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ブラック企業が倒産して今日から勇者  作者: 汐留ライス
9th Account 会社は倒産する
175/191

《175》

「いやっほう! 勇者様がワタクシにキスしてくださいました! 明日もホームランです!」


「意味がわかんねえよ!」


 叫びながら振り向くと、興奮した様子のパティと目が合った。


 その途端、唇に彼女の感触と体温がよみがえる。


「アアアありがとうございます! もうワタクシ、未来永劫この顔を洗いません!」


「いや、それはやめてくれ」


 そんな不潔な魔法使いは嫌だ。


「でしたらこの頬肉を切り取って、ホルマリンに漬けて永久保存します!」


「グロいからやめろ! 頬肉ってマグロかおまえは!」


 いきなり普段のキャラに戻ったパティにツッコミを入れるけど、彼女の興奮は冷める様子がない。


「ワタクシはマグロじゃありませんよ! さっそくそこのベッドで証明して差し上げますから、陛下には申し訳ありませんが床で寝ていただきましょう」


 そう言って召喚の間に戻ろうとするパティを、俺は全力で引き留める。


「おまえ全然申し訳ないと思ってねえだろ? ていうかさっきまで、元の世界に帰らせてくれる流れだったじゃねえか!」


「キスまで行けたらゲームは延長ですよ!」


「だから意味わかんねえって言ってるだろうが!」


 俺がこの世界に来てから、自分の行動に一番後悔したのは今かもしれない。

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