VRMMO 始めました。
オレの前に浮かび上がったウインドには、サブクエストの依頼文が書かれている。この屋敷のマダムが探し物を手伝ってくれと頼んできたのだ。
依頼主は成金マダムと表記されているが、このウインドはNPCに見えない設定なのだろうか。
「僕たちプレイヤーにしか、神の掲示は認識できないよ」
「なんとも都合のいい設定だな。これもVRMMOならではってか」
学校の友達に誘われて世界初のVRMMOゲームを始めたのだが、従来のゲームとは勝手が違うことが多くてまだ慣れない。
「この成金マダムは資金を稼ぐコスパがいいって、新規のプレイヤーに人気なんだ」
「たしかに探し物にしては報酬が豪華だな。さすが成金マダム、金銭感覚が狂ってやがる」
「アンタ達、さっきから失礼なことを言ってないかい?」
さてと、依頼文を確認したらOKボタンをタップだ。これで自動的に受注が完了したことになる。
「ボロ雑巾が屋敷を彷徨くのは我慢してあげるから、さっさとアタクシのイアリングを探し出してちょうだい」
いきなりの暴言だが、コスパのためには我慢してやるか。
「貧民らしく地べたを這い回ってでも見つけなさいな」
ほんとに新規に人気なのか? ログアウトしちゃうぞ?
「まさかここまでとはね」
「ゲームだから仕方ないさ。早く達成して――」
「危ない、後ろ!」
パリーン……!
「あ、やべ……」
ベルトに提げていた剣がツボに当たってしまった。
剣を提げているのをつい忘れちゃうんだよなぁ。
「もしかして弁償か……?」
「大丈夫だよ。これはただのオブジェクトで、プレイヤー全員が部屋を出たら再生されるから」
ほ、それなら良かった。さすがゲーム。
「ってことは、もしかして。……あった! 割れたツボから金がドロップしたぞ!」
これぞRPGの醍醐味。VRMMOになっても同じだった。
「ツボを見つけたよ!」
「叩け、叩けーー!」
カチャーン、カラーン
「あ、アタクシのコレクションが……」
ガンガラ、ガッシャーン!!
「あぁ、あぁ……」
「おい! メッチャ高そうなツボが――」
「そ、それだけは止めてちょうだ――パリーン――ギヤアアァァァ!!!」
500G、いただきでーす。あ、ついでにイヤリングも出てきたぞ。
「成金マダム、イヤリング見つけたからクエスト達成でいいよな」
「すごい儲けだよ。コスパの理由もわかるね」
1日に1回の制限はあるみたいだけどな。
「それじゃ、明日も来るから!」
「おじゃましました!」
あはは、なんかスカッとした。