(1)8月24日水曜日夜
県立高等学校は明日から授業再開か始業式の日。去り行く夏を惜しんで秋山菜乃佳と姫岡秀幸は二人でアトラクションランドに来ていた。
秀幸は秋山さんから「私に借りがあるでしょう!忘れたの?」と問い詰められて借りの内容が全くわからない中で約束をさせられて朝一番に入場して遊び倒す秋山さんに付き合わされたのだった。
秀幸は秋山さんがすごく強引だったなとため息もありつつ、何故か彼女が普段バレーボール部で着ているスポーツウェアから想像もできないノースリーブのワンピース姿がきれいで眩しくもあり、でも楽しかったのも確かだなと思う。
20時頃、最後の打ち上げ花火が上がり始めた。二人は他の観客に混じって空を見上げていた。
「きれいだなあ」
「そうだね」
特にどうと言うことのない会話過ぎたのか秋山さんは唐突に話を変えた。
「陽子ちゃんと日向くんって同じブランドで色違いの万年筆持ってるって知ってた?」
花火の大きな華が開いた。秋山さんの顔がパッと照らされる。ワンテンポ遅れて何か弾けるような爆発音が響いてきた。
「日向くんは1年A組だった時、気付いたら赤いやつを胸ポケットにさしたりしてるのは記憶にあるけど」
また次の花火の軽やかな打ち上げの音が響いて来た。
「気付いてたんだ。陽子ちゃんは青いやつ。ブレザーにさしているかペンケースに大事にしまってる」
秀幸としてはそういう事、気付くもんなのかなあと思った。そしてまたもや唐突に話が飛んである事を聞かれた。
「姫岡くんは誕生日いつ?」
花火が大きな華を描き出した。空を見上げていた秀幸はその話題の急転換ぶりに驚いて秋山さんの方を見た。