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第16話

 箕浦と小川は、家政婦の尾行を始める。

 なぜか美智子も一緒についてくる。

 箕浦は小声で美智子に言った。

「なんでついて来るんだ?」

「だから、私はこの本の世界で暮らす可憐な妖精。って言ってるじゃない」

 美智子の訳の分からない言葉に、箕浦はまた頭を抱えた。

「小川。お前に任せる」

「分かりました」

 小川は苦笑しながら返事をすると、一緒に歩く美智子を見下ろした。

「我々は守秘義務を守らないといけないので何も言えないんですが」

「ええ。それは重々承知していますわ」

 小川が言うと、美智子はうっとりとした表情になり、小川を見つめながら返事をする。初めて箕浦にあった時、美智子は箕浦の隣にいた小川に一目惚れしたのだ。美智子が箕浦たちと一緒に歩くのは、小川と一緒にいたいからだろう。

 箕浦は、美智子の口から出たお嬢様言葉を聞いて、胸のムカつきを覚え胃酸が込み上げてくるのを我慢する。

 小川は、笑顔で美智子の返事を聞いてからまた口を開いた。

「沼川先生。ほかの容疑者は浮かばないんですか? 家政婦の愛人とか、あの子の親とか、あの子の彼氏とか?」

 美智子は、三樹のしぐさを観察しながら答えた。

「あの子、まだ彼氏いないよ。デートの経験はゼロ。家政婦も愛人がいるように見えない。離婚して独身だとは思うけど」

 美智子の口調が、普段の口調に戻っている。

「親はきっと両方ともお金持ち。あの子の身形がいいから。両親には、金で飼われた異性同性の愛人がいると思うけど、愛人の数が多過ぎるのと、仕事が忙しいのとで、両親に殺人をする暇は無さそう。両親は、あの子をとても大切にしてるように見えるから、そんな暇があったらお手伝いさんに任せないと思う。他の交友関係に犯人がいる可能性も低い。推理小説を書く時、容疑者を最初に出しておいて、あとから容疑者の友人を真犯人にしたりするけど、最近の推理小説はそういうの流行ってないし。今の読者の傾向を考えて推理小説を書くとしたら、あの10代っぽい女の子を犯人にしたほうが読者の意表がつけれていいような気がするなぁー」

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