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部屋を作ろう 1

「……さて、始めますか!」


こうしてユオンがやってきたのは、木をくり抜かれて作られた四方5メートルの立法形の部屋。

本当に扉以外何もないここを拠点に、今からユオンは7日以内にダンジョンを作らなければいけないのだ。


「えっと、確かこれで木がくり抜けるんだよね」


ガソゴソとユオンが袋から取り出したのは、ハンマーと斧が合体したような形の道具だった。

実はこれ、かなり特殊な魔法がかかっていて、軽く木を斧の面で刺せば、自動的に使用者のだいたい思う大きさで木をくり抜いてくれるのだ。一回できりだせる量に限界はあるが、それでも比較的楽にダンジョンを作ることができる。

ちなみに、ハンマーの部分で木を叩けば、丸みをつけたり平らにすることが可能なのである。


「よいしょっと」


試しに近くの壁に突き刺してみる。

するとどう言う原理か、綺麗に30センチ四方の木が切り出された。


「おぉー!」


ちなみに切り出した木もオブジェクトにできるし、交換すれば生活用品にもなる。

これも貴重な資源のうちの1つなのだ。


「他になんか作業効率を上げるものはないかなぁ……と」


何百ページもあり、分厚い辞書のようなマニュアルは探したい項目を見つけるだけで大変だ。

目次を頼りにダンジョン開拓のページを見ていると、いろんな情報が目に入ってくる。


「えっと、なになに?」


ユオンは適当に使えそうな部分だけ読んでゆく。

全部読んでいたら日が暮れてしまうから、丁寧に読むことはできない。


「『20グラヒノ以上を消費することで、自らダンジョンの守護者をリメイクすることができます……性別や種族など、好きなように作り出せます』……いいじゃんこれ! 要するに話し相手ができるし、ダンジョンもいっしょにつくれるんでしょ! やるやる、試してみる!」


思い立ったが吉日。早速ユオンは管理者権限を使って、守護者の作成を始めようとする。


「えっと、まずはこのダンジョンキーパーの証明証書を引き裂いて……っと、これで私がダンジョンキーパーになったんだね。つぎに……スキルの発動っと」


次の瞬間、不思議なことにユオンの視界が青白い文字で埋め尽くされた。

現在のダンジョンの開発状況、残り資金や細かい詳細まで、様々なデータが文字として現れたのだ。


「これが……管理者権限かぁ……」


どうやら配置する魔物やトラップもこれで変更できるらしい。ダンジョン運営に役立ちショップもここから覗くことができる。


「次に……ダンジョン防衛のメニューを選択……」


マニュアルを読みつつ、意識を[ダンジョン防衛]へと集中させる。すると今度はそこが拡大され、追記のデータが視界にまた広がる。


「あ、これか。ダンジョン防衛に使用する[ダンジョンウォーカー創作機能]を選択して……」


マニュアルに書かれたある通り、どうやらダンジョンの守護者をリメイクするには20グラヒノが必要らしい。また、追加でグラヒノをプラスすれば、スキルを得たりできるらしい。


「んー……25グラヒノくらい使っとく? かな」


創作に使うグラヒノを決定すると、所持グラヒノが25減ったのが表示された。

また情報が移り変わる。守護者である[ダンジョンウォーカー]のメイキング画面だ。


「うわ、細かいなこれ」


どうやら髪の長さや髪型から瞳の色、しまいには初期服装まで細かく作ることができるらしい。

パーツは何千を優に越している。真面目に作れば数時間はかかってしまうだろう。


「えっと、名前はランダム生成で……[アリス]か。最初だから女の子がいいかな。髪型はロングでおさげにして、髪色は初期のままの明るい茶色で……」


結局、出来たのは同じ種族である人間の少女だった。

名前はアリス。

身長150センチ弱と、自分より若干小さい程度で、髪は長い茶髪だ。

服装は青と白を基調にしたドレスのような格好である。ちなみに胸はそこそこ。


「うん。なるべく戦わせたくはないけど、防衛向きの構成にしようかな」


どうやら余分に付与した5グラヒノ分、スキルを振ることができるらしい。

スキルとは、簡単に言えば行う作業の補助をしてくれるものだ。

例えば農業を始めたばかりのものは、農作業を行うのにも時間がかかるし、あまりいい作物はできない。

しかし、しばらくすれば自然とスキル[農奴]を取得し、スキルのレベルが上がることにより少しずつ効率が上がったりいい作物が育つようになるのだ。


しかし、簡単には得られないスキルもある。

だからグラヒノを消費することで、対価としてスキルを得ることができるのだ。


「んー……防衛時にステータスが2割上昇する[守護者]を取得……あとは2グラヒノかかるけど[自然治癒]と[開拓者]も取っておけばいいかな」


これで全てのメイキング作業が完了した。

あとは終了を選択するだけだ。


「ん、さーて、アリスはどんな子なのかなー」


終了を選択した瞬間、ユオンの目の前に黄金の粒子が舞い始めた。それらは少しずつ人の形を取り始め、次第に大きくなっていった。

そして……


「マスター! アリス、ただいま完成しました! これからどうぞよろしくお願いしまーす!」


元気いっぱいなひとりの女の子が、ユオンへと抱きついてきた。

仕事開始初日。早速仲間を加えたダンジョン運営は、まだまだ始まったばかりだ。



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