(2)9月3日朝 古城家のキッチン PART4
(承前)
そして卵がいい塩梅になってきた。ミアキは蓋を取り去るとターナーでベーコンエッグをフライパンの下に差し込もうとした。
「あー。黄身が壊れちゃった」叫ぶミアキ。覗き込むミフユ。
「そのままひっくり返してきっちり焼いちゃえば。焦げてる訳じゃないし美味しいよ」
「わかった。そうする」
あまり火が通り過ぎないように一旦コンロの火を消すと黄身が破れた卵焼きをひっくり返して少し火を通してから用意しておいたお皿に盛り付けた。
「お姉ちゃん、お母さんとお父さんにはちゃんとしたトロトロの黄身のベーコンエッグ食べてもらいたいから、もし次もこうなっちゃったら」
姉はあっさり首を縦に振った。
「食べてあげるよ。でもね、わざとそうしたらダメだからね」
ミアキはわざと怒った体で言った。
「お姉ちゃん。わざとそんな事なんかしない!全力は尽くします」
「ごめん、ごめん。じゃあ、ミアキ・シェフ、次こそ成功目指してレッツ・クッキング!」
「私、頑張る!」
そういうとミアキはフライパンを再び火にかけた。
「そうそう、お姉ちゃん」
ミアキはフライパンにバターを落とすとベーコンを入れた。
「何?」
ミフユはケトルに水を注ぐとミアキの隣に立って空いているバーナーの上に乗せると火をつけた。
「あのね、私、お姉ちゃんの学校の制服好きだから」
「ふーん。じゃあ高校の受験勉強を頑張ったらいいよ」
「そうする。だからね」
「だから?」
「お姉ちゃん、卒業したら制服ちょうだい」
「いいよ。そんな事ぐらいおやすいご用」
今着ている夏服は別に特徴のないポロシャツだから冬服が好きなのかな。
「ありがと。またお姉ちゃんの学校の様子は見てみたい」
「秋の文化祭に来たらいいじゃん」
11月の文化祭、今年はミアキと一緒に見て回れそうかな。お湯を沸かしておけばそろそろお母さんも書斎から出てくるだろうしコーヒーはお任せで。
「もちろん行くけど日常も見てみたい」
「そういうのは難しいねえ。何か理由がないと。高校は保護者参観なんかないし」
「じゃ、理由があればいいの?」
ミアキは玉子さん、今度はうまく行きますようにと小声で言いながら用意していたカップからフライパンに玉子そっと落とした。また気持ちのいい音が聞こえて来たのでサッと蓋をした。
「小学生には無理じゃないかなあ?私は思いつかないけど」
「ふーん」
そういう姉に対してミアキは何故か笑っていた。しばらくしてフライパンの蓋を取り去ると慎重にターナーで玉子焼きをお皿に移して行った。
「できた!次はもっといい焼き加減にする!」