなければ動けない。

 三竦みである。


「さて私は殺し道具を仕入れつつ、獲物を確認して来ようかな。ハルちゃんも、つまらないこと気にしないで、色々と準備があるんじゃない?」

「つまらないですか」

「任務を成功させれば、仲間殺しに殺られないし、まずは与えられた任務を優先すべきでしょう」

「それはそうですね。って、それじゃあマイ先輩の任務は、仲間殺しじゃないのですね!」


 ハルは嬉々としているが、マイが仲間殺しならハルを油断させるために、嘘をついているかもしれない。

 もちろん、ハルがマイを油断させるために、演技しているかもしれない。


「ハルちゃんは、ターゲットの追跡方法は解る?」

「それくらいは解りますよ」

「それじゃあ今夜も、お互い生きて会えると期待しているね」

「不吉だな〜」


 マイが部屋を出ていくと、ハルは手首のインコムでターゲットのいる方向を確認した。

 インコムは、ターゲットの生体反応を追跡して位置を矢印で指し示している。


「マイ先輩は、本当に可愛いなぁ。女の子は可愛いまま、死んだ方が良いんだよね」


 紅い女子高生と恐れられたハルは、学生寮で同居していた十人の同級生を刺殺した殺人鬼だった。

 犯行動機は、同級生が談話室でボーイフレンドの話で盛り上がっていたことに、嫉妬しただけの衝動殺人である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ