表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/229

第92話、ミカちゃんの修復魔法

 皆で魔法を覚えた翌日、特に何も予定の無かった僕達は先日の討伐の報酬を受け取りにギルドにやってきました。


 支払いが団子虫の討伐分と一緒だと、この街で買い物も満足に出来ません。


 ミカちゃんがこの間ギルドで引き落とした金貨1枚は、宿代に使う予定なので他の買い物に使う分のお金が必要になります。


 人の世の中は国毎に使えるお金が変わってくるらしいので大変ですね。


 ギルドに到着し受付に行くと、昨日も居たおばさんがいました。


「いらっしゃい。ようこそ……昨日はすまなかったね。ギルマスから支払いの件は聞いているよ。スコーピオンの討伐数が17匹で銀貨207枚。ビックワームが1体で銀貨10枚。ワームは銀貨5枚だよ。金貨11枚と銀貨1枚だが支払いはどうするんだい?」


 19体倒してこれならいい稼ぎになるのでしょうか?


 でもアンドレア国の金貨1枚が銀貨10枚だったのにここでは金貨1枚が銀貨20枚です。全て銀貨の方がいいのでしょうか?


 そう思っていると、


「ここの銀貨の含有量はどうなっている?」


 フローゼ姫から横槍がはいりました。


 含有量とは何でしょう……。


「銀の割合が4割。鉄と銅が残りだよ」


「ふむ……ミカ殿、それなら金貨1枚だけ残して後は貯金した方がいいと妾は思うぞ」


 僕もミカちゃんも大金の扱いには慣れていません。


 ここはフローゼ姫に任せましょう。


「なら金貨10枚は貯金するにゃ。銀貨22枚だけ受け取るにゃ」


 くすんだ色の銀貨を22枚受け取り僕達はギルドを後にしました。


「さっきのは一体どういう事ですの?」


 普段お城に篭っているエリッサちゃんも分らなかった様です。


「うむ。アンドレア国の銀貨の含有量は銀が9割で残りが銅だ。だがここの銀貨は、大きさは同じでも銀の割合があまりに低い。それだと銀貨を多く受け取ると損をするのだ」


 本当に人の世の中は複雑怪奇です。


 全ての国で同じ貨幣、含有量に統一すればいいのに……。


 でもそれだと他の国で銀の含有量がアンドレア国よりも高ければ、その国では銀貨の支払いの方がいいという事ですね。


 僕がそう伝えると、意外な答えが返ってきました。


「まぁ、妾の知っている限りはそんな国は無いのだがな。妾の国は小国でも銀と金の鉱山で栄えている国だからな」


 フローゼ姫の曽祖父が一代で国を興すことが出来たのも、鉱山を発見した事が大きかったのだそうです。


 王家が持つ鉱山の利権を欲し、オードレイク伯爵の様な野心ある貴族派や、他国から常に狙われている国でもあるとこの時、僕は初めて知りました。


 僕に負けた騎士団長が生きている限りは、少なくとも国内で反旗を翻しても失敗に終わるだろうと言っていましたが、僕からすると半信半疑ですね。


「子猫ちゃんには完敗したが、騎士団長は周辺各国では負け知らずなのだぞ」


 フローゼ姫の師匠でもあるそうです。


 今のフローゼ姫と戦ったら、確実に騎士団長が負けると思いますが……。


 そんな話をしながら僕達は武器屋にやってきました。


 何故って?


 フローゼ姫の武器を鍛え直せないかの相談と、不可能なら用意する必要があるからです。


 僕からすれば、魔法を覚えたフローゼ姫に剣が必要だとは思えませんが、


 フローゼ姫は剣士を目指しているのだそうです。


 掘削の魔法を使う剣士とかどうなんでしょうね?


 貫通のバフを使えば刺突するにはいいのかな?


 武器屋にはゴツイ体格のおじさんが、上半身裸で椅子に座っていました。


「ご主人、この剣を鍛え直せるか?」


 フローゼ姫がその店主に対し問いかけると――。


「こんな小さな国の鍛冶屋に、そんな大層な剣を扱える訳がないだろ!」


 そう吐き捨てる様に言われます。


 愛着のある剣はこの際、他の国で鍛え直すとして他の剣で代用するしかありませんね。


 そう思い一通り置いてある剣を見て回りましたが、残念な事にフローゼ姫が納得出来る剣は置いていませんでした。


 結局、解体用の短剣を2本だけ購入し店を後にします。


 他に買う物も無く、宿に戻る道すがら僕は昨晩見たミカちゃんの魔法を思い出します。


「ミカちゃんが昨日覚えた魔法なら――フローゼ姫の剣を直せるんじゃ?」


 僕がミカちゃんに尋ねると、一瞬呆けた後で思い出した様に、


「凄いにゃ。子猫ちゃんは神通力を覚えたにゃ!」


 そんな神の名を冠する魔法は知りませんけれどね。


 ミカちゃんも修復魔法を思い出した様です。


「私が昨日覚えた魔法に、壊れた物を修復する変わった魔法があったにゃ。宿に戻ったらやってみるにゃ」


 作者も考えていなかった、青天の霹靂グットタイミングでしたね。


 宿に着くなりフローゼ姫が、


「本当にこの剣が直るのか!」


 剣をミカちゃんに差し出しながら問いかけてきます。


「やってみないと分らないにゃ」


 剣を受け取り、ミカちゃんが手を翳して魔法を発動させると、掌から青い光があふれ出し剣へと吸収されていきます。まるで時間をゆっくりともどした様にスコーピオンの鋏でボロボロに欠けていた剣が新品の様に綺麗になっていきます。


「見事なものだな……」


「凄いですわ」


 ミカちゃんの放った修復魔法によって新品に生まれ変わった剣を見つめ、皆一様に言葉を零します。


「どうやら成功したみたいにゃ」


 修復を終えた剣はミカちゃんの手から、持ち主のフローゼ姫へと手渡されます。


 フローゼ姫はその剣を愛おしそうに見つめ、


「有難うミカ殿。お陰で父上から頂いた剣が元通り、いや新品に生まれ変わった」


 フローゼ姫から感謝の言葉を頂き、ミカちゃんも満更ではなさそうです。


 目元を下げながら、良かったにゃ。と返事を返しています。


 普通に使えばスコーピオンの鋏でボロボロになる剣です。団子虫にそれが通じるとは思えません。


 もしかするとフローゼ姫は新しく覚えた魔法、貫通のバフを用いた戦いを想定しているのかも知れませんね。


 これで僕達の準備は整いました。


 後は団子虫の襲撃を待つばかりです。

お読みくださり、有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ