第21話
三樹は家政婦の状態に気づかずに話を続ける。
「それで、佳奈が持っていたカッターナイフで刺してみたんです。佳奈の喉は、白っぽくなってて桃みたいだった。刃を奥へ差し込むと種があるみたいに、奥のほうで硬いのに当たって。あれは首の骨かな。中の肉はまだ赤くて、地面に落ちてぱっくりと割れた柘榴のようで、柘榴の果汁のような赤い半透明の液体が滲んでいました。超リアルな体験でした」
後ろでは、家政婦が左右の耳を押さえながら体を震わせている。三樹の話が恐ろしくて聞く事ができないようだ。
箕浦は冷静な表情で質問を続ける。
「血は出た?」
「出ませんでした」
「カッターナイフはどうやって持ったのかな?」
「持ってません。手に血がつくのが嫌だったので、佳奈の腕を持ちました。血のついてない所を」
箕浦は、三樹にルミノール反応が出なかった理由をやっと知り納得した。
「そうだったのか。じゃあ、これでおじさんの質問は最後にするね。どうして妹の佳奈さんを刺したのかな?」
そう質問された時、三樹の瞳に涙が浮かんだ。
「試したかったんです。死んでるなら痛くないと思ったので。こんな大騒ぎになるなんて」
三樹は大声で泣き出した。
「佳奈は自殺なのに、刑事さんは滅多刺しの殺人事件だって言うし。殺人事件じゃないって言いたかったけど、死んだ佳奈を刺したのがバレちゃうし。もうどうしたらいいのか分からなくて」




