18話 冒険者ギルドにおいてじょうずにパーティーメンバーを集める方法
『低難易度クエストです!
冒険者(無職)一名
盗賊一名
前衛職を募集しております!
簡単な仕事で一緒に大もうけしましょう!
※十二~十八歳までの女性の方限定募集です』
「誰も応じてくれないんですが」
パーティー募集の貼り紙を出して三日経った。
誰一人メンバーが集まらない。
ギルド入口には木製のでっかいボードがあって、そこにナイフやら鋲やらで募集要項を書いた紙を貼り付けることになっている。
紙には要項の下に空欄があって、参加の意思がある者はその空欄にサインをしていく決まりらしい。
『なるべく目線と同じ高さに貼り付けた方が注目されやすい』とか――
『お昼少し過ぎ、夕食時少し過ぎあたりに貼り出した方が見られやすい』とか――
『有名冒険者が募集していたらそのタイミングは避けた方がいい』とか――
『十二歳のころから受付をしている』と豪語していたカレンちゃんのアドバイスに従い、最良のやり方で募集要項を貼り出したつもりだった。
でも、びっくりするほど誰も応じない。
俺よりあとに貼り出された募集は、もう名前が埋まってはがされたりしているのに……
なんで俺の書いたのだけ誰にも注目されないんだ……?
「……いや、怪しすぎじゃろ、この募集文」
クエストボード前でうちひしがれていると――
休みだが他に行くところもない、丈の短い着物姿のホデミが声をかけてきた。
ホデミは赤い長すぎる髪をくるくるいじりながら、
「なんじゃこの『簡単な仕事で一緒に大もうけ』とは」
「いやだって、実際難易度の高いクエストは受けないし……」
「まあ、それはわかる。わかるが、年齢性別制限が後ろにあると、いかがわしい仕事にしか見えんぞ」
「…………ホントだ!」
言われて気付いた!
いかがわしい店の従業員募集チラシみてぇになってる!
「しかも十二歳からとか……うわあ、貴様……うわあ……」
「それは俺じゃねーよ! ナギの注文! っていうか性別年齢は全部ナギの指定だから!」
「あとな、貴様、たぶんその貼り紙じゃが、位置が高いぞ」
「え? でもカレンちゃんには『目線の高さに貼り付けた方がいい』って……」
「貴様の目線に合わせてどうする。我とか、その高さは首が疲れるぞ」
「……なるほど」
そうだよな……
俺の身長はそう高い方ではないけれど、同年代の男の平均ぐらいだ。
そしてこの世界でも、男性と女性で比べれば、身長平均は男性の方が高い。
つまり俺の目線の高さは、女性にはちょっと高いのかもしれない。
ましてこの世界にはドワーフなどの小柄な種族もいるのだ。
なんてことだ……
読み手のことを考えていなかった……!
「悔しいけど……ホデミの言う通りだ。俺は自分が悪いとも気付かずに、『なんでこんなに注目されないんだ。まさかみんなして結託して俺を小馬鹿にしてるんじゃ……』とか疑い始めていた……!」
「たった数日で疑心暗鬼に陥りすぎじゃろ……」
「自分の書いたものだけ注目されないのに! 他の人が書いたものはどんどんメンバーが埋まってはがされていく! この焦燥感がわかるか!?」
「はあ、ようわからんが、まあどうでもいい。……ところで、貴様が求めるならば、我がもっと人を集めやすい貼り紙の書き方を伝受してやってもいいぞ?」
ホデミが腕を組んで顎を上げる。
なぜ実績もないのにあれだけのドヤ顔で人に指南できると思っているのかは謎だが……
たしかにホデミが俺の気付いていないことに気付いていたのは事実。
「お願いしますホデミ様。どうか愚かなこのわたくしに、なんかすごそうなのを伝受してください!」
「へりくだりすぎじゃろ……貴様、プライドとかないのか?」
「今ここで発揮するようなプライドはない」
「ふむ。その潔さに免じて、我が貴様に秘伝を教えてやろう。あといちおう言っておくが、交換条件として我のステータスを戻してもよいぞ?」
「それはちょっと」
「まあ、わかっておった。最近は我も焦っておらん。ここでの生活にもだんだん慣れてきたでな。最初はあれだけイヤだったウエイトレス業じゃが、今ではみんなに崇められ奉られるし、天職ではないかとさえ思っておるのじゃ」
ホデミはちょっと照れくさそうだった。
俺は微笑む。
「そうか。お前が幸せならよかったよ」
「そうじゃな……うむ……そうじゃな……おそらくそうじゃろう……」
「それで、募集文の書き方だけど……」
「おお、そうじゃった、そうじゃった」
ホデミは咳払いする。
そして、
「まず、どんなクエストを受けるか具体的に書け。ちょっと見ておったがな、貴様の募集文以外はみな『どんな難易度の、どういう目的のクエストを受けるか』が具体的じゃぞ」
「……たしかに」
「せっかくギルド側でクエスト種別とクエスト難易度をわかりやすくまとめておるんじゃから、横着せずに書け。なにがなんだかわからん『簡単な仕事』など怖くてやりとうないわ」
「……」
ものすごく普通にアドバイスされてしまった……
感銘は受けるし、感謝もするが、なぜか悔しいのはなんでだろう……
その後も細かい指導を受けて――
俺は募集文を書き直した。
「これで集まるかな」
「うむ。我の指導に間違いはない。12歳から18歳までの女子が入れ食い間違いなしじゃな」
ホデミはうなずく。
言葉だけ聞いていると怪しい業者以外の何者でもなかった。




