(2)9月3日朝 古城家のキッチン PART3
(承前)
「でもさ、お姉ちゃん。私よりも早くお手伝い、お料理当番やるようになってたの?」
ミアキの台所のお手伝いは段階的に許されてきた。最初はお皿を取ってくる程度の事しかさせてもらえてない。背が低いから届かないし火を使うのは危ないからと焼いたり炒めたりするのは最初は家族の誰かの監督下でホットプレート限定で始めたのだ。そのおかげかお好み焼きとかは割と早く上手くなれたけど……そうじゃない、お姉ちゃんのお料理当番解禁が私より早いって両親のそういう考え方からしたら、あ・り・え・な・い。
ミフユは舌を出していた。ばれたかって感じ。
「ミアキも頭が回るようになったねえ」
「わたしには灰色の脳があるから。推理、得意だし」
ミアキはやっぱり思った通りみたいと鼻息荒くしつつもベーコンを焼いているフライパンから離れない。もうそろそろ卵さんに入ってもらおうかな。お父さんに教わった通り軽く卵をキッチンの平面なところにぶつけて殻を割ると用意していたカップに卵の中身を落とした。卵の黄身に問題がない事を確認するとそのカップから卵をフライパンに落とした。フライパンから美味しそうな音がする。ガラス付きの蓋をして卵が焼きあがる様子を見ていた。トロトロで固くなりすぎない黄身を食べてもらいたいし。
「私が朝食当番やったのはミアキが生まれてからかな」
ミフユは妹、というか赤ちゃんが如何に泣くのが仕事なのか身にしみて体感した。両親も大変だったから朝の料理当番を引き受けるのは当然だと思ったのだ。
「じゃあ、私より1歳ぐらい遅かったって事?」
「そうだねー」
ミアキも物心ついた頃の記憶と言えば姉が色々と家のお手伝いをやっていたという日常の光景があった。小さかった頃の私の面倒見るのって大変だったろうとは思うけど、姉に対して遠慮しても仕方ないし。
「じゃあ、お姉ちゃんより早く始めた私って偉い?」
姉は輪切りのオレンジと食べやすい大きさに切ったバナナをお皿に盛り付けていた。手を止めた姉。
「それ認めたらなんだか負けみたいに聞こえるから認めなーい」
そういうとミアキに向かって舌を出してみせた。思わず笑う二人。