I and the flower ~僕と花~
ある春の事。
「僕」は公園で「花ちゃん」に出会いました。
僕は花ちゃんとお話するのがとてもとても大好きでした。
雨の日だろうが、風が強かろうが僕は花ちゃんに会いに行きました。
ある日、もっと一緒にいたいと思った僕は鉢に花ちゃんを移しました。
これでいつも、一緒にいられる。
花ちゃんも喜びました。
「貴方と一緒にいられて幸せ」と笑ってくれました。
僕も花ちゃんと一緒にいられて、幸せでした。
僕は夢が出来ました。
「僕、お花になりたいな」
「どうして?」
「僕ね、君と結婚したいの」
花ちゃんは嬉しそうに笑ってくれました。
「私も貴方が大好きよ」
この上なく、幸福でした。
「花が好きだなんて、頭がおかしいんじゃないの?」
「気持ち悪いわよ」
「さっさと元に戻してきなさい」
誰に何と言われようが、僕は花ちゃんを手放しませんでした。
涙を流す僕の傍に花ちゃんはずっといてくれました。
「誰が何と言おうと、私は貴方の傍にずっといるからね」
僕は、もっと泣きました。
二人で過ごして数年。
ある日、花ちゃんの身体に異変が起きました。
葉っぱが、花びらが、腐っていくのです。
お医者さんは相手をしてくれません。
手遅れだと僕に言いました。
「嫌だ、花ちゃん、いなくなっちゃやだ」
僕が駄々こねると、花ちゃんは言いました。
「大丈夫だよ。私は貴方の傍にずっといるから。だから、笑って?泣いた貴方を見ていると、私ね、とても悲しくなっちゃうの」
お願い、と花ちゃんに言われ、僕はごしごしと涙を拭いました。
それからずっと、一緒にお散歩したり、本を読んだり、二人で好きだったことを、大好きだったことを沢山しました。
花ちゃんの綺麗な葉は、腐ってボロボロと落ちました。
「醜いよね、私」
僕はそれでも、花ちゃんに「可愛い」「綺麗だよ」「大好き」と言い続けました。
その度、花ちゃんは泣きそうになりながらも僕に「ありがとう」と言いました。
ある夜のこと。いつものように本を読み終え、電気を消して寝ようとしたときの事です。
花ちゃんが僕に「ねぇ」と語りかけてきました。
「どうしたの?」と聞くと花ちゃんは「お話しましょう?」と言った。
「私ね、生まれ変わったらヒトになりたいな」
「どうして?」
「そしたら貴方を困らせなくて済んだから」
花ちゃんの声が震えていた。
僕は「違う」と言った。
「僕は、花ちゃんだったから、大好きになったのが君だったから、一緒にいたかったから。何1つ、君といて嫌だったことなんてない」
罵声を浴びた事が幾度もありました。
それでも、僕は理解されなくたっていい、って思っていました。
「だって、僕は誰に何と言われようが、花ちゃんと一緒に居たかったから」
僕がそう言うと、花ちゃんは涙を流しました。
「ありがとう、ありがとう…。…さぁ、もう寝る時間よ。ね?寝ましょう」
「ねぇ、花ちゃん」
「なぁに?」
「大好きだよ。また、明日ね」
花ちゃんは笑って「また、明日」と言いました。
花ちゃんの子守唄を聞きながら、僕は眠りにつきました。
「大好きだよ」
意識が途切れていく中、花ちゃんの声が、遠くなっていきました。
目を覚ました時、僕は花ちゃんに声をかけました。
「…花ちゃん?」
返事がありません。
「花ちゃん?お薬…」
薬を渡してみるものの、反応がありません。
「…嘘だ」
僕は悟りました。
「嘘だ…!!」
僕は声を出して、泣きました。
僕の大好きだった花ちゃんは、もういない。
もう、いないんだ…。
花ちゃんがいなくなって、もう数十年。
僕の寿命も残りわずか。自分でもわかる。
花ちゃんの入っていた鉢を抱きしめました。
ああ、花ちゃん。あと少しで貴方に会えます。会いに行きます。
貴方は生まれ変わったらヒトになりたいと言っていましたね。
僕は、生まれ変わるならハナになりたいと思っていました。
でもね、きっと貴方がヒトに、ハナに生まれ変わったとしても、僕はまた貴方を見つけたいと思います。
「また、会おうね」
遠のいていく意識の中「また、会えますよ」と花ちゃんの声が聞こえた気がした。
次、生まれ変わってまた貴方に会えたら。
僕はそれだけでも、幸せ者でしょう。
誰に何と言われようが、僕は貴方と一緒にいられて幸せでした。
また、会える日まで。
「「おやすみなさい」」
~END~
前から書いてみたかった物語を書く事が出来ました。この話は1年前くらいからずっと脳内で繰り広げていたお話です。形にする事が出来て、本当に良かったと思います。この話の別バージョンとして、子供向けの絵本を以前描きました。そちらの方は、今作とは違ってハッピーエンドを迎えます。理由は「子供向け」だったというのもあるんですけどね…。しかし、この物語に出てくる「僕」も「花ちゃん」も、絵本バージョンの物と一緒で「幸せ」だった事に変わりはありません。他人に何と言われようが、二人は幸せだった。と言うお話を書きたかったので、私は満足です。
あとがきは以上になります。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。




