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第9話

 姉妹の自宅は5LDKの平屋。マンションに挟まれるようにして建っている。

 箕浦は門の前で自転車を止め、降りてから姉妹の自宅を見る。(みやび)な木造の趣に感心しながら家と南側にある広い庭を眺めた。

「こんな所に平屋があったんだな」

「この辺は神社仏閣が多いせいか、樹林も目に付くので、東京の新宿に思えないですね」

 小川も自転車から降りて辺りを見回している。

 姉妹の自宅で捜査をしていた同僚の刑事が箕浦と小川に気づいて玄関から出て来た。 

「休暇中、お疲れ様です」

 同僚の刑事は挨拶を済ませると、早速メモを見ながら箕浦に捜査の状況を報告した。

「被害者の両親は実業家で別々に会社を経営しています。元々この家は被害者の曽祖父が建てたそうで、現在は被害者の父親の名義になっています」

「多額の固定資産税を支払っても痛くもかゆくも無い金持ちか」

 箕浦がさもないといった表情で言う。

 同僚の刑事は、箕浦の言葉に付け加えるようにして捜査状況の説明を続ける。

「元はこの土地に暮らしていた武家のようです。先祖から受け継いだ土地や財産を守っているんでしょうね」

「関係者のアリバイはどうですか?」

 小川の質問を受けて、刑事は表情を曇らせた。

「今も事情聴取を行っているんですが、事件時刻に居合わせた家政婦と姉どころか、会社で仕事をしていたと証言している両親にもアリバイがありません」

「仕事をしていた両親もアリバイが無いってどういう事だ?」

 箕浦は、同僚の刑事を尋問する勢いで聞く。

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