(5)9月10日月曜日 中央校舎廊下 PART1
翌週の月曜日。3限目前の休憩時間中に廊下を歩いていたミフユは秋山菜乃佳と出会った。
「おっはよ、古城さん!」
やけに明るい。先週のあれって何だったの?
「おはよう秋山さん。何かうれしい事があったの?」
そう聞いたら腕を引っ張られて廊下の柱の陰に引っ張って行かれた。
木曜日は生徒自治会の女子会と称して秋山さん、陽子ちゃんや加美さん、吉良さん達で揃ってケーキバイキングに行った。姫岡くんが何かケアするか分からなかったので「受験生の気晴らしにいいよね」となったのだった。問題の金曜日は特に二人の間で何かあるとは聞いてなかったので落ち込んでるかなあと思ったら何これってハイテンション。何があったの?
秋山さんはニッコニコだった。ほんと女子会の今一つそうな顔が嘘みたい。
「土曜日にね、あいつとばったり出くわして」
「あいつって姫岡くん?」
「そう、そう。で、あいつ、偶然だけどちょうど良かったとか言って学校の3Dプリンタで遊んでいたら上手く出来たからってこれをくれたんだ」
それは金属リングだった。学校で金属3Dプリンタが導入されていて部活動でも使えるようになっていた。よく磨き込まれたそれをネックレスに通していたのだ。
「へぇー。誕生日プレゼント?指輪?」
「違うよ。上手く出来たから良かったらって貰っただけ。それに指輪じゃないよ。ちょっとサイズが大きいしさ」
秋山さんは幸せそうにしているし喜んでいるならいいのかなと深くは追求せずに「良かったね」と伝えた。