閑話④
「ラルフ。
結局、元に戻ってしまって。
……ごめん、本当に」
「謝ることじゃないですから。誰も悪くないことです」
「つらくはないかい」
「つらくないと言ったらうそになりますね。
ただ、戸惑いますね。
レオンにしろ、フェリシア……お嬢様にしろ、別人です」
「魂が違うからね。そういうことになるよ」
「前に話してくれたように、双子の片割れです、と言われた方が現実味が出ます。
返答がイメージと違い過ぎて、どうしていいものか迷いますよ」
「私は2年前ラルフに、戻る方法について伝えない方がよかったかと後悔することがあるよ」
「そんなことないです。
俺は知っていて良かったです。
彼がフェリシアのままでも、元へ戻っても。
結局、俺とは離れていく。
どういう道を選んでも、最初から詰んでるんですよ。
それなら、屋敷にいる時から学園にいる間だけでも、できる限り大事にしたい。
そう思うきっかけになった」
「そう」
「塔から降りてきて、顔を合わせた時が一番つらかったなあ。
こんなに早く失うなんて思っていなかったんですよ。
あと2年あると思っていたんです」
「私たちが生きた未来とは大きくずれ、時間の流れも出来事も変わってしまったからね」
「お嬢様は、フェリシアに戻りたかったんですか」
「本心を言えば、レオンでいたかった。
冒険者として生きていたかった。
フェリシアの肉体に戻ると、昔を思い出す。
しがらみにとらわれるようで、不自由極まりない。
体を鎖でがんじがらめにされているように重い」
「レオンの魂が入っていたフェリシアは楽しそうでしたよ」
「それは君がいたからだろう。
ねえ、ラルフ。
私の前では強がらなくてもいいし、泣いたってかまわないんだよ」
「ありがたい言葉ですが。
つらいのか悲しいのかも、分からなくなってますよ。
俺にとっては、彼女は死んだんですよ」
「確かに、そうとも言える」
「口にするのもおこがましいのは分かっているんです。
彼女をどう想っているかなんて。
子どもの頃、木登りをするフェリシアを迎えに行くのを誰よりも楽しみにしていました。
フェリシアを追いかけるのも、迎えに行くのも自分だけの特権だと思っていたんです。
喪失による痛みを俺は軽視していたんです。
失う、という現実を頭で分かっているふりして、本当は何もわかっていなかった。
こんなに痛いなんて思わなかった。
もしこの痛みを先に知っていたら、彼女を失うことになるあらゆることと、
もっと俺は戦えただろうか……」
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