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子猫ちゃんの異世界珍道中  作者: 石の森は近所です
第1章 はじまり編
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第46話、殲滅戦

 僕達が壁の外側に辿り着くと、僕達に気づいた門の前で指揮をしていた目つきの悪いおじさんが、弓兵に僕達を狙えとでも言うように、腕をあげこちらを指差しているのが見えました。


 人に指を指してはいけません。ってお婆さんが言っていましたよ。


「あの人、こちらに指を刺していますわよ」


 皆でその人を見ていると、その周囲に集まっていた弓兵が一斉に、弓に矢を番えて弓を引き絞り放ちました。的は――僕達の様です。


 数十本の矢が飛来しますが、僕達の手前で音も無く止り、勢いの無くなった矢は全て僕達の足元に落ちていきます。


 少し離れているからか? 僕達の周りに結界が張られている事が分らないようです。矢を放った弓兵達は、一様に小首をかしげ、一部の目のいい者は結界に気づいた様で、唇を引き絞り、目を大きく見開いています。


 攻撃したんですから、次は僕の番ですよね?


 僕は、壁の上に立ち掌を下に向けます。同じ味方の騎士、弓兵達もこれから何が始まるのか分らず、息を呑んでただ、ジッと僕の一挙手一投足を見つめています。直ぐにその効果は現れました。掌が光った次の瞬間には、敵兵が集まっている所に水の雫が降り注ぎ、それが敵に触れた瞬間――まるで吹雪の中に長時間放置された人間の死体の様に、凍り付き肌が黒く変色していきました。


「子猫ちゃん、こんな広域魔法も使えたんですのね」


エリッサちゃんが翡翠色の瞳を輝かせながら褒めてくれます。


「子猫ちゃんは何でも出来るにゃ」


ミカちゃんも笑顔でそう言ってくれましたが、


「みゃぁ~みゃぁ~!」


 僕は何でもは出来ませんよ。出来る事だけです。


 続いて、ミカちゃんとエリッサちゃんも同じ様に掌を敵に翳します。その様子を下で見ていた敵兵達は、恐れおののき皆背中を向け逃げ出そうとしましたが、既に遅く――2人の掌が光輝くと片や氷の矢が逃げ出した兵を背中から貫き、もう一方は『ゴゴゴグワァーン』という爆音を響かせながら、眩い光の線が次々に騎士達が着込んでいた鎧を伝いその光が当った人は体から煙を噴出させ、バタバタと倒れていきます。


 その光景を壁の上で見ていた味方の兵士達は、驚愕で声も上げられずにただ目線だけは大きく開き倒れた敵兵を見つめていました。


 範囲から外れた敵兵で、動ける者は今の魔法に驚き逃げ出しますが、中には今の魔法で呆然とし、腰を抜かしているものも多く見受けられます。その表情は恐怖に顔面は蒼白で唇は震えて声も出せない有様です。


 ここの門はもう味方の兵に任せて平気でしょう。後2箇所ある門に向けて僕達は移動を始めます。その頃になって漸く、味方の歓声が背後から聞こえてきました。子爵様の指揮する声も僕達が到着した時とはうって変わり、大声を張り上げ、堂々とした風格を感じます。今の攻撃を行った中には自分の娘もいたのだと自慢気です。


 鼓舞された兵達の表情は、最初とは違って獲物を前にした獰猛な猛獣の様な目付きになっています。門が開かれ、中から騎馬隊、騎士が踊りだし腰を抜かせて倒れていた兵達に切りかかりました。


「なんか一気に勢いづいた感じがするにゃ」


「これもミカさん達のお陰ですわ」


「みゃぁ~!」


 僕達は、壁の上の連絡用通路を元気いっぱいに駆け抜けていきました。


 もう一つの門が見えてきました。そこでも正門と同じく敵からの弓矢の攻撃に晒されて、中には負傷している弓兵もいました。


 僕達が到着したからにはもう大丈夫ですよ。


 僕達3人は、門まで辿り着くや否や正門で放った魔法を再度放ちます。結果は、まったく同じで――ミカちゃんの放ったサンダーは鎧を着込んだ敵兵が固まっていればいる程、その威力が増しバタバタと敵が倒れていきます。これが魔物だったら魔石が集め放題ですね。


 ここの指揮官とおぼしき騎士に、エリッサちゃんが指示を飛ばします。


「この様子なら門から兵を出し、掃討しても問題はありませんわ。一気に敵を殲滅してしまいましょう」


 エリッサちゃんに鼓舞された兵達は、勝鬨をあげながら門を開き、倒れている大勢の兵達へと切りつけました。これ全員殺しちゃっていいのでしょうか? 僕が不思議に思っていると……。


「倒れている兵を殺す必要はあるのかにゃ」


 ミカちゃんが代わりに聞いてくれました。その答えは、目の前のエリッサちゃんではなく、指揮を取っていた騎士から語られます。


「この者達は、陛下の命に背き謀反を起した大罪人です。この国の王に反旗を翻した者は例え一兵卒であろうとも死罪なのです」


 どうやらそんな大事だったようです。仲間の騎士に討ち取られていく伯爵の兵を見ながら、人の世の哀れを肌で感じたのでした。

お読み下さり、有難う御座います。

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