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《97》
アニーは振り落ちる光球のひとつひとつを最小限の動きで適切にかわしながら、パティの元へとまっすぐに駆けこむ。
そしてパティの腹を目がけて、優雅な動きでサーベルを突き出した!
「くっ!」
パティはまだ手に持ってた鎖でサーベルを弾き、同時に分銅をアニーの頭部へ投げつける。
アニーがそれをかわす間に距離をとって、再び呪文を唱えようとしたところで――
ばしゃあっ!
俺はふたりを狙って、躊躇なくバケツの水をぶっかけた。
パティもアニーも全身水びたしになって、きょとんとした顔で俺を見る。
ふたりが戦ってる間に、コボルドたちに頼んで近くの川からくんできてもらったのだ。
「おまえらその辺でやめとけ」
今戦う相手は帝国であって、仲間内で殺し合ってる場合じゃない。
それに俺は、ふたりのどっちにも死んでほしくなんてないのだ。たとえそれぞれの人格にえげつない欠陥があったとしても。
「あはは、勇者さんも無茶するなあ」
そう言うアニーの顔は、いつものへらへらした笑みに戻ってる。
とりあえず直前まで放ってた殺気は消えたみたいなので一安心だ。




