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3 この中に仲間殺しがいる(ゲームスタート)

 素性を明かしたマイ、メルクロフ、ハナだが、大きな問題に直面した。

 彼女たちの暮らしていた未来は、人類滅亡の危機にあり、三人は人類滅亡を回避するために、過去に時間跳躍(タイムリープ)して人類滅亡に関わる人物(ターゲット)を暗殺、歴史改変を行っている政府公認の殺し屋(シリアルキラー)である。

 任務は、予定外の歴史改変を避けるために単独行動で行う。

 つまり同じ時間軸には、一人のターゲット、一人のシリアルキラーが基本であり、三人がタイムリープすることは有り得ない。


「先輩たちは、どうして難しい顔してるんですか?」


 ハナは今回が初任務の新人なので、マイとメルクロフがソファで向き合って睨み合う理由が解らなかった。


「ハナには、ここに三人も殺し屋のいる意味が解らないのですわ」

「はい、全く解らないです。ボクら三人で協力すれば、仕事が楽で良いじゃありませんか?」

「あのね、そんなお気楽な状況じゃないのよ」


 マイは顎で指すと、ハナをメルクロフの隣に座らせた。


「うちらの中には、暗殺に失敗する奴がいて、そいつの代わりに任務遂行する奴と、暗殺に失敗した奴を殺して、予定外の歴史改変を阻止する奴がいるわけ。ハナちゃんには、この意味が解る?」

「なんとなく……いいえ、本当は解らないです」


 マイが肩を竦めると、メルクロフが代わりに説明する。


「歴史改変が可能な理由は、私たちの世界が一つしか存在しないからですわ。だから過去に向かった殺し屋Aが予定外の歴史改変した場合、殺し屋Bが改変される前にAを暗殺して、予定外の歴史改変を未然に防ぐのですわ」

「それなら、ボクにも解ります。でも、わざわざ任務中にAを殺さなくても、タイムリープ前に殺せば良いじゃありませんか?」


 メルクロフも肩を竦めたので、マイが説明を引継いだ。


「時空加速器の問題で50年未満の時間跳躍が不可能だから、普通は任務に失敗したAの両親や先祖を暗殺して存在を消去するのよ。でもAに繋がる過去に、人類を滅亡の危機から救うような人物がいたら? Aが過去に飛んでいる最中に追い掛ければ、ピンポイントに暗殺することが可能でしょう」

「理解した! ボクらの中には、任務に失敗して殺されるAが……ひぃッ、ボクじゃありませんよ! ボクは確かに新人ですが、殺しの腕前は超一流なのです。女子高生十人殺し事件をご存知ですか? 十人殺しの犯人が、ボクなんですよ」


 政府公認の殺し屋は人殺しが任務なので、殺人事件の死刑囚を訓練して、恩赦と引換えに任務に就かせていた。

 ハナは未来の世界で、白いセーラー服を鮮血に染めた殺人鬼『紅い女子高生』と呼ばれた死刑囚である。


「私も『シベリアの魔女』と、恐れられた連続殺人犯ですわ。ちなみにマイは、なんて呼ばれてましたの?」

「私が呼ばれてたのは囚人番号くらいで、あんたらみたいに二つ名がなかったね。あ、でも学校では『女番長』と、呼ばれてたわ。紅い女子高生より、女番長の方が強そうじゃない」

「マイ先輩、ボクと張り合うなんて可愛いです」

 

 ハナが事態を理解したところで、現時点では、誰が任務に失敗するのか解らないし、誰が任務に失敗する者を殺すのか、本人以外に解らない。


「確実なのは、仲間殺しだけが全てを知っている」

「そうか。ボクら三人の中で、仲間殺しだけターゲットが違うんですね。仲間殺しは、任務に失敗する者を知っているから、追加された者も見抜ける」


 メルクロフは頷くと、二本指を立てた。


「誰が任務に失敗するのか解らないなら、私たちの取るべき道は二つですわ。自分が任務を失敗すると仮定するなら、仲間殺しを見つけて先に殺るか、任務を成功させられると仮定すれば、与えられた任務を終わらせて未来に帰還する−−ですわ」


 腑に落ちないハナは『本末転倒じゃありませんか?』と、メルクロフに問い掛けた。

 自分たちの任務は、予定外の歴史改変を防ぐことだから、仲間殺しを返り討ちにすれば、予定外の歴史改変を防げない。


「ハナは、おバカさんなの? 何もしなければ、仲間殺しに殺されてしまうのですわ。生き残るための返り討ちを否定するなら、ハナが仲間殺しの可能性がありますわ」

「ち、違いますよ」

「私とマイは、ここに到着するまで行動をともにしていますわ。マイが仲間殺しなら、いくらでも殺す機会がありましたし、それは私だって同様ですわ」

「それを言うなら、メル先輩だって、ボクを殺しに来た仲間殺しではありませんか。この部屋を先に見つけたのは、ボクなんですからね」


 二人のやり取りに沈黙していたマイが、いきなりソファに倒れ込んで寝息を立てた。

 マイは時間跳躍した直後、公園で警察官に追い回されていれば、難しい問題に直面して、眠気が限界に達してしまった。


「メル先輩は、ここに自分を殺しにきた仲間殺しがいるのに、無防備に眠れますか?」

「自分が仲間殺しなら、眠れるのですわ」

「確かにそうですが、マイ先輩は違う気がするんですよね。メル先輩、天使のような無垢な寝顔を見てください。マイ先輩は、ボクが殺した女子高生と同い年くらいかな……めっちゃ可愛いです」


 ハナは寝ているマイを抱き上げると、寝室で寝かせると言うのだが、メルクロフは、もしもハナが仲間殺しなら、もう二度と生きているマイと会えないと思った。

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୧(^ 〰 ^)୨

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