経緯
談話室を出て手際よく用事を済ますと、陽佳と志智は部屋に向かった。志智は談話室を出る頃には目を覚ましていたため背負わずにすんだ。
「志智、手を洗って。お昼ごはん食べよ」
志智を洗面所に送り出し、来る途中にコンビニで買ったサンドイッチとお茶を支度する。
今日はもう疲れたからこれでいいよね、と決めていたのだ。
寮の部屋に来たのは10日ぶりくらいだったこともあり、直ぐに窓を開け換気をした。
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リスのように口にサンドイッチを詰め込む志智を眺めながら考えていたのは、ここに来る前のことだった。
家から出てきたのはいいものの、心配なのはやはりお金のことだった。陽佳はまだ高校生にもなっていないし、志智に関しては小学校に入ったばかりだったからだ。
そんなときある人に出逢い、機会を得、ここにいる。
国立であるこの学園には幾つかの科があるが、陽佳が通うことになった科は国がお金を出してくれるというのだ。勿論成績が悪いと卒業時にいくらかの返金が必要となるらしいが、それでも普通に学校に通うよりもうんと安い。しかも成績が良ければ返金不要で、さらには進学就職も比較的しやすいという。
怪しいが陽佳にはこれを聞いて否と言えるほどの経済的余裕などなかった。
陽佳が入った科は、所謂学園の表には出てこない秘密だらけの科。いくら頭が良くても入れない。
魔法使いになる為の科。