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生まれ変わった《剣聖》は楽をしたい  作者: 笹 塔五郎
第二章 《暗殺少女》編
43/189

43.朝の訓練

《練武場》にアリアとイリスの姿があった。

 アリアは短刀を、イリスは細剣を構えて向き合う。


「慣らすって言っても、加減はいらないからね」

「しないよ。するとイリス怒るから」

「べ、別に怒ったりはしないわよ」


 そうは言っているが、イリスが勝負事にこだわりを持っているのは知っている。

 特にアリアに対しては、互いの実力が均衡しているだけに手を抜いて欲しくないらしい。

 ここ最近では、イリスの方が実力的には上であるようにアリアは感じているが。


「じゃあ、いくよ――」


 その言葉と共に、アリアは駆け出した。二本の短刀を構え、腕を交差させて姿勢を低くする。

 イリスのどんな動きにも対応できるよう様子見する形だ。

 他方、イリスがすぐに動くことはない。

 アリアには搦め手が多く、動きの素早さでもアリアに分がある――だからこそ、アリアが来るのを待っているのだろう。


(……動きに無駄はない。怪我の影響はなさそう)


 本気を出すと言っても、アリアは当然のようにイリスを心配する。

 彼女が無茶をしやすいことは知っているし、無茶をしたからこそ怪我をしたのだから。――《剣客衆》との戦いが尾を引く可能性もあったが、その心配はなさそうだ。

 アリアは距離を詰める。まずは一撃――短刀と細剣がぶつかり合う。

 お互いに模擬剣を使っているとはいえ、ぶつかり合ったときの衝撃は本物だ。

 アリアは一度距離を置いて、再び様子を見る。

 今度は、イリスの方から動き出した。


「ふっ――」


 一呼吸。イリスが地面を蹴って、アリアとの距離を詰める。

 迫るのは剣先――アリアは踊るように身体を回転させて、イリスの剣撃をかわす。

 そのまま、一本の短刀を投擲した。

 イリスもまた、その攻撃が分かっていたかのように動く。

 姿勢を低くしてそれをかわすと、イリスの猛攻が始まる。


(良かった。大丈夫そう)


 アリアはイリスの攻撃を防ぎながら、呑気にそんなことを考える。

 二刀で初めてイリスの剣速を上回る――片方だけでは、アリアはイリスの剣速に劣る。お互いに本当の意味で全力であるのなら、制服の下に隠した刃を振るうことになるだろう。

 逆に言えば、イリスは《紫電》を振るって戦うことになる。

 そこまで本気の戦いをイリスとはしたことはない。

 だが、少なくとも今のイリスは、アリアから見て怪我の支障は見られなかった。


「――」


 キィン、と短刀が弾かれる。

 アリアは地面に手をついて、跳躍する。二、三度身体をひねりながら距離を取る――地面に落ちた短刀を拾うためだ。

 拾ったと同時に動きを止めるが、眼前に迫ったのはイリスの細剣。ピタリ、とお互いに動きを止める。


「……私の勝ち、ね」

「うん、わたしの負け。イリス、本調子みたいで良かった」

「そんなに心配しなくたって平気よ。それより、前回も含めてこれで私の方が勝ち星が増えてきたんじゃない?」

「そうかな。わたしの方が元々多かったよ」

「な……そんなことないと思うのだけれど。私の方が多かったわよね?」


 確認するようにイリスが尋ねてくる。いつでも負けず嫌い――イリスのそんなところが、アリアは好きだった。

 だから、わざと煽るように口にする。


「うーん、どうかな。一時期イリス伸び悩んでたとき、あるし」

「うっ……その時は確かに結構負けたかもしれないけれど……。それでも私の方がまだ多いはずよ!」

「じゃあ、もう一回やって今日は一勝一敗にしておこっか」

「……言うじゃない。いいわよ、もう一試合する時間くらいはあるもの」


 そう言って、お互いに武器を構える。

 早朝から――アリアとイリスは二度目の模擬試合を行った。

 ……その結果、朝から遅刻しそうになったのは言うまでもない。

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表紙
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― 新着の感想 ―
[良い点] 女の子同士だからとかではなく、単純に若い子達がお互いの技術を磨く為に研鑽しているのって尊いですね…
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