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《11》
俺の問いに彼女は一瞬きょとんとした表情を浮かべて、すぐにポンと手を打った。
「ああ、そういえば自己紹介がまだでしたね。ワタクシは王宮に勤める魔法使いで、パトリシア・ウェストと申します。親しみと愛情を込めて、パティと呼んでくださいまし」
なぜか愛情を強要された。
「王宮?」
さらに俺が尋ねると、パティは何が嬉しいのか満面の笑みで答える。
「はい。ここはフォルクス18世の居城、デゲベレレゲゲ城にございます儀式の間です」
「デ、デゲ……」
「デゲベレレゲゲ城」
常軌を逸したネーミングをどこのどいつがしたのか知らないけど、そいつはとにかく城の名前を呼ぶ人の舌を噛ませたくって仕方がなかったに違いない。
いったい何をどうすれば、居酒屋からどこぞの王宮へ泥酔した人間(つまり俺)を移動できるのかっていう密室トリック級に謎な問題もあるけど、まずは気になることその2について尋ねる。
「さっきからおまえ……、パティが言ってる勇者様とやらだけど、まるで俺に向かって言ってるように聞こえるんだが」




