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第177話、捕まった!

 僕の戦意は既に消えてしまっています。

 いくらエルストラン皇国が差し向けた魔法師といえども、この人はお婆さんのお孫さんです。僕には渚さんに刃を向ける事など出来そうにありません。

 僕の躊躇いを感じ取った渚さんは、吐息を漏らすと指先に集めた魔力を一気に門に向け放出しました。

 その魔力量は先程までのものとは一桁違います。

 周囲から集めた砂を強力な圧力で門に打ち付けています。


「たかが砂、されど砂ってね」

「流石お師匠様です。サンドブラストでしたっけ?」

「そうよ。風魔法と土魔法の合わせ技ね」

「それにしても凄いっす。あの頑丈な門があっという間に削られていくっす」


 僕が見ている前で門へと攻撃され、せっかくミカちゃんが修復した門がまた破壊されていきました。


「止めてください。あそこにはミカちゃんがいるんです」


 僕が懇願すると、金髪の少女は面白いものでも見つけた様に瞳を大きくして、


「お師匠様、これが色ボケって奴っすか?」

「さぁ、どうなのかしら。子猫も欲情する事があればそうだろうけど」


 僕のお願いは全く受け入れられず、そうしている間にも兵達は進軍を開始してしまいます。

 渚さんに対して攻撃をする事は出来ませんが、騎士達になら出来るんですよ!


 僕は面白おかしく馬鹿話をしている渚さんの隣で掌に魔力を集めます。

 すると――。


「そんな事させると思っているの?」


 そう告げると渚さんは僕が魔法を放つ前に、僕に魔法を撃ってきました。

 その粒子は僕には当たらずに僕を包み込みました。

 一体何の真似でしょう。

 これは結界ですよね――僕は結界を無視して掌を門へと押し寄せる騎士達に向け、稲妻の豪雨を放ちました。いや、正確には放ったつもりでした。

 でも事実は、結界から魔力の粒子が飛び出した瞬間、まるでそれらが転移したかの様に消えさりました。


「なんで――」

「ふふっ、驚いている様ね。これは普通の結界に見えるけど君が今纏っている結界とは性質が違うものよ。これで君がどんな魔法を放っても、この世界に影響は出ない」


 渚さんが発した発言は僕の心胆を寒からしめます。

 こんな魔法で防御されたら――僕達に勝ち目なんてありません。

 あれ?

 それなら何でさっきメテオを僕が撃った時にこれを使わなかったんでしょう。

 もしかしたら使えない何かがあったのかもしれませんが、驚異には変わりありません。


 僕を白い繭の様な光が包み込んだ事で、正門の方ではミカちゃんが泣きそうな表情でこちらを見ているのが分かります。

 きっと渚さんと僕との会話内容は知りませんから、捕らえられたと勘違いしているんでしょうね。似た様なものかもしれませんが……。


「それで渚さんはこの街を襲って何をしたいんですか!」


 僕が説得を試みようと声を掛けると――。


「そんな事は決まっているじゃないの。私を軟禁し国民を欺いていた王家の者を処刑する為よ。弱い兵がいくら集まっても烏合の衆でしかないしね」

「それじゃー渚さんの目的は、フローゼ姫?」

「そうよ。ちゃんばら好きのあの子を処刑すればこの地にアンドレアの血筋は残らない。あれ――何で血筋を残しちゃまずいんだっけ……」

「お師匠様、それはあれです。帝からそう聞かされたとか前に言っていたっす」

「そう、そうだったわね。そんな訳だから子猫は黙ってそこで見ていなさい」


 何だか様子がおかしい渚さんですが、王家への復讐の意味もあるんでしょうか。

 僕は説得する前に撃沈させられてしまいます。

 そんな会話をしていると壊れた門から続々と皇国軍が侵入していきます。

 が、侵入させたのはミカちゃんの作戦だったようです。

 門を潜った瞬間に稲妻の光が騎士達へ降り注ぎ、騎士達は次々と倒れて行きました。

 この前のエリッサちゃんの時は半ば暴走気味で加減が無かったですが、さすがミカちゃんです。騎士達の意識は刈り取った様ですが、殺してはいません。

 僕がいつものミカちゃんの様子に安堵していると、


「何よ、あの猫娘は――騎士達だけじゃ完全に力不足じゃないの。アッキー出番よ。行ってあの猫娘を懲らしめてきなさい」


 ミカちゃんをその視界にとらえた渚さんは、そうアッキーと呼ばれた少女に指示を出します。


「了解したっす。いい所をお師匠様に見せるっすよ」


 アッキーは調子のいい言葉を残し、一瞬で姿を消しました。

 多分、僕達が使う神速と似た様な魔法ですね。

 門の周囲には倒れた騎士達が山の様に連なっていますが、それらが何かに当たると吹き飛ばされ穴の中に落ちていきます。


「まったくあの子ったら。味方を落とし穴に落としてどうすんのよ!」


 まさか現状であれは足止め用の湖ですとは言えず、僕は門に迫ったアッキーの様子をただ見つめていました。

お読みくださり、ありがとうございます。

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