9 《光と闇の狭間に立つ誓いを》 (1)
屋敷の東館3階の自室のベッドにラインハルトは横たわっていた。
食堂で朝食を少しとった後、
「今日は休みだから、部屋で過ごすからね。昼食はいらない」
と言って引き取ってきた。昨夜はほとんど寝ていなかったので、少し頭痛がする。
しばらくうとうとしていたら、かすかなノックの音の後に疲れた顔の中年男が入ってきた。
「あ…お起こししてしまいましたか?…水分補給はしっかりしていただかないと。…と思いまして」
「木藤、ありがとう。冷蔵庫の中からちゃんとミネラルウォーターは持ってきてるから大丈夫だよ」
ラインハルトの部屋は屋敷の中では3番目に良い部屋なので、ソファ脇のドアを開けるとミニキッチンがあり、多少の軽食を作れるようになっている。この屋敷は別荘のように建てられているので、全ての客室にバスルームは付いているが、ミニキッチン付きで続き間まで備えた寝室は3室しかない。リネン等の補給と同様、食材等も毎日チェックされて入れ替えられている。
「果物もお持ちしましたから、冷蔵庫に入れておきますね」
「うん、ありがとう」
木藤が、ラインハルトが昨夜散らかした本やらノートやら満載のデスク周りを見て溜息をついた。
「これは、このままで…?」
「うん、ごめん、そのままにしておいて。そのうち自分で何とかするから」
「かしこまりました。あまり根を詰めませんように」
「ありがとう」
木藤がそのまま退出するのだろうと思い、目を閉じる。
ベッドのそばに寄ってくる気配がした。
「どこか…お身体を痛めておられるのでは?
マッサージでも致しましょうか?」
ラインハルトは小さく笑ってうつ伏せになった。
「姫野がいないせいで、木藤、お前にそんなことまで…。
苦労をかけるねえ(笑)。
首凝りしてるから、首と肩を揉んでくれる?」
「かしこまりました。
ああ、かなり凝ってますね。
肩甲骨周りもほぐしますので、失礼して腕を背後に引きますよ」
「うん」
気持ち良さそうに身体を伸ばしてされるままになってるラインハルトの背中は、黒っぽいTシャツの上からもしなやかな筋肉が見てとれる。腕を背後に振り上げた状態はまるでそこから翼を広げて羽ばたくように見える。
「お身体の状態は、良さそうですね」
「お前がずっとメンテナンスをしてくれていたおかげだよ。
…お帰り、姫野。
真面目な木藤の真似をしてたのがバレたら、相当怒られると思うよ?」
「上手く化けたつもりですが、どうしておわかりになりましたか?」
「木藤はね、まぁまぁ僕には優しいけれども。心配し過ぎて部屋の中までズカズカ踏み込んで来ないし。
第一、僕の身体を触ろうとはしたことないと思うよ。節度を持って接してくれる真の日本男子の鑑ってとこだね」
「まがいものの日本男子で悪うございましたね。
…ふふっ、確かに坊っちゃま、じゃなかった、ラインハルト様のお身体のメンテナンスなどは他の者にはさせないようにしてきましたので、うかつでしたかね」
中年男はにやっと笑ったかと思うと、端正な顔立ちの30代の青年の顔になった。
「これくらいでいいですかね?」
ラインハルトは起きなおってから、ちらりと姫野の顔を見やった。
「器用だね、姫野。最近ではその顔を使っているわけ?
あまり、顔をころころ変えてくれるなよ。
30年も‘棺桶’に閉じ込められている間に入れ替わってしまっている人が多いし、部下全員の名前と顔がなかなか一致しないんだ」
「棺桶だなんて…。エリザベス様に言いつけますよ?
あのお方の蘇生術と、最新式の低温冬眠装置が無ければ、ラインハルト様は今頃ここで憎まれ口も叩けなかったでしょうに」
「うん。反省はしてる」
「そうですか?
…それなのに、この火傷はいったい何ですか?」
姫野はめざとくラインハルトの左の手の平にある小さな火傷を見つけたらしい。
昨日の、熱くなった宝珠を掴んで制御した時の火傷である。
「あ、うん。ちょっと…熱いものをうっかり掴んでしまって」
本当はもう一箇所、腰ポケットの辺りに火傷はあったが、そちらは治療しておいた。
「まさか、ご自分で治せなくなってるなんてないでしょうね?」
「大丈夫。いくらなんでもそこまでボケてない(笑)」
「どうして、すぐに治さないんです?」
「うーん、…戒め?」
「何のです?」
姫野の眉間に小さな皺が寄る。
「えーと、みんなに色々迷惑をかけてしまったことを忘れないため?(笑)」
と答えながら避けようとしたが、姫野にTシャツを掴まれて、脱がされそうになる。
「ちょ、ちょっと待って。他にはどこもケガしてないから、タイム!ごめん、って。
ちゃんと、お前が目指してた完璧な状態を維持するから」
「…かしこまりました。
今晩、わたくしがお風呂の時間に全身チェックを致します」
「あ、もうちゃんと自分のことは出来るから。
恥ずかしいよ!そんなサービス、いらないから」
「ついこの前まで、お人形のようにおとなしく御身ぬぐいさせてくださいましたのに」
「そりゃまぁ、僕がほぼ死体同然だったからだろ?
面倒なことをさせて悪かったね。
しかし…。
あの大怪我をした時のチャンスにお前、どうしてトドメを刺さなかったんだい(笑)?」
「え?ああ、もちろん良い機会ではあったかと思いますが。
そんなにあっさり、だなんて(笑)。簡単過ぎて、かえって萎えましたよね。
それに、ようやくここからラインハルト様の行動が面白くなってきそうなのに、もったいないじゃないですか!」
「生かしておいてくれてありがとう(笑)。じゃ、しばらく気を抜いていても大丈夫そうだね。お前のおかげで本当に状態は元よりも良いと思うよ。
それよりも。
…だいぶ皆に疑われたみたいじゃないか、悪かったね」
「いえ、ラインハルト様に重傷を負わせられる可能性があるのは、わたくしかご本人か、あと限られた数名しかいないと言われてしまっては、それは認めざるをえませんので。
エリザベス様は最初わたくしをかなり疑っておいででしたが、ヴィルヘルム様のおかげで、すぐに信じていただけましたよ。
ラインハルト様本人が、まさか占いの最初の結果の寓意画を盗み出していたと聞いた時は、わたくしも驚きましたが、エリザベス様もかなりショックを受けてましたよ」
「ふふっ(笑)、ごめん、自分のバカさ加減が嫌になるね」
と笑っている表情をうかがい見ると、ラインハルトはどうやらまだバレていないことは白状するつもりなどなさそうである。
死ぬような目にあわされていながら誰かを庇っているとしたら、正真正銘の愚者である。
いったい何を考えているのか。
「やはり、ちゃんと反省していないようですね」
と姫野は溜め息をついた。
確かにこの方こそ審判(XX)と世界(XXI)の間に生まれてきた子だとヴィルヘルム様が感じたのは解る気がする。
高みをやすやすと飛ぶようなことをして皆を驚嘆させたかと思えば、つまらないことに拘泥して皆を呆れさせてしまう。優しく人当たりも良いかと思えば、驚くほど傲慢で冷徹なところもある。未だに読めない。
「大丈夫。僕は大真面目に反省してるよ。
『お祖父様や皆が僕をどれだけ大切に思ってくれているかを毎日1回は思い出して、お祈りをきちんとする』と、エリザベスに誓ってからは心を込めて一日も欠かしたことはないから」
「そんないい笑顔で言われても、わたくしは騙されませんよ」
「ひどいな(笑)。
先日、膨大な反省文をお祖父様宛に書いて送っといたけど。
僕は占いの方はさっぱりわからないから、まさかあんなに時間をかけて回数を重ねて、あんなめんど、いや、あんな丁寧なことをやっているとは思わなかったな」
「占いの途中経過だけで早飲み込みして日本に勝手に留学してしまうわ、勝手に真琴様とコンタクトを取りに行くわ、その上、破格の上級魔法の本をついでに持ち出していて丸暗記して実践して死ぬようなケガまでしたとあっては…」
「ごめん、あの時は、本当に自分のテンションが高すぎて、どうかしてたんだよ。
ま、あんなところに野良猫がいるなんて思わなかったからなぁ、…。
あの時の最後のミスさえ無ければ、全部成功してバレないうちに本も元通りに返してたはずなんだけど」
「ヴィルヘルム様は、『多少の勇み足は致し方ない、日本に行くだけなら良し、自分が庇ってやろう』と思ってすぐにラインハルト様を止めだてしなかったことをかなり悔いてらっしゃいましたよ。
父王様がご不在中に裁定を下すお役目とはいえ、『30年強制冬眠措置』を申し渡された時のヴィルヘルム様のお顔は…その場にいた者は一生忘れませんから。
ご裁定を恨んではなりませんよ」
「…うん」
30年寝たことにも気づかずにふらふらと出歩いた自分としては、拘束罰の側面なんて気づくはずもなく、ただ快適に惰眠を貪っていただけのような気がする。
「お祖父様を恨むなんて、とんでもないよ。むしろご温情溢れる措置だったと感謝してる。言い訳じみているけれど、あの時の自分はがむしゃらに何かに突進している感じで自制心なんてなかったから。
自分に選択権がない審判で、強制的に自分を止めてもらえたのは正解だと思う。
『このモラトリアムを与えてやって良かった』とお祖父様に感じていただけるようにはしたいと思っている。もちろん猶予を頂いた分のツケを払うつもりで働くよ。
姫野にも、本当に悪かった。
戻ってきてくれたからには、お前がダンス講師を務めてくれるんだよね?」
「もちろんです!その為に戻ってきたのですから」
姫野の顔つきが変わる。
「あ、そこまでの本気はいらないから。一族の中で一番外見偏差値が高いお前が本気を出したら、他の男がかすむだろう?…困るよ。
お前には遠慮ってものがないのかい?」
「申し訳ありませんが、やるからには本気です。
わたくしも、本来の姿に近い方が落ち着きますから。
あ、そういえば、肝心の夏美様にはきちんとお話は出来たのでしょうね?」
「いや、まだパーティをやるよ、くらいしか…」
「何と!『花嫁候補になってください』と言うだけのことじゃないですか?
お二人で仲良く話をしていたという斎藤からの報告で安心してたのに」
「姫野…そんな簡単な話ではないんだけどな」
「当事者のラインハルト様が本気を出さないとなりません。勝てないくらいに、わたくし頑張りますから」
「よせってば。…男性陣みんな勝ち目ない勢いでお前が僕の邪魔をしたってお祖父様に訴えてやるから(笑)」
「しかし、いったいどんな話をお二人でなさってたんですか?」
ラインハルトは微かに笑うだけだった。
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瑞季と遥に誘われての久しぶりの夕食。話題はもちろん、パーティの話である。夏美は残業で少し遅刻してしまったので、たまに話が見えない気がする。
「ダンスレッスンを無料でやってくれるというのもお得だけど、遥のホテルのドレスレンタル代まで負担してもらえるなんて最高じゃない?」
と瑞季が言った。
「私達だけじゃないのよ、会社のスタッフの方々にも男女含めてそうらしいわよ」
「会社ぐるみのレジャーなの?」
「福利厚生費とか?」
「なんでも、皆さんは仕事もレジャーも真剣なんですって。バカンス休暇を交替で2ヵ月以上取得するのが当たり前という方々だから」
と遥が解説する。
「ま、お祖父様のリクエストも相当に酔狂だと思うよねー。
あ、そうだ、夏美、先日、ライさんに何か言われなかった?」
と瑞季が夏美に振る。
「パーティの内容について、ライさんが夏美に趣旨を説明しておいてくれてたらいいのになと思っていたんだけど」
と遥も言う。
「うーん、遥が大学に行った後、パーティの話というより、私が途中で話した『選択ミスを重ねたら、もう選択なんかしたくないと思うかどうか』という話になり、それで…」
「ちょっと、何それ?そんな色気の無いつまらない話を2人でしてたの?」
と瑞季。
「あ、ひどいなー。ライさんには面白がってもらえたみたいよ?」
と夏美は言ってみる。
「そうそう。ライさんはね、私のいた時から、夏美の色々な例え話が気に入ったみたいだったわよ。なんか2人とも波長が合うんじゃない?って思ってた」
と遥。
「遥こそ、なんだかお似合いだったなー。ライさんが椅子を引いて遥を座らせた時、写真に撮ってあげたかったくらいよ?
本当に絵の中か映画の中のカップルのように素敵だったわ」
「ありがとう。でもね、そんなことよりシンデレラ役は夏美にやってもらいたいって、ライさんの執事さんもそんな風に言っていたわよ?」
「何それ?…シンデレラ役?」
と夏美が聞き返したいのに、瑞季が少し興奮気味に被せた。
「そう!執事の姫野さん!かっこいいよねー?
遥は何回かお会いしてるの?このこの〜!」
「ええ、もううちの会社のオフィスでもホテルでもミーティングをするでしょう。姫野さんがこちらに歩いて来るのをお出迎えすると、姫野さんをみんな振り返って見ているのがこちらの目に入ってきて笑えるくらい」
と遥が言った。
「あら、ライさんだって、先週スーツを着ていたのを見たけどまるで外人モデルさんのように素敵だったと思うけど?」
と夏美が言う。
「うん、素敵だったよね。でも、夏美も姫野さんに会ったら驚いてファンになっちゃうと思うよ。
例えばね、ライさんは、たまたますれ違った人がスマホをちょうど見ていなかった時に偶然見て『アレ?あの人、かっこいい人ね』って振り返るとするでしょう?
姫野さんはね、違うの。
なんか独特の雰囲気というかオーラがあってね、スマホをのめり込んで見ている人も、気配を感じた途端にわざわざ顔を上げて姫野さんの方を見て、そのままスマホのことも忘れて姫野さんの虜になってしまうんじゃないかと思うくらいなの」
「そう、先日、うちの近所に来たのよ。役所の図書コーナーの処分予定の本の中にたまたま天狗の伝承に関する本があったの。で、連絡したらうちまで取りに来てくれたのが姫野さんで。
少し立ち話してたら、吸い寄せられるように寄ってきたのが、誰だと思う?夏美の知っている人よ?
黒田母娘!」
「黒田…?あ、もしかして、黒田加奈子ちゃん?」
「ちゃんって感じじゃないけどね。犬の散歩してて通りかかったとかで。挨拶して話に加わってくるんだから」
「そういえば、瑞季って加奈子ちゃんとはあまり話さなかったよね?」
「子供の頃は夏美を取り合いっこしてたからね。仲良く出来てなかったかも。あの子、みんなと一緒に仲良くしていくんならいいよ?そうじゃなくて夏美を独り占めにしようとしたりするから、私だけじゃなくて皆から距離を置かれるのよ」
「あ、ごめんね、遥。知らない人の話をして」
「大丈夫。とりあえず姫野さんの計らいで黒田加奈子さんもパーティに来てくださることになったから。ダンスレッスンも来てくれるみたい」
「そうなんだ〜。加奈子ちゃんって東京の大学に行ってから全然会ってなかったからなんだか懐かしいな」
「私も、役所で隣の課の黒田課長にはお世話になったから、つい愛想良くしちゃったけど、とにかく遥と一緒に夏美を最大限に応援してるからね!
第2外国語がドイツ語だったなんてアピールしてくる加奈子なんかに負けないでよ!」
と瑞季が熱く語る。
「……?あのー、パーティだよね?試合に出場するみたいな話になってるよ、瑞季?」
「うふふ。あまりあからさまに夏美の応援をすると加奈子さんに悪いと思うけど。
とりあえず夏美を主役にしたいご意向みたいなので」
「??」
「パーティをね、お祖父様のリクエストの趣向でスタートするのが第一部なの。で、途中からくだけてカラオケ大会みたいに何かやりたい人がエントリーして披露しあうのが第ニ部。で、あとは無礼講にするって言ってたけど。第一部が、王子様の舞踏会(笑)。で、シンデレラが必要で、」
「そう、夏美がダンスが上手だと私が言った時のライさんの嬉しそうな顔といったら!」
「ねえ♪」
「あのーもしもし?
私、ガラスの靴を履いてシンデレラスタイルで踊るの?無理だと思うよ?」
「大丈夫、あ、問題、そこ?そこだけ?
良かった〜♪
ちゃんと踊りやすい靴にしてもらうから。主役級でもいい?」
「あ、まぁ、先日ダンス経験者に頼みたいって言ってたから、私で良ければ。
だって、お祖父様を喜ばせるためのお芝居なんでしょう?」
「良かった♪
夏美に断られたら、本気で困るところだったの。
あと、ドレスの色は白でもいい?」
「えー?なんかウェディングドレスみたいなの、嫌だなー。膨張色だし」
「こうなったら、お嫁に行ってしまえ〜い!」
「瑞季、ひどいなー。私を勝手にお嫁さんにしないで。
とにかく、ほら、あまりウェディングドレスのモデルをすると婚期を逃すって言うじゃない?」
夏美の前で2人の友人が噴き出すので、ちょっと悔しい。
「私、大学祭で一度だけウェディングドレスのモデルをやったんだけど。母からそうやってからかわれてすごく気にしてたんだから」
「あはは、そんなこともあったねー」
と瑞季が笑った。
「そうか〜。その手があったか!
夏美、うちのホテルのレンタルドレスと打掛のモデル、やらない?
確か、夏美の会社は、副収入があっても大丈夫だったよね?」
遥が目をらんらんとさせる。
「だからー、私の婚期が、、」
「大丈夫、そんなの迷信だから♪
嫌じゃなければ、ドレスの試着の時に写真を撮らせて」
「えー?うん。バッチリメイクしちゃえば、気持ちだけは大丈夫かな。仕上がりは保証しないよ」
「遥、安心して。
夏美はね、普段はなるべく目立たないようにしてるけどね、ダンス大会の時なんて、別人だったから。役柄を演じるっていうの、大得意だよね?」
「うん。昔からそうかな。クラスで貢献できるのがそれくらいしかなかったけど。
すごくやりたいわけじゃないけど、学芸会とかの演技だったら。
自分じゃないんだ、役を演じてるだけなんだと思うと、安心して出来るから不思議。
いきなりピンチヒッターとかでもあまり失敗はしなかったのが、ちょっと自慢」
「良かった〜。とりあえず相手役はライさんなので。オーケーだよね?」
「大丈夫。この間、いい人だと思ったから。安心して。
たぶん、もう友達だと思えてるし。役を演じるだけなら私、テニスラケットとでも踊れる自信があるわ」
「頼もしい♪ありがとう、夏美。パーティは7割くらいは成功したも同然」
「じゃ、私達は、その隙に姫野さんとダンスを踊っているからね♪」
と瑞季が言う。
「うん、わかった。遥、私、第一部終わったら、自由なんだよね?ビュッフェ全部制覇していいんだよね?」
「大丈夫。とにかくビュッフェスタイルだけど、皆さまに喜んでいただけますように豪華にするつもり」
「あ、でも夏美。シンデレラスタイルのまま、モリモリ食べないでよ」
と瑞季。
「もちろん!、パーティの雰囲気壊さない程度の服に着替えてからにするから」
「私達、パーティの後、何キロくらい追加しちゃうか心配にならない?」
と瑞季が言う。
「大丈夫、パーティ前に5キロくらい先に落としておけばオールオーケー!
私、ドリンクバーにもう一度行ってくるね。
あ!プチケーキの所に、新作が来てる♪」
と夏美が席を立つ。
「…夏美の攻略方法の一つがわかった気がする」
と遥が瑞季に囁いた。
「うふふ、何を今さら。
あ、でも遥、ライさんにヒントあげちゃダメだよ?」
「え?…うん、わかった。友達だから…?」
「そう、2人とも大事な友達。そうでしょ?
いったいどんな話を2人でしてたんだろうね?」