第7話
三樹は、まだ本棚にもたれるようにして立っていた。血塗れの佳奈を見たり、救急隊員を見たり、家政婦を見たりしている。
警察を待っていた救急隊員が三樹に気づいて声を掛けた。
「大丈夫?」
「うん」
三樹は、声を掛けてきた救急隊員を見上げて瞳に涙を浮かべる。三樹は静かに泣き出した。
その後、警察が来た。
家政婦の表情は青ざめたままだったが幾分落ち着きを取り戻し、涙が止まらない三樹をリビングへ連れて行った。
警察の捜査中に、姉妹の両親も駆けつけ、警察から説明と事情聴取を受けた。
その間、家政婦は作った夕食を三樹に出すが、三樹は首を横に振って「いらない」と言い夕食に箸をつけようとはしなかった。
そして、一夜が明けた。
四谷警察署のベテラン刑事箕浦次郎55歳は、休暇中に呼び出しを受けて不機嫌な表情で出勤した。
箕浦とコンビを組んでいる若手刑事小川和也29歳も、休暇中に呼び出しを受けて出勤する破目になったが、小川の場合は不機嫌になるというより、やる気の無い箕浦の顔色を見て困った表情をしていた。
箕浦は小川から渡された緑茶を飲みながら、捜査一課に設けられたホワイトボードを見た。ホワイトボードには事件現場を撮影した画像や、捜査状況などが書かれている。
小川は、仕事モードになっていない箕浦の眠そうな顔を見てため息を吐いた。
そうこうしているうちに、事件現場から同僚の刑事が戻ってきた。徹夜だったのか、同僚の刑事は目を充血させていている。捜査の引継ぎをするために箕浦の横に立った。




