映画『ブルージャスミン』と『万引き家族』
肝心なところのネタバレしない程度に、映画の話をします。
ウディ・アレン監督の映画を見たことがある方はいますか?
私は『ブルージャスミン』と『マジック・イン・ムーンライト』、『女と男の観覧車』しか見れてないので、他の作品はどうか知らないのですが…ちょっとオシャレで懐かしい戦前・戦後あたりの外国を舞台に、ダークで生々しい人間模様をテーマにしていて、ハリウッドの他の映画とは一風変わっている感じの作風なんだろうなぁって印象を持ちました。
とにかく、「しんどいけどおもしろい」んです。
その中の『ブルージャスミン』は、個人的に映画の中で一番しんどいストーリーでした。
だって!主人公ジャスミンの現実逃避具合とか、自己中加減とか、人に迷惑かけても平気なところとか、もう自分に刺さって刺さって心抉られるんですもん。
ウディ・アレン監督は、自己愛性人格障害者が身近にいるんだろうか…ってぐらいにリアル。
私はこの映画、公開当時は気になりつつも見に行けませんでした。
だから、後日レンタルして見てから、「ああ、あの時は到底受け入れられない内容だって、自分はどこか感じ取っていたんだな」と思いました。
他のウディ・アレン監督の映画も、公開しているのを知っていても見にいけない時があります。
それだけすごい監督なのだと、私は思ってます。
話は変わりますが、同じくしんどかった作品に、是枝裕和監督の『万引き家族』。
万引きをはじめとした犯罪を、本格的な仕事にしている、いわゆる本当の底辺家族の話です。
だけど彼らは彼らなりに楽しく生きようとしていて、本当に「家族」なんだなあって私は思いました。人のために自分を犠牲にできるほど強い人間ではなかったかもしれないけど、社会的には「クズ」かもしれないけど、それでもこれも一つの「家族」だなって思えました。
本当に、やってることは最悪なんですけどね。
でも、途中で家族の一員となった女の子にとっては、本当に温かい思い出になったんだろうと思います。
まだ完全に絶望していない幼い頃に、この家族の一員になれた。だからこそ、この家族のために何かしたくて、ラストにあんなことしたんだろうなって思います。
そしてまた、その家族をとりまく人たちの優しさが痛い。
そこで、また自分が周りの人たちを傷つけた時の、なんとも言えない表情を思い出して、鬱になります。
もう見たくないけど、この映画も本当に凄いと思います。
この映画、一際思い入れがあるのは、自分の過去を思い出すからだと思います。
私は万引きして生計を立てるようなことはしたことありませんが、かつてどこにも居場所がなさすぎて、二週間ほどホームレス生活をした時がありまして。その時に、万引きしたいという思いが何度も湧き上がったことがあります。
結局、そんなことをすることはありませんでしたけどね。
情け深い不動産の方に、当時の貯金(本当にゴミのような額)で住める、死人が出たという汚くて安い部屋をなんっっとか紹介してもらって、ギリギリ生きていけました。
けど、部屋を契約できたのは、ちょうど今頃。7年前?の12月7日。
これ以上部屋を借りるのが遅ければ、本当に犯罪に手を出していたかもしれません。でもそんな状況ですら、実家に帰るのは嫌だったんですよね。
笑ってーーとまではいかずとも、底辺なりに自分が好きなように生きていけたあの時は、しんどくても悪くはなかったと思います。今なら。
当時はしんどすぎて、「やっぱり家に帰りたい」って心折れてた時もありました。けど、笑えないなら帰っても仕方がないんですよね。