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生まれ変わった《剣聖》は楽をしたい  作者: 笹 塔五郎
第一章 《剣聖姫》護衛編
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7.護衛の理由

 本来一限の講義ではなかったために入れ替えという形で調整され、僕は一応担任兼剣術講師として認められることになった。

 さすがに手も足も出なかった生徒達が反論してくることもなかったが、剣術の方は他のクラスの面倒も見る必要がある。

 つまり、また同じようなことが発生するかもしれないわけだ。

 まあ《剣聖姫》に勝った、という実績が広まれば特にそう言った話も出てこなくなるかもしれない。


「それで、登校初日から生徒達をぶっ飛ばしたわけか」

「僕は講師なので登校でもないですしぶっ飛ばしたわけでもないですよ。ただ、講師と認められるのに必要なことをしただけです」


 学園の応接室にて、わざわざ初日からやってきたのはレミィルだった。

 騎士団長として業務はたぶん部下に任せて抜け出してきたのだろう。

 この人はこの人で、結構忙しい人のはずだ。


「僕の話をわざわざ聞くために来たんですか? 呼んでくだされば僕から行きますよ」

「あっはっは、部下の状況を確認するのも私の仕事だよ」

「サボりに来た、と」

「部下の状況確認、だ。それで、イリス嬢ともやりあったのか?」

「まあ、一番強く反論したのは彼女ですからね」


 ――イリス・ラインフェル。彼女が僕のことを良く思っていないというのはよく分かる。

 何せ年齢も下の、僕みたいな子供に教えてもらうことになるのだ。

 四大貴族に数えられているのだから、そういうことを屈辱と感じるところはあるのかもしれない。


「ふむ、どうだった。《剣聖姫》は」

「そうですね。立ち合いは短かったですけど、学生のレベルはとっくに超えていると思います。騎士団でも勝てる人間はそうそういないかと。まあ、早い話彼女が護衛をいらない、というのも頷けます。学生のレベルなら、すでに最強と言っても差し支えないかもしれませんね」

「君にそこまで言わせるのなら十分だな。それで、実際にいらないと思うか?」


 レミィルが再度質問を重ねる。

 何となく、彼女の言いたいことが理解できた。


「団長の想定がどのレベルを指すかによりますね。僕しか空きがなかったのではなく、僕にしか任せられないだったのだとしたら、それは必要だと思いますが」


 僕がそう答えると、レミィルは納得したように頷き、


「なるほど。一先ず君に任せて正解だったようだね」

「……そう言えば、きな臭い動きがあるとか言ってましたね。それに関係が?」

「ああ、その通りだ。まず言えることは――彼女は命を狙われている」


 レミィルの表情が鋭くなる。

 どうやら、ここからは真面目な仕事の話のようだ。


「狙われている、というのはイリス嬢がやはり次期《王》候補として名高いからですか?」

「その可能性は高いな。他にも候補はいるが……今のところ彼女が断トツだろう。そうなってくると、彼女が邪魔になると思っている者が出てくる」

「現王も彼女のことを認めているのなら、それは明確な反逆とも言えると思いますけど」

「ああ、その通りだ。まだ調査中の段階ではあるが、動きがあれば都度伝えよう」


 そう言って、レミィルが席を立つ。

 剣聖姫の護衛――僕としては楽ができそうな仕事だと思っていたのだけれど、どうやらそういうわけにもいかない雰囲気を感じさせた。


   ***


 授業中だというのに、イリスは集中できていなかった。

 席に座りながら、拳を強く握り締める。

 負けた――それも、自身よりも年下の相手に。

 時間ギリギリだった勝負も、イリスには分かる。あれは、アルタが時間切れがくると分かっていたから避けようとしなかったのだと。

 仮にアリアと連携して攻撃していたとしても、アルタに一撃を与えられるビジョンが見えなかった。


(あんな強い子がいた、なんて……)


 《剣聖姫》と呼ばれるようになってからも、イリスは強くなるために修行を欠かしたことはない。そう呼ばれるようになってから、負けたことだってなかった――今日初めて、自分よりも確実に強い相手に出会ったのだ。


(……いえ、まだ私も本気だったわけじゃない)


 お互いに模擬剣での試合――イリスも、そしてアルタも全力ではなかったと言える。

 それならば、次に気になることは彼の本気だ。

 年下だというのに学園の講師になるというアルタの実力がどれほどなのか――イリスはそればかり気にして、中々授業に集中できなかった。

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表紙
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― 新着の感想 ―
[気になる点] まだ学生であり若いのでいいのですが、王の代替わりっていつ頃なんでしょう? 現状ではイリスの性格的に王になっちゃダメな奴。という印象だったり。 ただ強ければOKって訳でもないでしょうし……
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