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異世界迷宮で、血を統べる  作者: 吸血者
17/18

邂逅


純白の少女がいた

どうやら気絶しているようだ


ーーザァァア


雨が降っている

まるでこの世界に2人しかいない

そんな気分になった


「ん、んん…」


少女が起きる


チャリ…

鎖が音を鳴らす


頭にハテナを浮かべながら周りを見回している

そして俺のことを見上げる


「あなたは…?」


まるで状況を理解していなかった


「ただの…探索者だ…」


嘘をついた。正確には嘘ではないがショウマはそれを嘘だと自覚していた

何故か言い出せなかった


「探索者…」


言葉の意味を確かめるように少女が一言一言噛みしめつつ繰り返す


少女は髪の色が白色だった。その短い髪型はショートとでも言えばいいのだろうか

表示を見る


セリア・マシュティナ

年齢15

職業奴隷

Level3

HP62/62

MP73/73


筋力1.9 敏捷3.2 知力4.5 魔法力7.3


少女はセリアという名らしい

魔法力が高い、言っていた通り魔法型のステータスらしい

ステータスて名前が分かると言うと面倒臭いことになりそうなので名を尋ねる


「おまえ…名は?…」


「私は…。セリア、セリア・マシュティナ」


「セリアか…」


会話が途切れる

ショウマにとってはどうでもよかった

今己に襲いかかる虚無感の方がよっぽど重大であった

虚しい…

とにかく今は1人になりたい

1人になって大声で泣き叫びたい

でないと心が壊れてしまいそうだ

そんな気分だった。だから少女に対して興味はあまり湧いて出てこなかった

一刻も早く1人になりたい

そう思っているとセリアが話しかけてくる


「あの…ご主人様(エスカー)は?」


皮肉に口元が歪む

あれがご主人様とは可哀想なものだ

俺だったら願い下げだ

もう死んでいるが…


「エスカーなら死んだよ…。いや、殺したよ」


なんの感情も映らない言葉でそう伝える


「し、死んだのですか…?では私は一体、誰の所有物になるのでしょう…?」


「そんな事を俺が知るか」


「で、ですが…」


なおも引き下がろうとしないセリアを見て面倒臭くなる


「お前はあいつの所有物なのか…?」


「はい、お金で買い取って頂きました」


「奴隷ってのは金で動く物なのか?」


「はい、基本的にはそうです」


「奴隷ってのは解放出来るのか…?」


セリアを見ていてある事を思いつく


「そ、そうですね…。基本的にお金でやり取りされるので買い取った新しいご主人様が解放を宣言すれば、その身は自由になるのではないのでしょうか?」


疑問形だったのは誰も奴隷を多額のお金を使ってまで解放しようと思わないからだろうか

はたまた自分が解放される事などないとおもっているからだろうか…

恐らく両方なんだろうなと推測する


エスカーから金の入った袋を奪い取る

それをセリアに投げつける


「っ!?な、何をするのですか?」


驚いているセリアに剣を構える


「な、何をッ」


台詞を言い切る前に剣を振り抜きその身を縛る枷をぶった斬る


「な、何を…」


今度は困惑の意味を込めて同じ事を言ってくる


「お前の所有権が誰にあるのかはわからないがエスカーは俺が殺した。その金はお前を売った時の金だろう。それをお前に返せばお前は解放されるんじゃないのか?」


「そ、そういうことになるのでしょうか…」


セリアの表示を見る

職業の欄が空白に変わる

どうやらこの少女は解放されたらしい


「お前は今から自由だ。その金で好きに行きていけばいいさ」


袋の中にはたくさんの金貨が入っている

これだけあれば一生暮らしていくには十分だろう

その場を後にしようとする

早く1人になりたい

こんなクソみたいな気分は初めてだ

鬱憤を晴らさないとやっていけない


3歩歩いたところで服を掴まれる


「ま、まってくださいッ!状況が全く理解できませんッ!!あなたは一体誰なのですかッ!?なんでこんな事になったのですか?教えてください!納得できませんッ!」


感情が爆発する


ああきっとこの娘は不安なのだろう

いきなり自由と言われ、1人で生きていけと言われて不安で押しつぶされそうなんだ

誰かに縋って行きてきたこの娘は急に1人と言われて心細いんだろう


他人事の様にそんなことを思った


「わからないか?エスカーは死んだ。君は自由だ。これから好きなものを食べて、好きな所に住んで、好きに暮らしていくといい」


しかし他人であるセリアのことを構っていられる精神状態ではなかった

自分の事で精一杯なのだ

今にも膝が崩れ落ち、涙が涙腺を飛び越えそうなのにこんな娘に構っていられるわけがない

はやく1人になりたい

心を渦巻く虚無感を少しでも取り払いたかった


「きゅ、急にそんなことを言われても…」


「最初は誰だって不安さ、お前は自由を手に入れたんだ。よかったな」


事実、他人事だった


「そんなの!貴方が私を自由にしたんじゃないですかッ!?」


「だったらなんーー」


「責任を取ってくださいッ」


責任を取れと抜かす

そんな言葉をリアルで聞いたのは初めてだった

ゲームの中の言葉ではなかったか

まぁこの世界自体ゲームみたいな世界ではあるが

傍観して見ていた状況に、現実を逃避した思考をしていた


「お、お前な…」


呆れて言葉がでない


「とりあえず、詳しく状況を説明してくれるまで、貴方の側を離れる訳には行きません」


決意を固めた表情でそんな事を言う


「それに、貴方が勝手に招いた事ですし。私が悩むのは意味がわからなーー」


そこまでで限界だった

心に渦巻く感情を堰き止めていたダムが崩れた

全身を虚無感、虚脱感、虚しさ

色々な感情が入り乱れる


膝を折る


念願の復讐を果たした

なのになんなのだこの感情は


ああ、なんでこんなにも空しいのだろう


「うぅ…」


涙が零れ落ちる


「んなっ!?なんで…」


セリアも困惑している

俺が聞きたい

自分でも制御できない負の感情が嵐となって心を引き裂いている

自然とセリアを見つめる

目が合う


「ーーっ!?。あ、あの…」

何かを声に出そうとしていた


しかしショウマは動き出していた

理性とは裏腹に体が求めていた

今はとにかくなんでもいいから縋り付きたい思いだった

セリアの背中に腕を回し、抱き寄せる


「な、なにをッ!!?」


耳まで真っ赤にしているセリアが上ずった声を出す


「うわぁぁああああ!!」


限界を超え、泣き出す

精神が崩れて何処かに行ってしまいそうだった

今はこうして、幼稚な方法でも発散させないと精神がもたない、と体が訴えていた


「は、はぁッ!?」


セリアが泣きたいのはこちらだと言わんばかりの声を上げる


泣き続ける

セリアを救った自分を少し、理解できた気がした

セリアは俺と似ているのだ

独りで、縋る相手も居ない

ある日突然解放され、理不尽な世界に恐怖する

決定的に似ていた

知らぬうちに親近感を沸かせていた


セリアの胸で泣き続ける

なんとか目前の状況だけは理解したセリアが優しくショウマの頭を撫でる

撫でる、撫でるーー


そのままセリアは幼子をあやすように、ショウマの頭を撫で続けたーー。




ブックマーク引き続きありがとうございます


ヒロイン登場

私の妄想から成り立っております

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