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第22話

 磨かれた綺麗な爪をした手で顔を覆い、大粒の真珠のような涙を流して泣き続ける姉の三樹。

 人の死とはどういうものなのか。14歳の彼女はまだ分からないのだろうか。あとから生まれた妹だから、自分の物だと思って扱ってしまったのか?

 箕浦は、心に浮上する苦くて(おぞ)ましい疑問に蓋を被せた。

「辛い事をよく話してくれたね」

 三樹は今も泣き続けている。

 箕浦は、児童小説を朗読するようにゆっくりと口を動かして言った。

「おじさんはね。三樹さんが、この「蓑虫(ミノムシ)戦士の大冒険」が大好きだと言った時、ホッとしたんだよ」

「どうしてですか?」

 しゃくりながら聞く三樹を見ながら箕浦は答える。

「この本を好きな人は、殺人をしないからだよ。ある人が教えてくれてね。おじさんは最初何を言っているのか分からなかったけど、三樹さんがこの本を大好きだと言った時、やっとその意味が分かったんだ。正直に話してくれて、本当に有難う」

 児童小説はSF・ファンタジーなどいろいろなジャンルがあるが、どれも愛と勇気と命の大切さが謳ってある。

 美智子は、殺人犯は自分の作品を読まないと言ったが、美智子が本当に言いたかったのは、愛と勇気と命の大切さが謳ってあるような教育的配慮がされた小説を、殺人犯は読み解く事ができないと言いたかったのではないだろうか。

 箕浦は立ち上がった。小川に目配りをする。

 小川は、家政婦と一緒に立ち上がった。家政婦をベンチに座らせながら説明をする。

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