(2)9月3日朝 古城家のキッチン PART2
(承前)
階段を軽やかに降りてキッチンに行くとショートパンツに着替えてエプロン姿の妹がコンロの近くにフライパンとかお皿とか並べて準備に余念がない。
「おはよう。ミアキ」
ミアキは準備に必死なせいか顔を向けずに言った。
「お姉ちゃん。おはよう。手を出さなくて良いからね」
私も初めての時は同じような事を言ったなあ、なんて事を思い出すミフユ。自分のエプロンを身に付けながら妹に声を掛けた。
「出さないよ。メインディッシュはあんたが責任を持ってやりなよ。でも他の準備ぐらいは私が手伝っても良いでしょ。で、何を作るの?」
「えーとね。ベーコンエッグにバゲット添えるつもり」
ミアキは冷蔵庫をガバッと開くと顔を突っ込んだ。
「サラダは?」
「オレンジにバナナ切って盛るからなしでいいでしょ?」
「いいよ。じゃあ、フルーツ類は私がやっていいかな?」
「ありがとう!お姉ちゃん」
そういうとミアキは姉に冷蔵庫から取り出したオレンジを渡した。バナナは食卓のカゴに入っていたからそれを切ってねというミアキシェフの暗黙の指示だった。了解、かわいいシェフ殿。今日ばかりは私はこの子のスーシェフかな、なんて事を思いながらミフユはキッチンに野菜など切る時に使うまな板を出した。
「じゃ、引き受けたからベーコンエッグはしっかりやりなよ」
「はーい」
返事をしながらミアキは冷蔵庫から更に卵やベーコン、バターを取り出していた。
コンロの前には踏み台が置かれていてミアキの手で既にフライパンがコンロの上でスタンバイしている。ミアキは卵、ベーコン、バターをコンロの脇に揃えておくと踏み台の上に乗ってコンロの火を着けてフライパンを温め始めた。バターを手に欠片を入れるタイミングを見極めんとするミアキ・シェフ。そんな中でミアキは姉にふと思った事を口にした。
「お姉ちゃんはいつから当番でお手伝いするようになったの?」
ミフユは妹の探りに対してオレンジを切ろうとしていた手を止めて天井の方を見上げた。
「うーん。物心ついた頃にはもう手伝ってたかなあ。ミアキが生まれるまで一人っ子だなあって思ってたし、お母さんもお父さんもお仕事あるじゃない」
バターをフライパンに落としてしばらくするとベーコンも入れた。卵を手にしたシェフは視線をフライパンからは外さない。
「お姉ちゃん生まれた時からそうだったんだ」
「そりゃ、そうでしょう。そういう忙しそうな両親に気付いたら良い子はどうする?」
「手伝う!」
「そういう事」
ミアキが姉の方を見ると制服の上に身についけたエプロン姿で腕を組んでえっへんとしていたので笑ってしまった。