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村人だけど、わけあって追放令嬢を破滅から救うにはどうしたらいいか真剣に奔走することになった  作者: 礼(ゆき)
10万字版

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20,秘密を共有する

 屋敷に帰ってきて、数日。

 自室の机に伏して、悶々とすることが多くなった。


 なにもうまくいかなかった。

 婚約者の話は受けることになる。

 未来には破棄されるのに。


「あの時、どうして取り巻きの中に入らなかったんだろ」


 そもそも、あの行動をとる発想が浮かばなかった。


 発想が、どこまで行っても村の子供の域をでていないんだ。

 大人が決めることだとしたら、大人に言えばいいと思ってしまう。


 ここは村とは違う世界なのに。


 安易な行動は役に立たないどころか、事態をよからぬ方向へ進めていく。


 ラルフにすべて話して、協力してもらおう。

 そう思っているのに、いまだ話し出せずにいた。


 まず二人きりになる場を考えないと。

 他の使用人とか、家族には聞かれたくない。

 ラルフ以外の人が、信じて協力してくれる望みはない。

 状況を作って、ちゃんと話したい。

 思考がループするばかりで、動けない。

 情けない。


 その時、自室の扉が二度ノックされた。

 返事をしながら向かい、扉を開けた。

 ラルフが立っていた。


「お嬢様、少しお邪魔してよろしいですか」


 いつもと変わらない丁寧なあいさつ。

 俺はどうぞと招き入れる。

 ミラが世話係になり、ラルフは会いに来ても廊下までと遠慮するようになった。

 部屋に入るのは久しぶりだった。


「今日は、父にお嬢様と部屋で勉強をしますと出てきました。

 ここなら、誰に聞かれる心配もないかと思います。

 この前の続きを伺いたいのです。

 王太子様やアリアーナ様が現れて、うやむやになってしまったあの件です」


「覚えていてくれたんだ」


 言い出せずにいた俺の前に、わざわざ来てくれる。

 そういう気遣いができるラルフにはいつも助けられている。


 ちゃんと話すからまず座ろうと、部屋の小さな二人掛けのソファーに並んで座った。


 足を椅子に乗せ、背もたれに左肩を預ける。

 体をラルフの方に向け、楽な恰好をとった。

 ラルフは姿勢良く座る。

 顔だけ少し、俺の方に向けている。


「ここにいるフェリシアに宿っている魂は、フェリシアと一緒に18歳で殺されるレオン・エルファーという村人の魂なの」


 フェリシアの姿と声をもって、誰かに本来の名を告げる日が来るとは思わなかった。


「フェリシアの体にはレオンの魂が入っていて。

 レオンの体にはフェリシアの魂が入っている」


 ラルフは黙って聞いている。


「知っている未来を大まかに伝えると……」


                ☆


 ひとしきりこれから起こる出来事を洗いざらい話しきった。


「一人ではおてあげ」

 もろ手を挙げ、降参のポーズをとる。

「婚約破棄されないように、婚約自体なければいいと思ってとった行動は裏目に出てしまった」


 ラルフは口元に手をやる。

 考え込んでいるそぶりを見せる。


「……すでに、出来事が変わってきてますよね」


「こうやってフェリシアとラルフが一緒にいるだけでも、知っている未来とはだいぶ違うわ」


「すでに、記憶している過去とは違っているなら。

 殺される事情は残っている可能性はあるでしょうけど……。

 これからの出来事だって変わってくるかもしれないですよね」


「確かに。

 元のフェリシアの人生では、ラルフと一緒に行動することはないもの。

 16歳でこちらにレオンが出てくることもないし。


 レオンの魂から発せられる聖女の力は、私独自のものらしくて。

 本来のフェリシアは聖女の力は使えないのよ」


「聖女の力がからむと、より事態はご存じの未来とは変わってきそうですね」


「あと、フェリシアの実のお父さんは王様だったし」


「そもそも、俺がフェリシアから離れるなんて、ありえないし……」

 ラルフがピタッと止まる。

「……今、なんて言いました」

 青ざめた顔でこちらをむく。


「フェリシアの実のお父さんは王様だってこと」

 そんなに驚くことなのか。


「なんでそんなことを知っているんです」


「それは、大人の魂が入って生まれてきたから赤子の頃から記憶があるの。

 平民の家で産まれ、最初は白銀の髪をした母親と二人きりだった。

 お父様が後見人みたいなお世話係みたいな感じで、色々助けてくれていたの。

 そこに時々、質素な恰好で黄金色の髪の男が訪ねてきた。

 その男性と母親との関係を見て、この人が父親だとわかったのよ。

 母親はフェリシアを産んで1年後に亡くなった。病死だと思う。

 その後、大人の話し合いの末にここに娘として受け入れられたの。

 

 今回の夜会で、王様と謁見して、同じ人だって気づいたの。

 フェリシアの実のお父さんだって」


「まさか、そんなことが……」


「王太子様とは、フェリシアは異母きょうだいになるの。

 だから、ちょっと気になってたんだけど

 そもそも、フェリシアと王太子様って結婚できるの」


「貴族の異母きょうだいなら、場合によっては婚姻はありえます。

 血筋の方が重要視されますから。

 前例はありますよ」


「貴族って、そういうものなの」

「そういうものです」

「平民の家の子にはわからないわ」

「10年フェリシアとして生きてきて、それはないでしょう。

 前世の常識を引っ張りすぎです」


「そのせいで失敗ばっかり。

 どうしたらいいか分からなくなってしまったわ」


 ラルフは腕を組んで考え込む。


「このままいくしかないと思います」

 眉間にしわをよせて考える。


「なぜ」


「記憶している未来と違うんです。

 その現実を作っているのは、

 あなたの突拍子もない行動です」


「だから、反省して……」


「反省して治るなら、最初から奇行を選択しません」


「ひどい!」


「ひどくなんかないです。

 ひどい目を見ているのは、俺の方です」


 正直、ぐうの音も出ない。


「単純なんですよ。

 熟考して行動するより、思い付きの行動が多い。

 元々の性分を治すなんて不可能です」


「容赦なくない、ラルフ」


「経験から学んでおります」


 優秀さが鼻につく。

 いいですかとラルフは続ける。


「たとえ、村人の記憶をもって生まれても、今のあなたはフェリシアなんです。

 この世界を宰相家の令嬢であるフェリシアとして生きているのは、あなた自身ですよ。

 その発言、行動が、フェリシアとして評価されていくのです」


最後まで、お読みいただきありがとうございます。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、


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