創世
彼は飽きていた。
自らが創造した世界。この世界には全てがあった。
大気には力が満ち溢れ、大地は脈動し、大海は巡り、空はそのすべてを覆いつくしていた。
しかしてそれらも限りなく極小で有限なものでしかない。世界はその外に、内側に、果てしなく広がっている。
……そう。彼は文字通り“無限”を与えたのだ。
無限。それは永遠の可能性。彼はその中で息づく“鼓動”を、自ら動き出す“営み”を唯々見ていたかった。感じていたかった。期待をしていた。
君たちが自らの可能性を捨て去るまでは……
君たちはただ目を開けばよかったのだ。そうすれば大気に満ちるあらゆることを可能にする力を視ただろう。
君たちは触れればよかった。そして、大地は隣人と知り、その脈動を感じただろう。
君たちは少し鼻を利かせればよかった。大海の息吹を嗅ぎ分ける力を持っていたはずなのに。
……少しでいい。信じればよかったのだ。“無限の可能性”は貴方に空という枷も、物質という障害も、そして時間という牢獄さえも、誰にも何も邪魔させはしなかったというのに。
可能性を捨てたこの世界を、彼は見限った。もはや何をしようが、有限の世界は“有限のまま”自ら破滅に向かい続けるのだから……
「なぜこうなってしまった……。」
「期待しすぎたのがいけなかったのか……しかし、傍観者であった我が何を言ったところで何の意味も持たんな。」
そして彼は思考の海に浸かりはじめる。そして、しだいに考えがまとまり彼の目的がはっきりと形を成していく頃には彼の姿や声、そして思考はその在り様を徐々に変えていった。
「そうだ、新しい世界を作ろう。そして、今度こそおもっきり介入してやる!!」
そこには、いるはずのない幼い“彼”が存在していた。
そして、彼は一番最初の“仕事”を始めた。
『コズモ』
アピロの書曰く
神はこの世をお創りになった。
神は生命に無限の可能性を与え、我らの意志のもとに全ては存在する。
さあ皆よ。世界は広大だが、尽きることのない意志でもってこの世界を……
出だしはかっこいい感じにしたかったのです。
すぐに崩れますが、最初が肝心なのです。




