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27話 頼れる仲間たち

 俺は、俺の能力について、ナギとヴァネッサに打ち明けた。


 今までわかっていることは――

 接触さえできれば、相手が誰であれ、ステータスも『好感度』も上げられるし下げられる。

 ただ、好感度は数値化できないので、どの程度増減したかわからない。

 ナギと初対面の際思いっきり好感度を上げました。ごめんなさい。

 その後、ナギから俺への好感度を下げてみたが、どうにも下限があるようで、俺への好感度も、お金への好感度も下がった様子がない。


 ステータスについては、個々人でどうにも『上限値』があるらしい。

 ナギで実験した結果しかないのでなんとも言えないが、おそらくもって生まれた天性みたいなものによって、限界があるのだろう。

 ちなみに俺自身のステータスを上げることはできないように、そこの赤いのから制限をかけられている。



「ええ!? ボク、ソーマにいじられすぎじゃない!? お金ちょうだい!」



 話を聞き終えたナギの感想がそれだった。

 予想できたこととはいえ、もっと他に言うことないのかなと俺の方が心配になる。



「いや……好感度を勝手に上げられるってさ、けっこうおぞましくない? そのあたり大丈夫なの? 今なら俺のことおぞましくて、好感度下げられるかもしれないけど、やる?」

「ううん! それはいいの! ボク、むしろますますソーマのこと好きになったよ!」

「なんで?」

「だって、ボクが最初に思ってたより、お金になりそうなんだもん!」



 黒い猫耳巨乳守銭奴は目を輝かせていた。

 反対の俺の目からは光が消えていった。



「ねえ、ソーマ、ボクに悪いと思うなら、やっぱりグランドドラゴンを捕獲しようよ。今の話だと、別に頭をなでなくてもいいんでしょ? 難易度激減じゃない!」

「うーん」



 たしかにそうなんだけれど……

 まあ、本当に言う通りで、罪の意識があるのならば、それはもう一も二もなくナギの言葉に従い、彼女にほんのちょっとでも誠意を示すべきだという話は、よくわかる。


 でも――

 俺は罪を償うより、自分の命が大事なんだよな……


 いくら『触れば好感度を上げられる』から『捕獲が楽になる』とはいえ、グランドドラゴンって街を踏みつぶすサイズ感の生き物なんだろ?

 それに接触するって、一歩間違ったら死ぬじゃん。

 死にたくねえなあ……



「まーた、クズなこと考えとるな……」



 長年連れ添った女房みたいなタイミングで、ホデミが俺の心を読んだようなことを言う。

 なんだろう、俺たちの抱える数々の問題は、俺とホデミ両方の、あるいはどちらかの性格がもう少しよければ、すべて簡単に片付いていた気がする。



「……とまあ、そういうわけで、俺がこんなこと打ち明けたのも、二人のステータスを上げてグランドドラゴンをどうにかしようっていう考えがあったからなんだけど……」



 おずおずと二人を――ナギとヴァネッサを見る。

 ナギの方はまあ、反対意見がなさそうだったのだけれど……



「私は賛成できないね」



 ヴァネッサは、かたい表情で言った。

 ない胸の下で腕を組み、つまらなさそうに口をひき結ぶその様子から、よほど彼女を不機嫌にさせてしまったのだろうということがわかる。


 まあ、好感度をいじれるヤツなんか見たら、そうなるか。

 こういうのもあってなるべく隠しておきたかったんだけれど……

 ホデミと俺だけで問題の解決が難しそうだし、この街でせっかく生活基盤を築いてるのに滅びられても困るし、ここで打ち明けないという選択肢はなかった。


 こっそりステータスだけ上げたらよかったのかもしれないが……

 俺にだってちょっとぐらいの良心はある。

 ステータスだけ上げて『大丈夫! いける! いける!』とか勢いで押し切って知り合いをグランドドラゴンの前に突き出すほど、人間として壊れてはいないつもりだ。



「ごめん、ヴァネッサ……でも、信じてもらえるかわからないけど、ヴァネッサの好感度もステータスも、全然いじってないんだよ」



 せいいっぱいの誠意を込めて言った。

 いじってないのは本当だ――ナギもだけれど、ヴァネッサも、下手に好感度を上げちゃまずい相手というオーラがすごいので、上げる気もない。



「違うのだソーマくん。私はそんなことを怒っているわけではない」

「じゃあ、なに? ……あ、他の相手から俺への好感度だって、ケンカの仲裁の時しか上げてないよ?」



 罪から逃れようと必死に言い訳を繰り返す男がいた。

 俺だった。


 客観的に見れば火に油をそそぎかねない、ヘイトのたまる俺の行動に――

 しかし、ヴァネッサは『そうではない』というように首を横に振る。



「ステータスとは、数多の苦労のすえにようやく上がるものだ」

「はあ」

「つまり、数値化された愛と言える」

「……」

「以前も言ったが、私はモンスターを倒す際には、対象を倒すために払った苦労の多さこそが、愛の多寡だと考えている。つまり、ステータスを上げてグランドドラゴンに挑むなど、愛が足りない。よって私は認められないのだ」

「……」

「むしろ、私のステータスを下げてくれないか? そうすれば、私は喜んでグランドドラゴンを止める盾の役割を担おう」

「ごめん、なに言ってんのお前? 正気?」



 偉そうなことを言える立場でも状況でもないが、つい、言ってしまった。

 冷静に判断して、ヴァネッサはだいぶ頭がおかしい。



「ソーマくんがステータスをいじれることは全然かまわないのだ。なにせ、今では剣を抜いたらひと太刀で倒せてしまうような数々のモンスター相手に、駆け出しだったころと同じような苦労を――愛を味わえるということだろう? 素晴らしいことではないか」

「ごめん、もう一度言わせて。なに言ってんのお前? 命は一つしかないんだよ? なんでそんな危険な行為をやろうとするの?」

「何度も言わせるな。愛ゆえだ」

「愛と命とどっちが大事なんだよ!」

「わかっているだろう? 愛だよ」



 うーん……

 どうしよう、性格のせいでいらない苦労が増える系の人がここにもいるぞ。



「だからどうか、私のステータスを下げてくれ。お願いだ」

「この局面でそれは承服できません」

「手を握ればいいのか? こうか?」

「勝手に俺の手をとるな! あと握った程度じゃ発動しねーよ!」

「下がれー下がれー……私のステータス、下がれー……」

「そっちで念じてもなんともな……」



 いや、なんともないかもしれないが、試したことはないな……

 まさか自分から『ステータス下がれ』とか言う逸材がいるとは、さすがに想定できなかったし。



「うーん……ギルドカードに見えるステータスは別に下がった様子もないな……ソーマくん、すまないが本気で下げてみてくれないか?」

「いやだから! 下げる気ないって! むしろあんまり握ってると上げるぞ!」

「おっと」



 ヴァネッサはパッと手を放した。

 まさか『ステータス上げるぞ!』というのが脅し文句になるとは……


 しかし――どうしよう。

 ナギは獲物(お金)を見るような目で、俺を見ているから、ステータス上げたらなにをされるかわからないし……

 ヴァネッサはむしろステータスを下げられることを望んでいるので、ステータス上げたらなにをされるかわからないし……

 ホデミと俺のあいだには信頼関係がないので、ステータスを上げる段階までいかないし……

 困り果てていると――



「なあ」



 背後から、声がとどいた。

 振り返り見れば――そこでは、ギルド中に集まった、この街の冒険者たちが、俺たちを取り囲むように見ていた。



「今の話、本当か?」



 いつかケンカを仲裁したイケメンエルフが、俺にたずねてくる。

 どうやら話を聞かれていたらしい――まあ別に声をひそめてもいないし、耳には普通にとどきますよね。

 俺は困り果てつつ、その血走った目に気圧されるように、うなずいた。



「なら、俺たちのステータスを上げてくれ」



 イケメンエルフはじめ、集った冒険者連中全員が、同意するようにうなずく。

 彼らは真剣な目で俺を見て――



「俺たちは、この街を救いたいんだ」



 ひそめるような声音で、言った。

 俺は、しばし目を閉じて考えてから――



「……それが一番よさそうだ」



 その瞬間、ギルド中から歓声が沸き起こる。

 ものすごい勝利ムードだったし――


 このあとあっさりドラゴン討伐した。

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