(6)8月24日水曜日夜 Fragment of couple memories.(Epilogue)
二人の頭上で花火が大きな華を描き出した。空を見上げていた秀幸はその話題の急転換ぶりに驚いて秋山さんの方を見た。
「俺は5月だけど」
ボソッと秀幸は答えた。秋山さん、話の行方が読めないよ。
「なんで言わないの。お祝いぐらいしたよ」
秋山さんならしてくれただろうな。でも、みんなは受験生だし年食ってうれしいほうでもないしなんて思ったが口にしないだけのデリカシーは秀幸にはあった。ただこの話からすれば、
「秋山さんは9月7日だったね」
そう、秋山さんの誕生日ってそういえばもうすぐだった。もちろん何かプレゼントしようとは思っていたけど、変に思われたら嫌だし、受け取ってもらえても表面上喜ばれるだけならなんだかなあって思うし。
すると秋山さんは思いっきり満面の笑顔でこう言い放った。
「そうだけど、そういう話じゃないんだよね。さ、帰ろうよ」
にこやかにわけのわからないことを容疑者は述べており。
秀幸はそんな事を思いつつ肩をすぼめて聞かなかった。何か地雷を踏んだのは確かなんだけど一体何なのか?でも答えを出さないとまずい気がする。とてもまずいはず。そんな事を思っていたら秋山さんは左手で秀幸の右手を握って引っ張った。思いっきり引っ張って歩き出した。
「遅いよ。さ、歩け、歩け」