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子猫ちゃんの異世界珍道中  作者: 石の森は近所です
第1章 はじまり編
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第14話、旅立ち

私と子猫ちゃんは、丘の上から村を見下ろします。


既に、村のあった場所には、焼け焦げた木々しか存在しないようです。


それでも誰も居なくなった村に、何かあるかも知れない――。


そう思い、子猫ちゃんとゆっくり近づいて行きました。


村の門があった場所の、直ぐ傍の林から村の様子を観察しましたが、


もう兵隊も、誰も、残っている人は居ないようでした。


意を決し一歩づつ、足を進めます。


門のあった場所まで来ると、鼻が詰るような木の焼け焦げた臭いが漂っていました。


我慢して中へ入ると、恐らく村人とさっきの後処理に来た人の死体を燃やしたらしい場所だけ、黒い小山が出来ていました。


私達はそちらをなるべく見ないようにしながら、お爺さんと暮らした家の辺りまでゆっくりと歩きます。


急いでしまうと、どれがお爺さんの家なのか判断が出来なかったから……。


家に辿り着きましたが、綺麗に建材に使われていた木は燃やされ尽くし、


焼け跡にも何も有りませんでした。


でも、何も無い方が良かったのかも知れませんね。


何か残っていたら、これから旅立つのに後ろ髪を惹かれてしまうから――。


「子猫ちゃん、これからどうしようか?」


私の足首に体を擦りながら……。


「みゃぁ~みゃぁ~」


やっぱり何を言っているか分りません。


もどかしいです。


「取り敢えず、オードレイク伯爵の街がある方向だけは足を向けない様にね」

「みゃぁ~!」


分ってくれた様です。



多分……。





オードレイク伯爵の街は、夜通し歩いてきた方向なので私達は、逆の方向へと歩き出しました。


少し歩くと、小川があって人が1人通れる位の橋があります。


橋まで来ると、子猫ちゃんが小川に飛び込みました。


「子猫ちゃん!」


私が叫ぶと、一瞬こちらを振り向いたのですが――。


直ぐに顔を水面に移し、水中を何やら手で掻いています。


すると……次々に水面から魚が飛び出してくるではありませんか!


「みゃぁ~みゃぁ~みゃぁ~!」


ん?これは……私に魚を取れと言う事でしょうか?


小川から打ち上げられた魚を掴み、頭を持っていた木の棒で叩いて気絶させました。

次々に打ち上げられてくるので、叩くのが追いつきません。


「子猫ちゃん、もしかしてこれご飯なの?」


「みゃぁ~!」


どうやら、その通りみたいです。


すぐ近くの林から竹を数本引き抜いて、魚の口に突き刺します。


叩いては刺す、を繰り返し、数が10本位になった所で子猫ちゃんが小川から上がり、体をブルブル振って毛の水分を飛ばしてから、私の元へ戻ってきました。


「沢山とれたにゃ~」


「みゃぁ~!」


「でも、これどうやって焼くにゃ?」


そう私が言うと……子猫ちゃんは魚に手を翳し『ボッ』と言う音と共に、炎が魚から出ました。


何も燃やすものは無かったのに……。


次々に子猫ちゃんは焼いていき……10本全てを焼き終わると、


「みゃぁ~!」


鳴くや否や、口を魚に付けていました。


どうやら食べろと言ってくれている様です。


「ありがとうにゃ、頂くにゃ!」


私は、子猫ちゃんにお礼を言ってから、魚の皮を綺麗に剥がし、内臓も外して、


白い実の部分だけ口をつけました。


この辺の魚の内臓には、蟲が居て……食べるとお腹の中で蟲が暴れると教えられたので、内臓は食べません。


子猫ちゃんはそれを見て首を傾げています。


私は、蟲の事を教えて上げます。


「子猫ちゃん、この魚の内臓には蟲が居てにゃ、食べるとお腹の中で蟲が暴れて、お腹が痛くなるんだにゃ」


それでも首を斜めに傾げ、分らないと言っているようです。


私と会い前に、ここのお魚の内臓を食べて問題無かったからでしょうか?


せっかく子猫ちゃんが獲ってくれたのだから、食べたいのは山々ですが……。


「ごめんにゃ、お爺さんに内臓は食べちゃダメって言われたにゃ」


そう言って白身だけを食べ始めました。


「みゃぁ~」


子猫ちゃんも分ってくれた様です。


それでも、子猫ちゃんは内臓まで丸ごと食べていましたが――。


「お腹壊さないでにゃ。子猫ちゃんに倒れられたら……私、1人になっちゃうにゃ」

「みゃぁ~!」


何とも頼もしい小さな、小さなナイト様です。


私は、村の事だけで精一杯でお腹が空いている事も忘れていたのに……。


これでは、どちらがお姉さんだか分りませんね。


でも、ありがとう。子猫ちゃん。

お読み下さり有難う御座います。


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