三章 一 後始末
お疲れ様です、いつもありがとうございます、クロです。
三章行きます。
目が覚めるといつもの白い天井がなかった。
無骨な金属質の天井はやけに近くにある。微かな鉄分の香り。布団はふわふわで柔らかいのだけれど、軽い。家の慣れた布団とは違い、綺麗で柔軟剤の匂いがしてくたびれ感もないけれど、いかんせん肌に密着してこないから少し物悲しい。
ここは、ヒョウが寝泊まりしているというカルキアの第二勢力のメイド寮だ。眠りが浅かったからよく覚えている。私をみすみす家に返すのをヒョウの主人が渋ったのだった。エチゼンさんは危ないから。ヒゼンさんは、怪しいから。
ベッドサイドに置いた腕時計のボタンを長押しして画面を浮かび上がらせる。空間に薄っぺらく広がる長方形の不透明な画面に指を三本ほど束ねて滑らせ、メッセンジャーアプリを開く。起きたら連絡入れて、とヒョウに言われたので、適当に「起床〜」とでも入れておく。ヒョウはさして既読をつけることを渋るような人間ではないので特に訝しむことも無く画面ごとアプリを落として軽く伸びをする。そして声が出るほど強い硬い溜息。
ああ、おかしい。日が変わったのにどうして私はカルキアの敷地内に?つらい、意味がわからない。
ぐう、と腹が鳴く。どうやら食べ物が欲しいらしい。こいつときたらいつもそう。言ってる場合か、畜生。
ベッドから下りて布団を畳んで置いておくと、服を着替えた。船に乗るより前の、ドレスを着付けられるまで着ていた自分の服だ。一張羅というわけでもないが、うっすらと桜色のシャツワンピースは自前の気に入っている水色のカーディガンとの相性が良いので好んで着ていられる。ワンピースなので着るのも楽だ。
着替えが終わったところで腕時計を腕に巻く前に一度携帯機能を起動すると、ヒョウからメッセージの通知が一分前にあった。どうやらこの部屋に来るらしいから、カーテンだけ開けて部屋の外に出る。
一人で暮らすにはちょうど良い、バスルームとトイレが別個についた八畳ほどの部屋であった。私の家は賃貸なので、このくらいの、手を伸ばせばおおよそのものが手に入る空間につい憧れる。ヒョウは、好きな歌手のグッズやCDが収まらないからもう少し広い方がいいなど言うだろうか。
「みーつき!」
廊下の奥からヒョウが早足にやってきた。手短に挨拶を交わしそのまま廊下を進む。
「仕事中だった?」
「私なんかいてもいなくても変わんないって。ヒゼンさんがね、今回の企画の責任者一行にひたすら鬼のように電話してて」
「ああ、あの人……」
「やばいよ。山から鬼でもおりてきたかと思った」
「鬼、ね」
想像に易いといえば易いし、全く想像できないといえばできない。どこまでも理不尽で皮肉で無愛想な男なのはもちろん否めないのだが、目鼻立ちははっきりとして整っている方なので酷く歪んだその面まではなかなか思いつかないのである。本人が鬼だとか鬼が乗り移っただとかいうよりは、鬼を飼っていそうといったところが私の見解だった。
流石にここらを牛耳る名家貴族の広大な敷地はなかなか特殊な作りのようで、第一勢力家と第二勢力家が同一の敷地内に建造されている。なんだか、だだっ広い大学のような、ひとつの町として成り立っているような構造だった。共用資料庫があり、何をそんなに備蓄するのかかえってわからない程の大きさの倉庫があり、第一と第二で別々に従者用の寮がある。当の貴族達は寒さに強い木がそれなりに等間隔で植えられて剪定されているらしき並木道を通って互いの屋敷を行き来するようだ。別に私はここで暮らす気もないのだが、ヒョウが何でもかんでも語りながら歩くので私も何でもかんでも受容して後をつける。
石レンガ畳みの小綺麗な道が並木道に入ると次第に疎らになって赤レンガの様式になる。木には雪が積もっているが、レンガの上はヒーティングがかかっているようでどこもかしこも色がついている。歩くと軽快な音がして、つい浮き足立ってしまいそうな心地だ。
結構歩いて第一邸。屋敷は倍近く大きいがそれといって目立った違いはない。
「こっちを道なりに歩けば正門だよ。私は屋敷に戻るけど」
「あー」
少し悩んだ後、自分も屋敷に一度顔を出すことにした。本意でないとはいえ部屋を借りた礼くらいしていくのが礼儀だろう。貴族に嫌われた状態で帰るというリスクは冒したくない。それに、一応は怪しまれているために一晩泊まったのだから、勝手に帰られても困るだろうし。
「じゃあ一緒行こうか」
「うん」
屋敷にヒョウはズカズカと入り込む。私は少し恐縮だった。空間に小さくおじゃましますとお辞儀をするが、返事はない。ヒョウが靴を履きっぱなしでそのまま進んでいくので私もそうした。クヴァレのお屋敷のような玄関のない場所では、逐一靴を脱がないらしい。そりゃあそうか。
そのまま二つに割れた階段やいくつかの扉をスルーして左奥の廊下に入ると、他よりも大きめの扉があった。
「おっと」
「ぶえっ」
ヒョウが入っていったところで私も入ろうとしたのだが、ヒョウが扉を開けるだけ開けてすぐに後ずさった。だからぼうっと着いて行っただけの私はうっかりヒョウの背中に衝突してしまう。鼻も声も一瞬潰れたが私は無事である。
「あ、お疲れ様です」
「ん、ごめん。普通に前見てなかった」
「いえ、私は平気ですけど。あ、海月」
ヒョウが誰かに挨拶しつつ、こちらを思い出したように振り返った。前からも後ろからもぶつかられてこんなにライトに返事ができるものなのだろうか。
「私も大丈夫です」
と言いながら前を見ると、夜に出会った。黒い髪に童顔を際立たせる少し目の大きい男の人。ええと、こっちは確か、エチゼン。
「ごめんね、不注意だったもんだから」
「いえ。あの、お部屋、ありがとうございました」
「かえってどうも」
ご挨拶もそこそこに、エチゼンさんはヒョウにこれまでのちょっとした話をし始めた。やれ、兄さんは大層ご立腹で、云々。しばらくあんな調子だろう、とか。ただただ兄方の悪評だけが流れている。ヒョウはいつものお薬案件ですね、などとよくわからない同調の仕方をしているので私は黙って失笑してしまいそうなのをこらえていた。あの性格で常用するなら鎮静剤だろうか。
「まあほら、俺もいうて主催の家に確認とか取りに行くから。ヒョウ、ちょっと海月ちゃんとご飯でも食べてきなよ」
「有給ですか」
「食事代付き」
ここでヒョウが了承した。既に私の拒否権は吹き飛んでいる。この二人は基本的に二人だけで話を進めてしまう。いや、私は部外者だし、仕事の話も何も知らないから、入れられても困るんだけど。それにしてもだ。無論、今回は私が得をする感じになりそうなので甘んじるが、今後はないことを切に祈っている。決して、流されているのみではない。これはたまたま本意なのである。
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第一邸を出て再び二人きりになったところで、何を食べたいかと聞かれた。食事の話になると私とヒョウは腹を満たすという目的以外にはあまり頓着がない。私はあまり食事の味を気にしないし、ヒョウは育ちの関係でやはり味を気にしない。しばし悩んだ挙句に急遽呼んだのがベニという暴食家だ。私たちの中で身長体重ともに最下位であって、三人の中で最も食費のかかる女子高生である。花見かというような弁当箱を持ってきた挙句に購買でデザートのパンを買う女子高生である。
そんな彼女は私たちとは違ってかえって食にこだわりも強く、何よりも女子力が高いので女の子三人キャピキャピ入れるような店はご存知だろう。お誘い連絡を入れたらすぐに行き先まで決めてくれた。
「おまたせ」
「おつかれ、ごめんね急に」
「なんも。食べたいパンケーキがあって」
急に呼び出したにもかかわらず数分で誘いに応じたベニだが、髪色と揃えた桃色系統のメイクは今日もバッチリだ。自然な白い肌色とブラウンのアイラインに刺し色のシャドウが効いていて、桜の花弁のように柔らかである。私はメイクなんぞ試みたこともないし、ヒョウは化粧品に回せるまでの金はないとよく言うが、たぶん我々は色々な心がけを見習うべきだろう。
白いペンキを塗った木の家は、女子高生憩いのカフェだ。坂の上というアホみたいな立地にある私たちの学校の比較的近くにある、広くはないが外にも席があるカフェだ。貴族街からは少し距離があるので、まだ開店まもないこの時間には基本的に学生特区の近隣住民くらいしかいない。
ヒョウはハムとチーズの挟まった安価なホットサンドを頬張っている。私は普段は少し手を出さないフレンチトーストを頂き、ベニは正気を疑う分厚いパンケーキを三つ頼んで楽しみに待っている。相変わらずといえば相変わらずなのだが正気だろうか。尋ね問うとて「ヒョウの主人が落としてくれるから」と答えるが、私は別に財布の心配などしていない。飲み物といえばヒョウはブラックコーヒーを嗜んでいるが、これは意外だった。
「ヒョウってブラックコーヒー飲めるんだ」
「あ、いや。元は全然だめなんだけど、エチゼンさんが飲むから」
「飲み物まで主人に合わせとんの?」
「ううん、コーヒー入れてって言われた時にさ。一緒に入れられたら楽だなって」
物事のコストパフォーマンスにうるさいヒョウらしい回答である。安い、甘い、暖かいを備えたホットミルクを愛して飲んでいる私からしたら、どれだけ安くてもブラックは嗜めないが。
「ね、ちょっと聞いていいか悩んでやっぱり聞くな。昨日大変やったって?」
ベニが少し申し訳ないような顔をしつつド直球に昨日の船の話をふっかけた。
「あ!めっちゃ大変だった!聞く?」
ヒョウときたらこれだが、聞いていれば一応のリテラシーはあるらしい。
内心ではひょっとして内部事情をペラペラ話すのではないかと少しヒヤッとしたが、それは杞憂だった。どちらかというと、爆発で船が傾いて尻を痛めたとか、主人はいつも通りの不機嫌をこじらせて火の粉が飛んだとか、そういう軽めな愚痴ばかりである。敵と直接対峙した話やカルキア総出でボロ負けした話は出てこない。少し「あれ」と思うことには、おそらく私にも言ってないことがあっておかしくないな、と感じるほどに涼しい顔で秘匿を守っている。嘘や隠し事と無縁だと思っていたので、こんなにも核心に触れずにそれらしい事象を挙げ連ねるのがなんだか。いや、私が思っているよりもよほどに生きるのがうまいのだろう。
「海月ちゃんは昨日なにしとった?」
「あっえ、わたし?なんか、掃除とか?」
「なんで疑問形なん」
……かくいう私は自分で思っているほど嘘がつけないらしい。
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ひとしきりに話をした帰路、ベニはいつも通りのところで別れて、私たちはまた二人になった。
「海月、ちょっと申し訳ないんだけど……もっかいうち来ない?」
「は?なんで?」
今日で終わりと思った昨日だったので、今日これから戻る意味はわからない。月を見るに今日はこれから後半戦。
「なんか、これから会議するんだって。そんでヒゼンさんが呼べって」
「会議ぃ……?私なんて呼んでどうするの。第一それ貴族の仕事なの?」
いけない。ついヒョウ相手に言ってしまった。すぐに他意のないことを軽く謝罪する。
「上の身分の人に貴族ってカテゴリーしかないから貴族ってことになってるだけで、実質政治家みたいなもんだから。……って、ビゼンさんはよく言ってるよ。だから非常事態に躍起になるのはうちの貴族とその直属だけ」
アホくさいよね、わかる。そうヒョウは付け加えた。甘栗色の髪の毛が少し揺れていた。それを見て少し考えてしまう。
「ちょっとだけ。日帰りできるなら、行ってもいいよ」
「ありがと。ごめんね」
「謝ることじゃないよ」
誠心誠意にそう言った。日帰りだから行くだけ。ヒョウと仲良くしていたいからそうするだけ。決して私に自由意志がないとかそういう問題ではなく。
再び戻ったカルキア邸。ヒョウはイルとは違って、手際よく門前のセキュリティシステムで私の虹彩と臨時パスを登録してくれた。本来はこういう手順を踏んで部外者を入れるらしい。お陰様で今回は機械の警鐘に怒鳴られなかった。
そして正面ではなく裏口から第一邸に入り、キッチンを通って廊下に出る。ヒョウの先導するままに正面玄関近くの縦に長い螺旋階段を上がって、奥にある大きい扉の前に来た。
「よし、ここまでセーフ」
「何が?」
「会議がある時に正面から入るとね、たまに厄介なんだよ。カルキアもだけど、直属の貴族家にも結構変な人いるから」
驚いた。裏口から入ったのは正面玄関から死角になる場所から、変人がいないかクリアリングをするためだったらしい。下手なサバイバルゲームより恐怖かもしれない。それに、もし相手が男性であれば、ヒョウの体つき的には変に寄られてもおかしくない。返り討ちにはするだろうが。
ヒョウが会議室に入る。続いて私も、少しヒョウに隠れるようにして。会議室は思っているほど広くはなかった。黒い絨毯がひいてあり、白い机と椅子が向き合うように四角く並んでいる。ビゼンさんは一番奥の席でぶつぶつと何かを唱えており、その隣にはホワイトゴールドの髪をくるぶし近くまで三つ編みした初見のメイドさんが立っている。ビゼンさんの隣にはイルとフレッケが小さく群れるように喋っている。あの二人は既にあの二人だけの世界だ。
向かって右側は空席で、左側にはやたらに厚着をした銀色のメガネの男性が深く腰をかけて紙を読んでいる。巷でレジュメとかいうやつだろうか。その隣には冴えないメイドさんが仕えていて、思っていたより座席数が少なければ、思っていたより人もいない。ヒョウが隣で「またうちの兄弟待ち……」と呟いている気もするが、まあ何かとお忙しい兄弟なのだろうということにした。
私は右側の一番入口側の席に座らされた。そうするとビゼンさんに仕えていたらしき髪の長い女性がこちらに来た。
「差し支えなければお飲み物のご用意を致しましょうか」
「あ、えと」
「キャノンさん、こちら第二からご指名くらった海月さん。ホットミルクひとつ入れてあげてください」
もたもたとどこから返したものか悩んでいると、ヒョウが後ろからフォローしてくれた。キャノンと呼ばれた背の高いメイドさんはかしこまりましたと愛想良く礼をして部屋を出ていった。私たちが入ってきた側とは逆側の片開きの扉を使ったので、奥に給湯室でもあるのだろうとみた。
時に、ちらりと見えたが尻尾があった。ナイトシティでは悪魔と人間は同じヒト科として共生しているので、まあ珍しいことでもないが。私は始めてみたのでおおと思った。
「お疲れ」
今度は私たちの来た方の両開きのドアが開いて、ビゼンさんにそっくりなツリ目の男が入ってきた。ええと、紫じゃないから兄方だろう。名前ならば確かヒゼンだったはず。
「ああ、ヒゼン。……エチくんは?」
ビゼンさんがようやっと顔を上げ、いとこに挨拶をした。名前は当たっていたらしい。自身の記憶力は捨てたものじゃないな。
「は、エチ?まだ来てないの。俺が知るわけないでしょ」
「まあ、ウチの兄弟はいつもバラバラに来ますから。問題にする程じゃないですよ」
もはやねじ込む勢いのフォローがヒョウから飛んだ。あまり長く兄弟仲にまつわる話はしたくないらしい。ヒゼンさんは私を一瞥して、目が合うか合わないかもわからないうちにふいと目を逸らした。私と同じ列の、逆側の端に座っていた。両端と言っても、一列四席だから間はふたつしか空いていないけれど。
机には紙が数枚ほど入ったクリアファイルだけ雑に放り、一緒に持ってきたつい定規を当てたくなる分厚いリングファイルは三冊全てヒョウに預けていた。二人は受け渡しの際に何か耳打ちで話していたようだけれど、さすがに聞こえなかった。
「おまたせしました」
キャノンさんがトレーにマグカップを二つとバチバチのコーラ入りのカップを載せて現れた。私はホットミルクを受け取ると少し頭を下げてお礼した。そして炭酸が跳ね散らかる程のコーラはヒョウに渡されようとした。渡せなかったのは、分厚いリングファイルを三つも抱えているからである。「一緒に机の上置いといて貰えますか。エチゼンさんのも」「はい」というややこなれたやり取りが聞こえた。
カップを置くのとほぼ同じくらいに、そのエチゼンさんは入室した。
「ああ、よかった!来ないんじゃないかと」
「どうもさあせんした」
ビゼンさんの安堵をありえないぐらい素っ気なく突っ返したので私まで冷や汗が出かけたが、みんなの苦笑いを見るといつもこうなのかもしれない。「すみませんでした」が絶望的に原型を留めていなかったように聞こえたがどうだろうか。そんな彼をフレッケだけがギッと睨みつけているが、気には留めていなさそうだ。さては私が思っているよりは図太い。そんな男は兄の隣に座って少し兄と話していた。時々こちらを見るので、私の話だろうかとドキドキする。
「ええと、臨時会議を始めようか!海月ちゃんは、あまり気にせず聞き流してくれてもいいから……」
「はっ!?なんで海月ちゃん!?」
フレッケがせっかくの開始の合図をへし折ってひたすらに大きい声を出した。遅いと言えば遅いリアクションだ。
「俺が呼んだ」
ヒゼンさんが言う。
「は、だからなんで?」
「いや、普通に怪しいでしょ」
「それもなんで?何を根拠に」
「そもそも平民でしょ。なんで乗船してんのって話」
「それは第一が招待したからだよ」
「なら第一も怪しいね。因果は?どこの誰だよ。超怖」
何故か喧嘩に発展した。内容はそれらしいが会議は始まっていないので、例えるなら裁判長の前で正義をかけて殴りあっている感じだ。何より自分が渦中と思うと最悪すぎて言葉がない。
「フレッケちゃん落ち着いて。ええと、ヒゼン様。私なんぞが口を開くのも恐縮ですけれど、私が愚直でしたから悪いのです。それだけですから、海月ちゃんはここに来る何ものもないんです」
「それが証明されるまでは手放しで賛成できないって話。疑わしきは罰するべきことが起きてるよね。テロだよテロ」
「兄さん落ち着きなよ。これからだよ、そういう話」
エチゼンさんがだいぶ不安の残るストップをかけた。「あとヒョウはここ座れば」とおまけのように私の隣に座るように促す。ヒョウは存外呑気な返事をして遠慮もせずに腰掛けた。
「あんなこと言ってるけど、うちの兄弟は海月を責めるつもりないから気にしないで。なんか聞かれた時だけ答えればいいから」
ヒョウの無責任な元気付けに、気が少し緩んだ。フレッケは相も変わらずすごい目をして順々に全員を睨んでいる。随分と開幕から沸騰寸前の会議室で、件のヒゼンさんは特に何もなかったかのような顔をしてマグカップの中身をふうっと冷ましていた。
ご精読ありがとうございました。まだまだヒゼンはつっけんどんどこどんです。熱いと冷たいの対比と言えば聞こえは良いですが、ラストは実は単に「ねこじたひぜんさん」ってだけの文章です。
では、次回も何卒、お暇があればお立ち寄り下さい。