告げられる彼女の未来
一応全開までのあらすじ。めっちゃかわいいのがいた。以上。
「あの、早く扉を閉めてもらえますか」
「ああ、すまない」
何だこの子、髪の色からして意味わからん。飴のような水色で顔はかわいいというより綺麗系な顔立ちだった。話し方と顔立ちが上手くマッチしている。背丈は俺と同じ位でちょっと低いかな、リクライニング式のベットに座っているからわからないけど。とにかく何だこの子・・。
「そちらの方は?」
「私の親戚の宇城健二(うしろ_けんじ)だ。確か君と同じ年だ。仲良くやってくれ」
「はぁ・・」
あれ、俺が仲良くされる側なのね。
「出来損ないの顔がアンパンのヒーローみたいですね。夕方に放送している」
「だれがアンポンタンだ!」
「いえそこまでは・・・・」
前言撤回だ。この女なんかムカつく。
「まぁ、仲良くしたまえ、では私はこれで」
「あの、どちらに?」
「まだ仕事がたくさんあってね。ちょっと遠くに出張してくる。その間はそいつに面倒を見てもらってくれ」
「え!?聞いてません私そんなの!」
「俺も聞いてないんですけど!?」
「すまない、私も急いでいてね、安心しろ。その子は君に手なんか出さないさ」
「そういう問題では・・・・・・・・」
「じゃ」というと美心さんは部屋を出て行ってしまった。
沈黙の時間が約10秒続き、少女は口を開いた。
「なんて勝手な人なの・・信じられない」
少女はまるで世界の終わりのような顔をしていたがすぐにこっちを向いて口を開いた。
「ほら、あの・・・・うしろ・・・・うしろのアンポンタンさん。いつまで立ってるんですか。礼儀を知らないんですか?」
「礼儀を知らないのはどっちだ」
俺はベッドの横にある丸椅子をベッドから少し離した場所に移動させて座った。
「ところで、お前の名前なんて読むんだ?部屋の前のプレートに書いてあったけどわかんなくてさ・・・・あおい、あおい?」
「ご名答」
「は・・?ネタだったんだけど」
少女、蒼井葵(あおい_あおい)は目を細めて俺を睨んだ。いや、なんでだよ。
「ネタの名前で悪かったわね」
「いや、お前のせいじゃないさ、うん・・・・」
「何その顔。同乗するんじゃないわよアンポンタンが」
俺今どういう顔してんの?
「母がろくに頭を捻らずに考えついた名前よ。髪が青いから。って。自分の髪も青いくせに・・・・」
ふと先程すれ違った水色の髪の女性を思い出した。なるほど、あの人がお母さんだったのか。
「で、俺はなんて読んだほうがいいんだ?苗字の方のあおいか、下の名前の方のあおいか?」
「どうでもいいわよ・・」
「いや、微妙にイントネーションが変わってくるだろ。同じ字でも」
「別にアンポンタンになんと呼ばれようとダメージは同じよ」
「名前呼ぶだけでダメージ与えられるのか、俺すごいな。じゃあ苗字の方で」
「じゃあ私はアンポンタンって呼ぶわ」
「宇城でお願いします蒼井さん」
全く、なんて日だ。かわいいと油断していた女が中身はただの毒舌女じゃねぇか。なんかコミュ症の俺でも自然に会話できちゃってるし。嬉しいようで嬉しくないな。
うん、嬉しくない。
「ところで、なんでこんなところに来たんだ?前の病院から追い出されでもしたのか?」
「ただの金銭問題よ、罵りたければ罵ればいいじゃないこの最低男」
こいつもう窓の外から放り投げてしまおうか。なんで何も言ってないのに最低男とか言うのこの子?これは粛清しなければいけないな。
「おい社会不適合宇宙生命体及び毒舌女、こっち見ろ」
「なによ・・・・ッ!!!」
昨日怪我しためっちゃグロイ怪我を見せてあげましたよ。反応から見るに『こうかはばつぐんだ!!』って感じだな。満足だ。ハッハッハ・・・ブッ!
突然頭に謎の鈍痛が襲ってきた。あ、この女杖で殴りやがった。しかもステンレス製。めっちゃ痛い。
「なにすんだ!」
「あなたこそ何するのよ!ホント最悪ね!」
「お前に言われたくねぇよ毒舌低能女」
「あなたにだけは言われたくなかったわね」
なんか小学生みたいな喧嘩した。今日はそこまで話して、最後に蒼井が「さっさと帰りなさい、パン工場に」とか言ってきたので帰ってやった。
でも何故か不思議と初めてな気がしなかった。かといって昔にあいつと出会ってるわけでもないのだけれども。まぁ、それはおいおい考えるか。今日はつかれたから早く未来に飢えで苦しむ子供達を救うために寝ますかね。
と、思った矢先だった。診療所から出たところで美心さんからメールが送られてきた。なんとなくメールを開いた。
「そういうことかよ・・美心さん」
『彼女は昔脳に与えられたダメージであと十日しか生きれないんだ。だから彼女と一緒にいてやってくれないか――』
『すまない』
さすがの美心さんでもこれはキツイのだろう。今頃はどこかで涙を流しているはずだ。そして最初から俺を呼ぶつもりだったに違いない。偶然俺が不良たちから暴行を受けて美心さんのところに行っただけだったが全て必然だったのかもしれない。そして俺は残り10日間彼女――蒼井葵を満足させて、満足させて死なせてやらなければならないのか。
俺は柄にもなく、あの毒舌女のために泣いた。