12話 初クエスト達成祝いからの
二人してゲッソリしながらギルドに戻ってきた。
ひどく気分が悪いが、胃袋が空っぽなので、かなり腹は減っている。
クエストには成功した。
しかも――『にじいろゲル』を三体、生きたまま捕獲することに成功したのである。
円運動してるところに手を突っこんだから三体も触れたようだった。
これは大変喜ばれた。
「すごいじゃないですか! 捕獲の用意もなくモンスターを生きたまま捕獲するなんて! どういう技術を使ったんですか!?」とカレンちゃんも仰天だ。
まあなんていうか……
にじいろゲルから俺への好感度を上げてしまったのだ。
そのせいで懐かれたっぽい。
にじいろゲルどもに巻きこまれ平衡感覚をぐちゃぐちゃにされキラキラしたものをはき出し気絶していた俺のそばに、ちょこんと三体だけ残っていたわけである。
これは情が湧いてマズイと思ったので、さっさとカレンちゃんにあずけて檻に入れてもらったが……
ともあれ俺のステータス操作は知的生命体以外にも効くようだった。
効くとは考えていたが、本当に効くことがわかった。
自分の能力を知ることができたのはいいことだ。
多めに成功報酬ももらったし。
だけれど――
「……我、二度とやらん」
ギルドに併設された酒場。
普段は俺たちの職場であるその端っこのテーブルで、俺の正面に座るホデミはボソッとつぶやいた。
同感だった。
冒険者の中には『クセになる』とか言ってわざとゲロロデオをしに行く者もいるようだけれど、俺はごめんだった。
「……まあ、イヤなことは忘れて、とりあえずなんか食おうぜ」
「そうじゃな。うむ。それがいい」
「報酬多めにもらったし、今日ぐらいは豪遊してもいいだろ!」
「そうじゃな! うむ! それがいい!」
俺たちはなにかを忘れたくて必死にテンションを上げた。
俺たちが忘れたいと思っている『なにか』が、俺たちの食欲を下げることを知っていたから。
そこからはまさしく豪遊だった。
果物のジュースを頼み、パンを頼み、サラダを頼み、おかわりまでした。
でっかいステーキも頼んだ。
俺の世界ではまずお目にかかれない大きさだ――二人掛けのテーブルには乗りきらず、そのへんの冒険者が座っている八人掛けのテーブルに乗せてもらった。
テーブルいっぱいに広がる鉄板。
そこに乗る数十キロはあろうかという肉の塊。
ジュウジュウと魔法により熱を発し続ける鉄板の上で肉が焼け、脂が弾ける。
ギルドの酒場はあっというまに食欲をそそる肉の香りで満たされていった。
剣みたいなナイフでコック長のおじさんが肉を切り分けてくれる。
分けてなお大きなその肉に、俺はすべてを忘れてかぶりついた。
たまらない弾力!
噛むたびあふれる肉汁!
思い切り噛みちぎれば口の中が焼けた肉の味でいっぱいになる。
頬をふくらまして、何度も何度も咀嚼し、ようやく飲み込む。
そして果物をすりつぶして水と混ぜて作ったジュースを飲む。
ああ――生きてる!
肉を食っている!
当たり前のことなのに、なんだか強くそう実感した。
食い切れる量ではなかったので、自然と周囲の冒険者にもおすそわけすることになる。
楽しい時間だった。
贅沢をしている――そんな満足感がある。
時間が経ち――
あれだけあった肉がすっかり消え去り、他の料理もあらかた平らげ――
さすがに俺もホデミも腹がパンパンでもうなにも入らないので支払いをしようとしたら――
――財布がなくなっていることに気付いた。
「……嘘だろ?」
いやほんとに(自問自答)。




