第20話
「ああ。読んだよ。それ、おじさんの家にもあるんだ」
三樹は本を開き魔女の挿絵を見ながら言った。
「私も魔女みたいに許してもらえるかな……」
三樹は自分に問い掛けるように呟く。
「きっと、許してもらえるよ。何があったのか、おじさんに話してくれないかな?」
箕浦の問い掛けに、三樹はじっと箕浦の顔を見ていたが、口から息を吐くと小さな口を動かして話し始めた。
「マンガを読んでいたら臭いがしたんです。なんの臭いだろうと思って立ったら、隣の机で佳奈が血をいっぱい流してて……」
箕浦は黙って頷く。
外の様子に気づいて家政婦が庭に出て来た。三樹に声を掛けようとするが、小川に腕を掴まれて立ち止まった。
小川は口の前に指を1本立てて話しかけないように示す。
三樹は、芝生に腰を下ろしている箕浦をじっと見ながら話を続けた。
「呼んでも起きないし。叩いても起きないし。もう佳奈は死んでいたんです」
「どうして死んだと思ったのかな?」
「顔が白かったから。目も半分開いていたし。息もしていませんでした。だから、もう痛くないって思って」
家政婦は、口を開けて一気に息を吸い込んで喉を鳴らし、顔面を両手で覆った。力なく体を沈ませ、膝を曲げて芝生に座り込む。
小川は、家政婦の体が急に落ちないように支えながら一緒に腰を低くして芝生に尻をつけた。
箕浦はチラリと家政婦を見たが、小川の姿を確認するとまた三樹をじっと見つめた。




