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理解不能の、弱い蒼  作者: 倉木 碧
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3 《自らの尾を味わいし者》 (3) ー ☆ ー

 

「それにしても似合ってる、うん」

 オーダーをした後に全員が簡単な自己紹介を済ませ、瑞季が言った。

「薄化粧で違和感ないよね、声を出さないと本当に分からない。安心して」

 遥もいった。


 ここは、駅からすぐの喫茶店。

 そこに夏美、瑞季、遥、そしてライ君(ラインハルトとかいうゴージャスな名前を持つらしい、留学生の美少年くん)で移動してきていた。


 あの後、さすが梅雨の時期らしく、急に雨が降ってきてしまい、3名での女子会(食べ放題付きのカラオケパーティー♪)の予約時刻が7時半からにしてあったので、まだ時間があるから一緒に雨宿りでもと遥と瑞季がとりなすように言い出したのだ。

 ライ君が待ち合わせた相手、まことさん?というのが結局現れなかったこともある。


 夏美は何を言えばいいのかわからないので、

「そーそー」と被せておくのを繰り返す。

 窓際の席なので、外の天気が気になる素振りをしておく。

 とにかく語学は苦手なので、大学でもひたすらネイティブの先生は避けてきた。

 誰かまことさんとか言う人が喫茶店に来ないか見張っていてあげる振りでもいいな。


  美少女、もとい、美少年は言った。とても礼儀正しい日本語で。

「ありがとうございます。…喜んでよいのでしょうか?」

 2人に注意されていたので、高い声で発音してるみたいだ。


「そーだねー着こなしも上手。私は可愛いワンピ苦手だから羨ましいよ。」

 と瑞季がさらに褒める。


 何故か、なごやかな会話が始まっている。

 何故だ。

 夏美は居心地が悪かった。

 雨宿りには賛成で、それを口実にバイバイできると思ったのに。


「相手の人は先に来て、喫茶店にいるのかもね?

 嫌じゃなかったら、私達と一緒にコーヒーでも飲んで雨宿りしましょうよ」

 と何故誘って同席しちゃうのだ。


 たぶんそれは2人の親切心と、それからちょっとした好奇心なんだろう。

 でも、3人の総意かどうか確認して欲しいよね。と思ってからすぐに、でも多数決をしたら結局は自分の負けなんだろうなと察して夏美は何も言わなかった。


 もちろん、日本語堪能な留学生の前で2対1の多数決みたいな議論をするとどうなるかを想像したから我慢している。

 1人がしょんぼりして撤退して(それで夏美の目的は達成されるけど)、その後残った2人に

「夏美、大人げないよ」

「ノリ悪いよ、少しの間じゃない」

 とか言われてしまうのが想像できた。そうしたら、この後の女子会がつまらなくなってしまいそうで(それはすごいストレスになりそうな予感)、我慢の方を選んだのだ。



 瑞季がライ君の隣、そして正面には遥が座ってくれたのはありがたかった。

 自分は残り時間を上手く乗り切ればいいだけ。

 そのうち、お互いに興味が薄れるでしょ。

 夏美は必要最低限しか口を開かないつもりでいる。


 別にすごく不快で、怒っているわけではない。

 どうやら悪い人ではないようだし、礼儀の点でも申し分ない。

 レディーファーストの振る舞いをしそうになり、遥に「バレちゃうよ?」ととどめられて顔を赤くしていたのも、嫌な感じはしなかった。


 そう、とにかくあと少し辛抱すれば良いだけだし、あまりつんけんすると雰囲気損なうだけだし、最近では仕事場で取り繕う修業ばかりしているので、作り笑顔には自信はある。


 あいづちはにこやかな顔でうち、とりあえずめったな発言はしないように聞いてるとーー。


 謎の女装は、どうやらまことさんとかいう人の無茶ぶりだったらしい。

 今頃陰に隠れてライ君の困った様子を見ているのかもしれない。デートのリクエストにしては鬼畜だと思う。喫茶店の中を見渡したが、それっぽい人物も見当たらなかった。


 まことさんって、どんな人なんだろう?

 そして、目の前にいるライ君ってどんな人なんだろう?

 恥ずかしい思いをして女装までして、相手のリクエストに合わせるなんて。

 良く知らない駅で待ち合わせをする羽目になり、本当に会えるかどうか心配してから、会えたと思って(誤解だったんだけど)ホッとした時の笑顔が忘れられない。

 結局、ライ君はすっぽかされたのだろうか?まことさんに。


 ショートカットにスラックス姿の私に似ている男の人にそれだけ惚れているのかな?

 それって、……。

 ○モってことなのかな?


 いえ、別に他人様の恋愛事情とか嗜好には全く何の意見もないんだけど。


 あー、近所の加奈子ちゃんがそういう話が好物だって言ってたなー。

 ライ君なら、ちょっとロマンチックになりそうかも。

 東京の大学に行ってしまってから全然会ってないわ、そういえば。

 どうしてるかな、加奈子ちゃん。瑞季とめっちゃ仲が悪かった加奈子ちゃん。


 ふいに、

「で、夏美はどう思う?」

 と遥の声が聞こえて我に返った。


「え?え?あーごめん、聞いてなかった」

 と夏美は慌てる。


「ほらー今、私が言った通りでしょう?

 夏美は中学の頃からの、私の自慢の友達なんだけど。

 可愛くて天然で。

 今髪の毛をショートにしているけど、綺麗な黒髪でね、人気の天然キャラなんだ。」


 夏美は真っ赤になった。

 聞いてなかった。

 なんで?いつから私の話になってたの?

 私、さっきから目立たないように結構いろいろ我慢してるんですけど?


「ええ、本当にきれいな髪ですね。

 お仕事忙しいのだそうですね、頑張ってくださいね」

 とライ君。

 おおー、なんか癒されそうだ。

 でも話が見えない…。黒髪と天然とショートヘアと仕事?

 天然とかマイペースって、絶対褒め言葉じゃないよね?


 きっと、このあと、どうする?なんて話をしていたのかな…?

 夏美は慌てて口を開いた。


「なんか良く話が見えてないのですが、ほら、ちょっと雨も止んできたし。

 心配じゃない?

 やはりライ…さんは、あそこでずーっと待っているべきだったんじゃないですか?

 待ち合わせしてたんでしょ?、まことさんが心配しているかもよ?」


 瑞季が何か言いたそうにしたけど、その前にライ君が微笑んでうなづいた。


「そうだね、そろそろ戻ってみようかな」


「大丈夫よ、あそこから1番近くの喫茶店なんかここしかないじゃない」

 と瑞季が言った。

「携帯で連絡をしてみれば?今さら言うのもなんなんだけど」

 遥が言った。


「ケイタイ?」

 上の空と言った感じでライ君が呟いた。それから興味しんしんで、遥のスマホについたマスコットを見ているようだった。

「…ああ、コレ、やっぱり…人気ありますね、あ、ごめんなさい、ケイタイとか持ってきてなくて、、。」


「やっぱり忘れてきてたんだねー。あなた、ほとんど手ぶらだし。相手の連絡先、わかる?」

 と瑞季が言った。

 ライ君は困ったように

「わからないんです」

 と言った。

 そしてふいに。

「あの、今日って、6月8日で合ってますよね?」


 ほら、やはりソワソワし始めた。

 私が『まことさんが心配してるかもしれない』とか言ったから不安になってきたんだわ、夏美はそう推理した。


「6月8日で合っているよねー。レジ横の新聞を取ってきてあげようか?」

「いえ、自分で確認してきます」

「声をあまり出さないようにね」

「分かりました。自分でも、今かなり恥ずかしいんですよ」


「私、この隙にちょっとトイレと、それから電話連絡してくるね」

 と瑞季も席を立った。



「瑞季が戻ってきたら、イケメンライ君は見捨ててカラオケに移動だねー」

 と夏美は今のうちにと、遥に釘をさす。


「そうだね、さっき、今日は住んでる中山町に戻るつもりと言ってたから、ここでさよなら、だよね。

 雨にかなり濡れたよね、あの人。

 あのワンピでは寒いんじゃないかな?」

 と遥はスマホをいじりながら言った。


 遥の推察通りだった、ライ君は新聞で確かめてからすぐに速足でテーブルに戻ってきた。

 唇まで青くして、みるからに具合が悪そうだった。


「ごめんなさい、皆さまにご迷惑をおかけしました。日付を間違えていたみたいです。

 もう家に戻ります。自分が自分じゃない気がしてきました」


「大丈夫?」と遥は聞いた。

 

「ええ、まあ…大丈夫」

 それから

「人間違いでご迷惑をおかけして、すみませんでした」

 ほとんど口を開かなかった夏美の方にも向き直り、頭を下げた。


「わかってくれたんなら、いいんです。

 私、ちょっと驚いたので」

 それだけしか言えなかった。


 そんなに自分に似た人に会ったこともないし、なんだか気持ち悪かっただけだ。

 遥や瑞季と話しているのを聞いているうちに、イヤな感じはなくなっていったのは本当だ。でも、ここで笑顔を見せるのもためらわれた。


「瑞季さんにも謝っておいてください」

 瑞季を待つ余裕はなさそうだった。


「もし、ライさんが困っているのなら、この名刺を渡しておくから、この斎藤という者に連絡をしてみて」

 と遥がいきなり名刺を出した。


「…斎藤…さん、ですか?一体なぜですか?」


「ごめんなさいね、私の名刺なんか渡すより、父の会社に関連した名刺がいいかと思って。

 たぶん、貴方のご一族が日本に滞在している時の中山町の家は、私の祖父がお世話したのかもしれないわ、ラインハルトさん。

 ()()()()()じゃないですか?」


 ライ君は、今度は遥の顔をまじまじと見つめた。


「『中山町に滞在してる、留学生です』とさっき貴方が言ったから思い出したのよ。

 私の名前は龍ヶ崎遥です。

 グランドホテルのティールームの『Azurite』をご存知でしょうか?」


 ライ君は、かなりほっとした様子になった。

 さすが龍ヶ崎グループ。グランドホテルは外国人でも知っているようだ。

「龍ヶ崎の皆さまには、かなりお世話になり、ええ、なっていたと聞いてます。ありがとう、落ち着いたらご連絡します。」


  結局、自分の色々なミスに居たたまれなくなってきたのか、ライ君はそう言うとそのまま一礼して帰っていった。


「あのう、遥、私、ぜんぜんわからなかったんだけど…?

 名刺なんて渡して大丈夫?

 本当におじいさまのお知り合いだと思う?」


「ごめん、夏美が聞いてない時に中山町の話が出てたのよ。あーうちの祖父が仲良かった、海外の取り引き先のご家族にお家を貸したことがあって、たぶんライ君はそこのボンボンかな?ってようやく気づいただけ」

 と遥は言った。


「祖父は昔、ヨーロッパでかなり親切にされたみたいで、『中山町には、命の恩人のご家族と関係者がいる』と言っていて、家族はみんな中山町にいる外国の方にはとりあえずVIP待遇するようにと命じられているのよ、内緒なんだけど。

 どうやらビンゴだったみたいね。

 ごめんね、さっきからスマホばかりいじって。

 一応調べていたのよ。ライ君の複雑なプライベート事情には立ち入りたくなかったけど。困ってるみたいだし、うちの執事室の斎藤の名刺ならライ君も信頼できるかもしれないし。

 それに私個人の名刺じゃないから大丈夫」


 ?

 ?

 そんなものなんですか?

 遥がテキパキと会話してたのが、さすがという感じだった。たまに会社のことも少しずつやっているらしいと聞いてたけど自分なんかよりずっとしっかりしてる。


 瑞季が帰ってきた。

「あら?ライ子さんはどうしたの?待ち合わせてた人、来たの?」


 遥が簡潔に答えた。

「ワンピが濡れて寒いとか言ってたし、待ち合わせの日付を間違えちゃったんですって。」


「あらら、可哀想に。でも、カラオケにはさすがに誘えないし。

 夏美がすごい嫌がっていたから、早々に退散してくれて良かったよね。」


「私、そんなに嫌がっていたかなぁ?」

 と夏美は言った。

「すごい、出てたよ〜、顔に。分かりやすいくらいに。

 雨宿りついでくらいの気持ちで喫茶店に誘ってあげただけなのに。

 外ばかり見てて会話に入ってこないから、『夏美は仕事が忙しくて疲れてるんだよ』と私達がとりなしてたんだから。

 遥は、逆に意欲マンマンね。もっと人間観察っぽい興味がありそうだったけど」

 と瑞季が笑った。


「まことさんて人が登場してくれて、謎が解けてたらもっとスッキリするのにね。」

 と遥も笑った。


「う〜ん。ちょっと悪かったかなぁ」

 と夏美は言った。

「なんか身に覚えのない人に急に近づかれて、すごい嫌なのと、

 それから、私、確かに人の顔と名前を忘れっぽいので、自分が認知症みたいで気持ち悪かったし」


 あの、最後にきちんとお辞儀をして去っていった姿も寂しそうだった。


 遥が言った。

「夏美は悪くないよ。新しいナンパかなと思うくらい最初はグイグイ来そうだったし。

 でも、なんかうちの祖父の代で取り引きのあった、外人さんトコの子供みたいだったから、きっと大丈夫よ」

「じゃあ、遥のお家の会社の人とかに、ライちゃんの愛するまことさんがいるのかも?」

「あ、そうかも。聞いてみなくては。あ、関わらない方がいいか。

 2人、上手くいくといいよね〜、私たちも頑張ろう!」


 その後、カラオケで日頃の憂さを晴らすので忙しかった。次の日も仕事だったし、夏美もそのややこしい話はすっかり忘れた。というのはウソで。

 上司や先輩、お客様に叱責を受けるたびに、金髪碧眼の王子様が助けてくれる妄想の為にライ君の面影を利用していた、勝手に。


「ええ、本当にきれいな髪ですね。

 お仕事忙しいんですね、頑張ってくださいね」

 と言った時の微笑み。

 脳内でセリフと共に再生して、何度も癒された。お陰で面影は美化されて今やすごいイケメン君になっているw。


 腹立たしい日常を乗り越えるための、いいハプニングだったのだ。だんだんそう思えてきた。


 ♣︎♣︎♣︎♣︎♣︎


 数日経ってから突然、夏美は気づいた。

 ブレスレット!


 変な夢を、しかもリアルな夢を今見ていて、自分が何か叫び、その声で飛び起きた。

 あのライ君のブレスレットが夢の中に出てきた。ベッドから起きでて走ろうとしていた時に膝から力が抜けた。

 ガクッと崩折れかけて床に倒れていきながらつい

「ごめんなさい」

 と口走った、無意識に。

 今、誰かの腕にすがろうとした、無意識に。

 今、自分は心から誰かに謝ろうとしていた、無意識に。

 泣くつもりではないのに、目から涙が出て止まらなかった、無意識に。


 ちょっと深呼吸しよう、何故こんなに悲しい気持になってるんだろう。


 それから、今まで見ていた夢を思い出そうとして、夏美は驚いた。

 全く覚えていないのだ。ブレスレットの中心の珠だけを覚えている。

 それから、何か熱かった。気温が高いのか、身体に熱を帯びていたかどちらかわからないけど。

 かろうじて目を開けて見えていたのが真珠か何か、白というより薄いシルバーグレーに光っていた、それが先日見たブレスレットの中心の珠に似ていた気がする。


 自分の唇が無意識に動いて勝手に呟き、怖くなって慌てて片手で口を押さえた。周りには誰もいないし、誰も聞いていないというのに。


「ごめんなさい、私…今まで…忘れて…(ムグ)」


 私、何を言っているのだろう?無意識に。

 バカだった。口を塞がなかったら、もう少しなにかヒントをもらえたのに。


 色々ぐちゃぐちゃにネガティブな考え方ばかりしていたから気づかなかったけど、私は見覚えのない外人さんにドキドキしてたのではなく、ブレスレットを見たからドキドキしてたのかも。


 あの日だけでなくて、いつかどこかで見たのかな?

 似てる物?同じ物?

 どこで見たのだろう?

 あれはたぶん真珠だ。何故かそう思う。

 似たようなデザインのものを誰かがしていたのかな?

 夏美はアクセサリーに元々、頓着しない。

 だから、三重県に旅行した時に素敵なネックレスを祖母がプレゼントしてくれた時もそれほど感激がなかった。


 クローゼットにしまい込んだままの真珠のネックレスを出して眺めてみた。

 淡いクリーム色の珠からほのかに虹色の光がこぼれてくる、いわゆる普通の人気色の真珠だ。

 違う、あれとは違う。色からして違う。


 私はいったい何を知っているはずなんだろう…?


 あの時に感じた不安な気分がよみがえってきた。


 心の中で、また自分じゃない自分が呟いてるのを感じる。


「ごめんなさい…」と。

『Xll THE HANGED MAN 吊るされた者』


《自らの尾を味わいし者》の章のイメージは、このタロットカードに託してます。


12という数字の冠されたこのカードは、かなり解釈の難しいカードです。横に渡してある木製のバーから吊り下げられた者が描かれています。その者の足が片方だけ曲げられているのが数字の「4」を表現し、両腕が肘から曲げられて三角形を形作るので、《4×3= 12》なのだと言われます。

数字をシンプルに解釈して、12星座を表している説。

棒に加工された、伐採された木の枝が芽吹いていることから、『死と再生』、『始まりと終わりの連結(すなわち円環)』を表すという説もあります。

筆者は、4元素(物質世界)と生命誕生の3要素(自然世界)で構成された世界の全てを網羅していることを表現しているカードかもしれないと最近、考えるようになりました。

この吊るされた者の頭に後光が差し、悟った笑みを浮かべているのだから、人とか男とかではない、もっと高位の存在かもしれないということで、『吊るされた男』ではなく、『吊るされた者』と表記しています。

最近ウィキペディアで、『このカードは、北欧神話の最高神オーディンが、自分で自分を自分へと生贄に捧げた場面が、モチーフなのである』とする記述を見つけ、かなり気に入っています。結局、ロープが切れてオーディンは助かったそうですが、なんでそんな自己犠牲を試みたかというと、《神聖ルーン文字が理解不能であったから》らしいです。


正位置のキーワードは、『あべこべ』、『自己犠牲』、『宙に浮いている状態』でラインハルトを暗示しています。

逆位置のキーワードは『自分を殺すようにして頑張っているのに報われない』、『自分なりの工夫のしどころのない状況への苛立ち』で、社会に出て仕事をして、希望というより閉塞感からくる倦怠を感じ始めた夏美の心情を表しています。


《自らの尾を味わいし者》は、錬金術師たちのシンボル、Ouroboros(ウロボロスの蛇、円環の蛇、もしくは竜)の表現です。あと、自分の最底辺を味わったことがある(地獄を感じたことがある)の意味を込めました。

錬金術師は、最大の価値、賢者の石(究極の価値)を生成することを夢見て、困難な状況から出発し、多くの試みを重ねていくのです。

『始まりの物は、終わりの物。すなわち、完結物である。

全ての対立物は、一致する。すなわち、賢者の石である。』(出所不詳、再現不正確)

[2019年3月16日]

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