再起
バチッ
手に謎の抵抗感を感じる
目を開けると路地裏に1人倒れている
なにがあったかはすぐに思い出せた
腹を貫かれた
これで腹を貫かれたのは2回目だ
人生でそう体験できるものではないだろう
というかもう体験したくない
腹を確認する
あの肉厚の両手剣は腹の真ん中を貫いた
跡が痛々しく残っている
「意味わかんねぇ…」
自分を意識する、表示が出てくる
個体情報
名前 ショウマ・シンドウ
種族 …
HP31/31
年齢 18
lev1
状態異常
混乱Ⅰ
記憶操作Ⅲ
貧血Ⅲ
血が減っている
状況を理解したくない
信じたくない
しかし確信に変わっていた
生き返っている
俺は今死んだ
そして再び蘇った
これはそういう事なのだろう
くよくよ悩んでいても仕方がない
そういうことにしておこう
半分ゲームみたいなこの世界にはそんな事もあり得るのだろう
しかしあの男たちはなんだったのか
考えられるとすれば俺の服装が珍しかったため、金持ちだと誤解していたとか?
持ち物を確認するが元からなにも持っていなかった
もうHPの心配はいらないだろう
死んでも生き返るのだし
頭が痛む
頭に靄がかかっている
うまく働かない
「クソッ」
悪態をつく
貧血だ
さっきから無性に喉が渇いている
はやくこの状況をどうにかしなくては
levという値を見る
1か…
これはいけない
さっきのような奴らに襲われないためにも
自衛は最低限出来る様に強くならなくては
強くなる
レベルをあげるのだ
しかし武器も何もない
さっきの男たちを見る限り武器や防具はあるらしい
武器防具があるのならそれでなにかと戦う訳だ
こんなゲームみたいな世界だ、モンスターの1匹や2匹はいるのだろう
強くなりつつお金を貯める
当面の目標ができた
◇◇◇
歩く人たちを観察し、人の良さそうな猫人族の男性に声をかける
肝は据わっている方だ
初対面の人とも比較的気軽に話せるのがショウマの数少ない良い点だった
言葉が通じない事を予想し、ジェスチャーの準備も万端だ
しかし、仮にも悲鳴をあげられたり、襲ってくるようならば逃げなければならない
逃走経路を確保しておく
抜け目ない
血を見せないように半身になりつつ、左手でパーカーの血の跡を隠す
そうしてやっと話しかけた
「あの…スイマセン」
藁にもすがる思いだ
通じなかったらどうしよう
男が口を開く
一瞬の出来事が永遠の様に長い
男性は声を出す
「ん…?どうしたんだい?」
ーーっ!!
通じた!
よっしゃあ!
思わず心の中でガッツポーズをしつつ、顔には出さない
ポーカーフェイスも得意であった
用意していた言葉を出す
「強くなりつつ、お金を貯めたいんですけど…」
こんなこと、嘘を言っても仕方ない
無知を笑われるかもしれないが、変な目で見られても田舎出身とでも言っておけばいいだろう
「なら探索者ギルドに行ってみれば?この時間、僕は忙しいから力になってあげられないけど、あそこなら面倒みてくれるんじゃないかな?」
「探索者ギルド…」
何やら聞いたことのある言葉に体が高揚する
男が再び口に出す
「この通りまっすぐいったら見えるよ、とても大きい建物だからすぐにわかるさ」
ご丁寧に道を教えてくれた
頭は名一杯下げ礼を言う
血の跡を見せないように俺は探索者ギルドに向かった
◇◇◇
一見すると大きな酒場のような建物だ
中に入ると剣を下げている者達がチラホラと目に入る
とりあえず優しそうなお姉さんの受付に並ぶ
自分の番が回ってくる
「今日はどういったご用件でしょう?」
お姉さんが要件を伺う
「強くなりつつお金を貯めたいんですけど…」
心細そうな顔と声で問いかける
ついでに遠くから来てここの事がよくわからないという事を伝える
お姉さんは困った表情を浮かべたがすぐに営業スマイルになる
よくできた接客だなあ
なんて思っているとお姉さんが提案してくる
「でしたらこの迷宮都市はうってつけですよ!個別でレクチャーしましょう、力になれます!」
笑顔で答える
その後木製の板で区切られた、個人相談用のテーブルに案内される
ここでしばらくまっててくださいねー
と言い残してお姉さんはどこかへ走っていった
内心の不安など微塵も顔には出さずに堂々としていた
本当は不安に押しつぶされそうなのに強がっていた
くよくよしてても仕方ない
そうして待っていると1人の女性が入ってくる
とても美人な人だ
流れるように長い髪は翠色
垂れた目は大きく、可愛らしいというよりは美しいという方がしっくりくる
眼鏡を鼻にちょこんと乗せている
見すぎて表示がでる
個体情報
名前 リューラ・シセル
HP98/98
MP58/58
Level13
性別 女
職業 探索者ギルド案内係
リューラさんと言うらしい
レベルが高く、MPも高い
思わず見惚れてしまったがすぐにポーカーフェイスを作る
リューらさんが挨拶をしてくる
「こんにちは、新入りさんッ」
その笑顔はまるで、太陽だったーー
いよいよ、女性登場
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