第97話、ガンバラ王国へ
エルフの長が砂漠の国に単身入国してから2日後、約束通りに長は長老衆の説得に成功し、ギルマスの両親を連れ船で砂漠の国に戻ってきました。
ギルマスは今回もエルフとの仲裁に入る為に、お城にやってきたのですが、そこで数十年ぶりとなる両親と再会し号泣しています。
ギルマスの両親もずっとギルマスの事は気に病んで居た様で、親子3人で抱き合う姿に、両親を持たない僕やミカちゃんも貰い泣きをしてしまいました。
そして正式にエルフと砂漠の国とで国交が結ばれ調印式も無事に終え、翌日、僕達はエルフの船に乗り込みます。
湖には急遽船着場が作られ、そこにギルマスとジェニファー王女が見送りに来てくれています。
「勇者殿、皆さん、本当に此度はありがとう」
ギルマスは先日僕達の前で感動の再会で大泣きした事に羞恥を感じている様ですが、気にする必要はありませんよ。
ギルマスの両親は暫くこの国に滞在するそうで、その間に途切れていた親子関係を修復出来るといいですね。
「皆さん本当に有難う御座いました。そういえばこの湖の名前を昨夜考えたんですの。勇者様に関係した名前にしようと考え、迷湖と名付けましたわ。またこちらに足をお運びになる際は是非いらして下さい」
王女様なのに畏まった態度で綺麗なお辞儀で告げられます。
迷いそうな湖とか不吉じゃないですかね?
そう話すと、この湖が出来てから水を嫌いこの国の付近から魔物が消えたとか。逆に幸運の湖ですわ。と教えられました。
見送りに来てくれた人達に手を振り、エルフの船で大樹へと向かいます。
大樹での緑化活動を終えれば、そのままアンドレア国への帰路に戻る事に為、足の遅いラクダは邪魔になりそうなので国交記念として砂漠の国へ寄付する形を取りました。
「それにしてもルフランの大地からまだ少ししか移動していない筈なのに、滞在期間が長くなってしまったな」
フローゼ姫の言う通りですね。まさか最初にエルフと会ってから10日も経つのにまだエルフの領内から進んで居ないだなんて……アンドレア国に着くのは何時になるんでしょう?
エルフの国は獣人の国とは国交を結んでいるようですが、人間の国で国交を回復させたのは砂漠の国だけです。これから改善されるといいですね。
船で人間の国まで送ってもらおうと考えましたが、流石にそれは断わられました。やはり人とエルフの溝はそう簡単には埋まらないようです。この川を東にずっと上がると川岸右側には竜が生息する山があり、左が獣人の国、更に上ると左に人族の国で右は魔族領だそうです。
獣人の国の隣の人族の国は遠回りになる為に、川を東では無く北東に僕達は進まなければいけません。
「それで迷い猫殿、考えは変わらぬか?」
「僕はミカちゃん達と行動を共にするから、アルフヘイムには残れませんよ」
エルフの魔力量減少問題を解決する為に、大樹に残らぬかと何度も誘いを受けますが、僕には帰る国があります。やんわりと断わると、長は残念そうに「では迷い人を見かけたら、エルフの国で保護したい旨を伝えてくれ」と依頼されました。納豆の人ですね。何処に行ったのかさっぱり分りませんが……。
そうして船は大樹の根元に着岸し、僕達、実際にはミカちゃんですが緑地化のオーロラの輝きを放ちます。大樹の周りは元々が森で砂漠の民達によって伐採された為、根っこは残っています。
ミカちゃんが手を翳し、魔法を放つと――。
草花だけではなく、切り取られた木の根からずんずん木が生えだし、天高く伸びていきます。
「おぉ、過去エルフで行った再生魔法でもこれほどの効果は無かったのじゃ。やはりおしいのじゃ」
そんな事を言っていますが、
駄目ですよ!
ミカちゃんも僕もアンドレア国に戻るんですから。
フローゼ姫はごほん、と咳払いをすると長に言います。
「エルフの長、子猫ちゃんもミカ殿も我が国の大切な宝なのだ」
遠まわしに諦めろと告げるフローゼ姫に、長が縋る視線を投げますが、こればかりは仕方有りません。用向きも済んだので出立していいですね。
僕達はエルフから緑地化の代金として、馬を2頭と馬車を1台貰い受けました。馬も馬車も砂漠に調査に行った時に使ったものです。
「そろそろ行くにゃ。馬車有難うにゃ」
「世話になったな長、また縁があれば会う事もあるだろう」
「お世話になりましたわ。ではご健勝で」
「アーン」
「万一、迷い人を見つけたら話だけはしてみますね」
「こちらこそ世話になったのじゃ。迷い猫殿、かたじけないのじゃ」
大勢のエルフと長に見送られながら、僕達は大樹を北東に向け馬車を走らせます。川に浮かぶ船の船首からはキャデナさんが両手をあげて振っています。
最後までエルフの長もキャデナさんも、影が薄かったですね。
再会とかあるんでしょうか?
それはさておき、僕達3人と2匹を乗せた行商に使う馬車は漸く、エルフ領を抜けガンバラ王国へと向かいます。
彼の国は獣人差別が激しい国だと聞きます。
何事も起きなければいいのですが……。
お読みくださり、有難う御座います。




