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異世界迷宮で、血を統べる  作者: 吸血者
3/18

転生、異世界

暗黒の中に降り立つ。

フワッとした浮遊感が訪れるとともに気がつくと地に足がついていた。

なにもない。

誰もいない。

朦朧とした意識の中、そんなことを思った。

それは夢のようなものであった。

そんなことを意識することもなく、必死に何かを探す。

絶対に見つけなければならないもの、逢わなければいけないものを。

声が聞こえる。


「お主は面白い」


女の声だ。

幼さを感じるその声は、不快なものなどこれっぽっちもなく、むしろ、とても心地よい声であった。


「誰?」


声に問う


「そんな些末な事は気にせんで良い。

妾はお主を気に入った、再び生を与えよう」


それはまるで、神の気まぐれの様なものだった。

急速に意識が遠のいていく中、少年は再度問いかけた。


貴方のなまえは…?


「妾の名前は…」


意識が途切れた。


◇◇◇


バチッ


右手に抵抗感を感じる。

訝しみつつも目を開ける。

辺りは真っ暗だった。


「どこだ…?」


声が出る。

何も思い出せない。

なんだこれは、状況が理解できない。

ここはどこだ、俺はなにをしていたんだ。

何故こんなところにいるのか、全く意味がわからない。

灯りは何もなく、どうやら地下のような所にいるらしい。

酷い汚臭と真っ暗な視界。

まるで闇に取り残されたかの様な感覚。


通路の壁を背に、眠っていたようだ。

なんなんだ一体、何かの夢か?

呼吸が荒くなる。口が渇き喉が鳴る。

不安、緊張、絶望。

あらゆる負の感情が噴き出す。


お、落ち着け俺、まずは深呼吸をするんだ。

暴れる心臓を抑えつける。

1つずつ問題を解決していこう、まず名前だ。

俺の名前はなんだ?

思い出せない。

焦りを感じる前に頭の中に文字が浮かぶ


名前<ショウマ・シンドウ>


名前が浮かぶ。


なんだこれ、余計に訳がわからねぇ。

なんで頭に文字が浮かぶんだ?


状況は全く理解できないがそれが異常であることは理解できた。

こんなことはこれまで生きてきて一度もなかった。

そう、1度も無かったのだ。

これは異常だ、なにも思い出せなくとも察することは出来た。


も、文字が浮かんだッ!?

こんなことありえない!

そう、確かに前は無かった。

"それ"が起こる前までは…


違和感がのしかかる

文字が浮かぶことはあり得ないのだ、何かが起きる前では…

そう、何かが起こったのだ。

何かが起こり、今この状況にいる。

その"何か"は思い出せない。

思い出そうとすると頭が痛くなる


「うっ…」


思わず呻き声がでる。

ここに来る前に何かが起きた、そして今自分はここにいる。

状況を把握した、喜んでなんていられない

なにも解決はしていないのだから…


俺の名前は…そう、ショウマだ。

名前は思い出したがそれ以外はだめだった。

自分に意識を向ける。

どうやら怪我はないらしく、痛みは感じない。

自分に意識を向けた途端、また言葉が頭に浮かんできた


個体情報


名前ショウマ・シンドウ

HP34/34

年齢 18

lev 1

状態異常

混乱Ⅱ

記憶操作Ⅲ


なんだこれは?

まるでゲームみたいだ。

大好きなRPGに出てきそうなその表示を見てふと声が出る。


「ゲーム…?」


激しい頭痛と共に、元の世界の事を思い出す。


そうかッ!?

俺はあのとき学校に向かっていたんだ

あのクソ暑い日、横断歩道を渡ろうとして…

そして…死んだんだ……。


……死


「ーーッ!!」


体が思い出したように呼吸を再開する


「ハァハァ…」


あまりの出来事にどうやら息を止めていたらしい

肺にたっぷりと息を吸い込み、思案に耽る


俺はあの時死んだのか?

なんなんだこれは?

タチの悪い冗談か?

夢なら早く醒めてくれ

マジで洒落にならない


「キシャァァァァアアアッッ!!」


突然何かの声が聞こえる


「っ!?」


息を潜める

なんだ今のは

声…?

誰の?

いや、何の?

明らかに人ではない声が通路に木霊する

本能的な恐怖が全身を覆う

まるで心臓を直接鷲掴みにされた感覚

鳥肌が全身に立つ

頭の中で警鐘が響く

はやく逃げろ、ここにいたら危険だと大音量で喚いている。


「や、ヤベェ…」


声とは反対方向に逃げ出す

全力を振り絞り走りまくる


「ハァハァ…なんだってんだよクソッ!!

いみわかんねぇよなんなんだよこれっ!?」


思わず声に出す

あるいは声に出すことで少しでも自分を落ち付けようとしていたのかもしれない

なにかが後ろから追ってきている

そのことを背中で感じながら暗い通路を全力で走る、当然視界は悪く小石につまづき盛大に転ぶ


「っ!」


結果的にはそれが命を繋いだ

頭から思い切り地面にぶつかる

一瞬前に頭のあった位置を何かが横切る


それが鎌のようなものだときづいたときには"そいつ"が前方2メートルくらいの位置に居たからだ


虫の様な体、その体は鎧のような光沢を放っている。 頭はカブトムシの様に立派な角があり、二本の手にはカマキリの様な鎌があった

色は全体的に青銅の様な色をしている


意識を集中すると表示が出現した


個体情報<ブロズ・サイス>

lev1


どうやらこの魔物としか形容できない異形の生物はブロズ・サイスと言うらしい


「キシャァァァアアア!!」


その声は先ほどの声の主であり、獲物を前にした猛獣の様に声を上げた


「な、なんだよこれ…」


思わず声が出る

これでlev1かよこんなの勝てる訳ねぇだろ

どこか現実逃避気味にそんなことを考える

持ち物に武器はない

逃げようにも足が震えて立つことすら困難そうだ


ブロズサイスがにじり寄ってくる

地面に這いつくばってそれでも後退しようとする

死の恐怖に直面し頭はうごかない

ブロズサイスが左の鎌を振りかぶった


シュッ


空気を裂く音が聞こえる


「うわっ」


横に跳びのき間一髪鎌を逃れる

ブロズサイスが怒ったように身を震わせ右の鎌で突きを放ってくる

その突きは神速の速さだった

ただの学生である自分に見えるはずがなかった


ズブッ


右の横腹に鎌が突き刺さり背中まで貫通する


「ゴフッ」


口から大量の血がでる

初めてこんな量の自分の血をみたが紅いというより黒い、まるで"死の象徴"のような色をしていた

HPが急速に減っていく

31 24 19

まだ減る

10 5 …


意識が遠のく

世界が闇に染まった










読んでくださり恐悦至極!

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