17/191
《17》
理由があって払えないなら、せめて頭を下げるなりして待ってもらえばいいのにって思うけど、社長という名の独裁者にそんなことを言えるはずもない。
それに人に頭を下げるっていう、社会人として必須のスキルに難のある社長が、そこまでして支払い延期を懇願するとも思えない。
結局そのときもごまかしたんだけど、電話はその後も繰り返しあって、居留守を重ねるたびに向こうの機嫌が悪化してるのが分かる。最後の方は完全に怒ってた。
さらには他の取引先や外注の原画家、シナリオライターなどなどからも同じような電話が続々とかかってくる。
会社の支払いが、全体的に滞ってるらしいって気づいたのはこの頃だ。
そんなわけで毎日のようにあちこちから督促の電話がかかってくるし、先のスケジュールは決まらないし、廊下は暗いし水は少ない。
さらには声優のギャラを下げるためか、モブの声に専門学校の生徒を使うようになって、肝心のゲームまでどんどんクオリティが落ちてきた。
社内の空気もギスギスしてきて、それでも決まってる分のノルマはあるから動きを止めるワケにもいかない。
西口や森本と一緒になって日々の仕事をこなしながらも、「大丈夫なのかこの会社」みたいな空気は光化学スモッグみたいに蔓延してた。




