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生まれ変わった《剣聖》は楽をしたい  作者: 笹 塔五郎
第一章 《剣聖姫》護衛編
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16.剣術の授業

 翌日からも、僕の講師の仕事は続いた。

 基本的に朝と帰りにホームルームと、担当する《剣術》の授業を執り行う。

 他、学園行事があれば僕がクラスの担当として相談や調整も行う必要があった。

 まあ、この辺りは生徒達に任せればいいとして……。


「はい、皆さん位置につきましたか? まずは素振りからですよー」


 今は剣術の授業の時間。

 そもそも基礎がなっていない者もいるため、授業開始時は素振りなどで振り方を確認して、指導する。

 本人が得意とする武器や、そもそも剣が得意じゃないという生徒に合わせて、それぞれやり方を変える。


「アルタ先生ー。私、剣術とか得意じゃないんだけど」


 こういう風に言ってくる生徒は少なくはない。


「もう一度振ってもらってもいいですか?」

「はーい」


 女子生徒が剣を振るう。

 学園の基礎剣術は《エルクシル流》と呼ばれるものだ。

 王都の騎士も多く愛用しているが、もちろん流派を一つに絞ってやらなければいけないなんてことはない。

 女子生徒の剣の振りは、単純に遅かった。

 必要なところに力が入っていない……いや、剣がそもそも合っていないのだろう。


「もう少し剣のサイズを調整しましょうか。細く短めな感じで」

「いやー、私って《魔力》コントロールもそんなに得意じゃなくて……」


 剣術の授業で使用するのは魔力で刃を作り出す《模擬剣》だ。

 使用するには当然、魔力による調整が必要となる。

 出力に制限があるため、基本は大きくても直剣レベルにしかならない。


「魔力はよく血の流れにイメージを例えられますね。身体を巡るイメージは作れますか?」

「うーん、何となく」

「では、目を閉じてください。他の視覚情報があると集中できなかったりするので。いいですか、今よりも流れを遅くするようにするんです」

「流れを遅く……」

「剣のイメージは今より短く細めに。もう少しです。はい、そのまま一分ほど集中してみてください」


 僕の言うとおりに、女子生徒が模擬剣に意識を集中させる。

 剣の形状は変わらないが、刀身は小さくなった。


「大体一分くらいかな……って、あ。いい感じに小さくなってる!」

「はい、いい感じですよ。魔力のコントロールも慣れですから、今の感覚を覚えてください。その剣の使い心地はどうですか」

「うん、さっきより振りやすいかも! ありがと、アルタ先生!」

「先生ー、あたしにも教えてー!」

「今行きますよ」


 こうして一人一人と向き合って剣を教えるなんてことは、実際のところやったことはない。

 けれど、意外と楽しめている。

 教えることもそんなに負担にはならないし、少しずつでも理解して成長するところが見られるというのは悪くない感じだ。

 そんな時、少し離れたところではイリスが剣を振るっていた。

 細剣を構える姿は、やはり様になっている。

 素振りと言っても、イリスの剣の練習は実際の立ち会いも想定した動きとなっていた。

 距離を詰めるように地面を蹴って、一閃――それだけで、一部の生徒から歓声が上がる。


「やっぱりイリス様はかっこいいなぁ……」

「私達なんかあんな風にできないしね」


 男女問わず注目を集めるイリスの剣。

 生徒達から見れば、彼女はただ剣を振るうことに集中している《剣聖姫》と呼ばれる少女なのだろう。

 だが、


(たまにすごい視線を感じるんだよなぁ)


 主に他の生徒に教える時。

 イリスの方は見ていないが、方向からしても彼女が僕を見ているのは間違いない。

 さらに言えば、僕が見ている間も剣の振り方に少し緊張が見られる。

 平静を装ってはいるが、僕には分かる。――ものすごく、イリスはそわそわしていた。

 それこそ、一連の動きの中で僕の方をちらちら見るくらいには。

 授業中には特別扱いしないつもりだけど、イリスはとにかく僕に剣を教えてもらいたくて仕方ないらしい。


「はい。イリスさんはすごいですが、今は自分の剣に集中してくださいね。分からないことはどんどん聞いていいですから」

「……っ!」


 イリスの動きがやや乱れる。

 僕から特に何もなかったのがそんなに気になるのか。


(……まあ、どのみち後で教えるわけだし。授業レベルならイリスさんの剣術には口出しするようなことはないしね)

「先生」

「あ、はい。何ですか?」


 背後からの声に反応して振り返る。

 そこに立っていたのは、僕より少し身長が高いくらいの女の子。――アリアだ。


「アリアさん、何か聞きたいことでも?」

「うん、わたしと試合しよう?」

「なるほど――ん、試合?」

「うん、試合」


 思わず聞き返すとアリアはこくりと頷いて答える。

 こんな短期間に、僕と戦いたいという生徒がまた出てくるとは思いもしなかった。

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