(5)9月10日月曜日 中央校舎廊下 PART2
(承前)
そして4限目の前の休み時間に姫岡くんを見かけた。
「姫岡くん、ちょっと教えて欲しい事があるんだけど」
そういうとミフユは廊下の窓際に姫岡くんを引っ張って行くとそっと彼に質問をぶつけた。
「秋山さんに誕生日プレゼントしたんだ」
彼は首を横に振った。
「そういうのじゃないよ。たまたま良いものが作れたから貰ってもらっただけ。指輪と勘違いしてくれたけど指のサイズに合わなかったし」
思わずミフユは腕を組んでしまった。
「でもあれは指輪だよね?」
「単なるリングだよ。そうしたらネックレス、安いので良いからプレゼントしてって要求を受けてそれは仕方なく誕生日プレゼントをさせられたけど」
ふーん、リングねえ。それって指輪って単語避けただけじゃん。これが愛の告白の証じゃないというならなんのかな?ミフユは彼の指を見たけど学校だからか流石に着けてないのか、それとも。
「ひょっとして姫岡くんも持ってるんでしょ?同じ奴。そっちもネックレスにしたの?」
「同じのはないよ。失敗品はあるけど。捨てるには惜しいからキーホルダーには付けてる」
と言いながらキーホルダーにリングがマスコットのように付けられているのを見せてくれた。
うわあ、お揃いにしてあげたんだ。流石に声に出しては言わなかった。そう、これが秋山さんの望みだったのだから、あの子が浮かれてるのは無理ないか。
「でもお揃いとして持ってあげてるんでしょ?」
そこは違うんだよと言いたげな姫岡くん。何それ?
「違うんだけど……そう思ってくれているならもうそれでいいやって。でないと許してくれそうになかったからね」
彼は淡々とそう言いつつどこかうれしそうな感じはした。