第5話
三樹はゼリーを食べ終わると自分の部屋へ行った。
8畳の部屋は妹の佳奈と共同で使っている。
三樹の勉強机は入ってすぐ左にあり、幅のある大きな本棚を隔てた向こう側に佳奈の勉強机があった。
集中して勉強ができるようにと、両親が大きな本棚を置いて互いの姿が見えないようにしたのだ。
三樹は勉強机に座ると、学生カバンから教科書を取り出した。宿題を始める。宿題はノート1ページ分。30分ほどで片付き、三樹は本棚にあったマンガを読み始めた。
それから暫く経った17時10分。
家政婦が部屋にやって来た。
「三樹さん。ご飯ができました。召し上がって下さいね」
「佳奈。帰って来た?」
三樹がマンガから顔をあげて聞くと、家政婦は入り口の前に立って首を横に振る。
「まだです。佳奈さんが早く帰ってきてくれないと、私は本当にお叱りを受けてしまいます」
「なんで黙って出て行ったんだろ?」
三樹は、家政婦の困りきった表情を見ながら椅子から立ち上がった。
その時、家政婦が悲鳴をあげた。
「きゃー。佳奈さん!」
家政婦は全身を震わせて佳奈の勉強机を指さす。直後に家政婦は腰を抜かして床に座り込んだ。
「え? 何?」
三樹が本棚の向こう側にある佳奈の勉強机を覗くと、血塗れになった妹の佳奈が椅子に座ったままの状態で背中をくの字に曲げて勉強机に額をくっつけている。両手は佳奈の頭の左右にあり。その左手は今もカッターナイフを握っている。




