学園で
「グレーテル、もうすぐ学園祭だよ、ダンスパーティーだよ!やっとの出席できる学年になった」
只今ダニエルは愛しいグレーテルにダンスパーティーのパートナーになって欲しいアピールの真っ最中なのだが、
「そうね、上級生になったもの。留年しなくて良かったわね、ダニエルダンスパーティー出たかったのよね、速くパートナー探さないといけないわよ」
…………つれない彼女の言葉にその場で撃沈、昔を思いだし泣きたくなりそうになる。
「で、何かご用?私これから図書室に行くから、失礼するわね」
さらっとかわして教室を出ていくグレーテル、ガックリ床に手をつき膝をつくダニエル……
その様子を見ていた友が近づき呆れたように声を掛ける。
「アレはないわぁ、もう少し言い様あるだろ。それに幼馴染だからってお前無謀だ。彼女は学園一の美人だ」
「はぅ、ぐ、グレーテルー!一緒に踊って下さいー!」
その声は彼女に届かない………
――――(変わらないわね、小さい時から)
図書室に入り、窓際の何時ものお気に入りの場所に荷物用を置く。そして本棚から選んでいると、奥から話声が聞こえた気がした。
(何かしら?図書室で?)
耳をすませばたしかに微かだが聞こえる、そしてそれにはすすり泣く声も………
そろそろとその方向へと近づいて行くとそこは図書室の一番奥まった場所
グレーテルのクラスメートがひとかたまり集まっている、見たところ一人の少女を数人で責めてる様に見えた。
(あの子、この前の)
グレーテルに挨拶してきた少女が泣いていた。
――――「どういう事?あの子に挨拶なんかして、取り入ろうってつもり?」
リーダー各の少女が、取り巻きと共に責めている、グレーテルを目の敵にしてるグループだ。
(この子達、何してるのよ、ダニエルと私の事で前から敵意は感じてたけど)
はぁ。とため息がでる、しかし見てしまった以上は冷静にしばらく観察する、この前の母の様に……淡々と
「そんなんじゃ無いわ、ただ挨拶しただけじゃない」
小声で泣きながら弁明する少女、彼女は怖かったのだ。クラスメートに逆らう事よりも「蒼天の瞳」が……
(お婆様のお話は本当だった、神様に通じてる!きっと、悪い事をしたら罰が与えられる、きっとお母様と私に)
そんな少女の気持ちなど聞こうともせず強い語気で詰め寄る。
「貴女も言ってたじゃない!ダニエル様を独り占めしてズルいって!少し綺麗だから生意気だって!」
そうよ、そうよと取り巻きも囃し立てる。
隠れて「見ている」グレーテルは少々困ってしまう。
(はぁぁ、何処まで冷静に観察すれば良いのやら、自分が絡んでると困るわね)
――――「よし!リベンジしてくる!」
早くも復活したダニエルは友の声援とアドバイスを受け、図書室へと向かっていた。
(絶対に誘う!次はセリフも教えてもらったし!)
…………「失礼しまーす」
緊張のあまり図書室に挨拶しながら入るダニエル、室内を見渡すと窓際の席に荷物はあるけど、姿がない。
(あれ?居ない?どこー?)
迷子の子犬になった心境の彼はとりあえず奥へと向かう。
―――――「泣いてばかりで、何か言いなさいよ!」
止まり処が無いのか、まだ続いている。それとも止められ無いのか………
「見てる」グレーテルはそろそろ彼女達の前に出るべく気合いを入れた。
………「そんな所で何をしているの?」
その一言でその場は凍りついた。本棚を背に泣いてる少女、詰め寄ってるクラスメート達、皆グレーテルを見つめ、息を飲む。
彼女達をとらえる、冷たい光を放つグレーテルの瞳………
「な、何もしてないわよ、ねぇ」
しどろもどろになる者達を置いておき、グレーテルは泣いてる少女に近づく、
「大丈夫?」
ただうつむく顔を覗き込んだ。ただそれだけだったが、少女は彼女の瞳を見ると、
「ひっ!」
恐れをなしグレーテルを突飛ばした。不意をつかれた彼女の体が本棚へと向かう。
――――「危ない!グレーテル」
ダニエルが彼女の元に駆けてきた。