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期限10日の彼女  作者: イヤホン
6/8

少女の決心

 学校を抜け出して診療所へ向かう途中に考える。残り少ない寿命を減らしていく彼女を見て俺は笑っていられるだろうか。彼女にこの事を書く白押すことができるだろうか・・できないだろうなぁ・・俺すぐ顔に出ちゃうし。でもやるしかない。せめて笑顔で見送ってあげよう。

 診療所に着くと、勢い良く診療所の扉を開いた。

 大きい音に驚いたのか、中で診察を待っていたお客さんがビクッと顔をこちらに向けたが軽く頭を下げて謝ってから彼女の部屋に向かう。軽く急いでいるような感覚なために階段をあがる音がやや大きい。が、それも気にしない。

 部屋の前に立ち、深呼吸してからドアを開けた。

「蒼井!」

「健二・・?あなた学校はどうしたのよ」

 蒼井はいつもの様にベッドに腰掛けてこちらを見る。急に来ないはずの健二がきたのだ。驚くのも無理は無い。

「しばらく休暇だってさ、なんか学校を改装するから一週間くらい全校生徒は家にいろーだって」

「急ね」

「だ、だな」

「まぁ、いいわ。座って」

 そういうと丸椅子へと健二を誘導した。

 ギギィといつものようにやや不快な音を出して床をこする。

「ちょうどよかったわ、すごく暇だったから」

「そうか・・蒼井、行きたいところはあるか?」

「なによ急に?この前海にも行ったじゃない。もう特に行きたいところは――」

 視線をやや上に上げ、考える素振りを見せた蒼井は何かを思い出したように目を大きく広げた。

「健二の家」

「へ?」

 意外というか、予想もしていなかった場所に俺は抜けた声を出してしまった。

「健二の家、行きたい」

「えぇー・・と、別にいいんだけど特になにもないぞ?」

「いい、行きたい」

「いやー・・」

「行きたい」

「今散らかって・・」

「行く」

 そんな感じで、蒼井が家に来ることになった。


「へんなところいじるんじゃねぇぞ―」

「はーい」

 和やかな会話が交わされる今日この頃。俺は美少女と部屋でふたりきりという状況だった。まぁ、いつも部屋でふたりきりなんだけど自分の部屋となるとなんか感覚が違ってくるわけで。単純に明確に簡潔に言うと、ドキドキしている。だってしょうがないじゃん!男の子だもん!

 俺は部屋に蒼井を残して台所に向かう。当然、客人に飲み物を出すためだ。

 冷蔵庫を開くと驚愕な光景が広がっていた。

 カップラーメン以外入っていない。一体どうしたものか・・ただの水を出すというわけにもいかない。なにしろここらの水道水はまずいのだ。もし葵の体になにかあったら大変だ。

 冷蔵庫の扉を閉め、部屋にちょこんと頭だけ出す。

「ちょっと外に買い物行ってくるわー・・何もすんなよ」

「しないわよ」

「ホントだな?」

「この世界を統べる七人のおじいちゃんに誓って本当よ」

「おい、何だその情報は。初耳だぞ」

「知らないの?時代遅れね。と言っても、私以外知らなくても無理はないかな。何しろ私は――」

「いってきます」

 私は――の先が気になったが、これ以上蒼井の中二病発言に付き合ってはられない。

 あいつ中二病だったのかよ――。


 健二が出て行ってから蒼井はまず体を小さくしてベットの下を覗きこんだ。

「やっぱ、あるのよね」

 無事、第一の目的を達成した蒼井は次にパソコンの電源を入れた。小さな駆動音がなり、ピピッとディスプレイに青い画面が出る。

「パスワードかけてないのね、不用心だこと・・・・なんだろう、このファイル。『知性の糧―生きる希望』?うわっ!これって・・」

 蒼井はファイルの内容を大体把握したので右上のボタンをクリックしてウィンドウを消す。その後大きくため息を付いた。なにしろ蒼井が健二の部屋を探索し始めてからエロ関連の代物しか出てきてないのだ。

「あいつったらもう・・」

 蒼井は憂いを帯びたような笑顔をすると、メニュー欄からメールを開く。数分カタカタとキーボードを操作し、数行の文字を打ち込んだ後、蒼井は苦笑していった。


「――無事届いてね、お願い」


 それからすぐだった。

 蒼井は突然の発作で意識を失なった。

 

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