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7.


7.


「意外と汚れていますねぇ」

 窓の周りを片付けながら、ケインが小姑のような事を言った。夕日の輝く時間はとうに過ぎ、間もなく辺りが完全に暗くなるだろうという時間。家の窓からは山の向こうに日が隠れていく様子を見る事ができた。網目のような窓の縁には、うっすらと埃がたまっている。

「何だ、この程度。私の家でもこんなものだ」

 ジョーイがベッドのシーツを整えながらケインの反応に呆れた。窓を拭きながら、ケインはそれに返す。

「うちでは毎日掃除をします。それが普通だからです」

「お前の普通が世間の普通と思うな」

「それもそうですね。夫婦仲が良い方が、珍しかったりしますしね」

 皺を伸ばすジョーイの手が止まった。窓枠の埃を拭く静かな音だけがエリオットの寝室に響く。

「……お前、喧嘩売ってるのか?」

「いいえ?」

 ケインはジョーイの方を見もせずに答えた。

「ただ、ねえ?まだ子供もいないのに家庭内不和とは、これから先が心配になりますよ。まあ、私には関係ありませんがね」

 わざとらしく声を張って言った後、ケインはジョーイがシーツから手を離したのが分かった。布ずれの音の後、ジョーイの抑揚のない声が上がる。

「ケイン、お前は頭が良いかもしれんが、想像力はないな」

「そうですね。予想していたよりも、あなたは沸点が低いようだ」

「ほーお、そうか。……知ってるか?」

「何をです?」

 ケインが窓を拭く手を止め、後ろを振り返る。ジョーイは指を組んで、軽く肩を回していた。

「予想は裏切る為にあるんだ」

「なるほど」

 ケインも布巾を手放した。ベッドを挟んで、二人は敵意のこもった目で互いを見る。

 どちらともなく動こうとしたその時、別の声が上がった。

「やめろ」

 二人がびくりと震えた。二人が目を向けると、部屋の入口からマークが入口の縁に頭をぶつけないよう背を曲げた格好で二人の様子を見ていた。

「お前達、目を、離すと、すぐ、こうだ。いい、加減、喧嘩、するな」

 マークは低く唸り、二人を見下ろした。彼はエリオットを含めた四人の中で最年少ではあるが最も大柄であり、間近で対するとえも言われぬ迫力がある。ただ、今の彼は食事の準備をしていたため、エリオットのエプロンを無理に着ている恰好だった。最も小柄なエリオットのエプロンは今、彼の肩や胸によって今すぐ破れてもおかしくない程に張りつめており、彼の体躯を一際大きく見せると同時に滑稽な印象をも見る者に与えた。

 彼のそんな姿に、ジョーイとケインは反応に困って黙り込む。その後、しぶしぶといった体で自分達の仕事に戻った。

「早く、掃除、済ませる。でない、と、家に、帰れない」

 マークがそう言うと、ジョーイとケインの手が少し早くなった。

 日が完全に落ちるまであと少し。エリオットの伴侶が帰るのも、時間の問題だ。

「……正直、あまり、会いたくない」

 そう呟いて、マークは厨房に戻った。

 

 エリオットは一目散に扉へ向かい、閉ざされた扉を開こうと両方のノブに両手をかけた。しかし、ノブはどちらも向こう側から捻られているかのようにびくともしなかった。背後に迫る蜘蛛の気配に、エリオットはすぐさま横に跳んだ。二匹の蜘蛛の顎が殺到し、先ほどまでエリオットの首があった位置でがちんと打ち合わされた。

 エリオットは転がりながら足に絡まるスカートを手荒に払い、片膝を立てて手近な書架に手を伸ばす。取り出した本を近くにいた方の蜘蛛に投げつけた。本は空中で広がり、そのせいで失速してエリオットの狙いより手前の位置に落ちる。その本を見て、エリオットは背表紙の方を向けて投げるべきだったと後悔した。

 すぐさま踵を返したエリオットを、二匹の蜘蛛が追う。資料室の中で整然と並んだ書架と壁との上を、長い八つ足が素早く這い、蜘蛛の巨体を逃げるエリオットへと殺到させた。襲撃者に見下ろされながら追われるエリオットは、焦燥感から大きく息を乱した。

 蜘蛛の一匹が大きく跳ねる。蜘蛛は空中で、その姿を変えた。

 大きく広がった虫の足が縮み、丸く膨れた蜘蛛の腹がしぼむ。逆に、胴から生えた犬の足がけいれんするように震えて長さを増した。蜘蛛は蜘蛛の特徴を縮み上がらせると、身をよじって四足で床に着地した。と同時に、その体がエリオットにまっすぐ飛んだ。その動きはまさに獣のそれで、蜘蛛のままでいるもう一匹よりもはるかに速い。

 エリオットは咄嗟に書架に手を入れ、分厚い本の背表紙を迫る顎に向けた。犬のような姿に変わった蜘蛛の顎がそれに食らいつき、エリオットの手から乱暴に本を奪い取った。その間際、エリオットは八つ目の獣の牙が分厚いはずの紙の束に易々と沈み込んでいたのを目撃した。もし少しでも遅ければ自分の喉に穴が開いたのが分かり、エリオットは戦慄した。

 エリオットは他の本を引き抜き、再び後退する。本を加えた方の獣が本を捨て、もう一匹の蜘蛛も獣に変わって地に降りた。

 エリオットは今ほど剣を持って来なかった事を悔いた時はなかった。しかし、よしんば持っていたとしても攻めあぐねていただろう事も予想できた。蜘蛛の姿の時と違い、獣らしく四足で低く沈んだ姿勢を取っているせいで弱点の腹に斬りかかれないからだ。その上、背や首が蜘蛛の外骨格で覆われており、エリオットの剣の腕ではそれを斬る事も叩き伏せる事もできない。

 しかも悪い事に、エリオットの向かっている先は資料室の角だった。二匹の獣に追われながら書架に挟まれた道を急ぐと、書庫の角からカーマンと、そしてセラが現れた。エリオットは進路を阻まれ足を止める。

「いい加減大人しくなさい」

 そう言うセラの目は、偶然迷い込んだ不幸な女給を見る目ではなかった。

「まさか潜入なんて大胆な真似をするとはね。……お似合いよ」

 エリオットは自分の姿を改めて見直し、顔を真っ赤にした。当然のようにばれた事にも羞恥心を煽られた。

「ほ、ほっといてよ!そっちこそ、子供のお守り探しでこんなトコにいるのはおかしいでしょ!?ヒイロノカネならその辺で売ってるのに!」

 ムキになってのその発言に、セラが眉をひそめる。彼女の疑問に答えるように、カーマンが言った。

「ああ、ナバンの多くの民にとって、ヒイロノカネとはそういうものだ。本当の価値は知られていない」

「ああ、そうなの。貴重な資源を何だと思ってるのかしら」

「おかげで私達はやりやすいんだ」

 エリオットには二人のやり取りの意味が分からなかった。ヒイロノカネが彼等にとって価値のあるものらしい事は分かったが、その理由が分からない。ナバンの外務大臣とジルトールの親善大使が

 戸惑うエリオットは獣の唸り声に気付き、そちらを見る。獣二匹は身を低くし、今すぐにでも飛びかかれるように足に力を込めていた。エリオットは本を引き抜いて喉元を隠したが、些細な抵抗でしかないのは明らかだ。

「今ヒイロノカネに注目されると困る。君が物忘れの激しい方とは思えないのでね、お喋りできない体になってもらうよ」

 カーマンの無慈悲な声。それに応えるように、セラが指を鳴らした。

 二匹の獣が宙を跳ぶ。エリオットは本で喉を隠すが、その本は大きい割に非常に薄いものだ。獣の牙から身を守るには頼りない。一匹に本を奪われれば、もう一匹がのしかかってくるのは明らかだ。身を守る得物を持たないエリオットは、来るであろう痛みに備え身を強張らせた。

 しかし、獣達の顎はエリオットの眼前に来た時、揃っていきなりエリオットから逸れた。ぎゃん、という甲高い声が上げて獣たちが身をよじり、無様に床に倒れる。

「……え?」

 エリオットと、セラ達とが戸惑い獣を見た。獣達は立ち上がろうと足を震わせるが、喘ぐように一際大きく声を上げて再び倒れた。全身をけいれんさせ、苦しげに唸りながら泡をふき出し始めた。明らかに苦しげな様子だ。

「こ、これって……?」

 驚くエリオットは、獣の首にあるものに気付く。淡い燐光を発する、光る輪が獣の首にはめられているのだ。起伏もつなぎ目もないそれは、獣の首の殻の隙間に入り込みながら今もぎりぎりと径を縮めている。喉を締められ、獣達の床を掻く四つ足の動きは次第に弱々しいものになった。

「ど、どういう事だ!?」

 カーマンも動揺し、セラに聞く。セラは厳しい表情で獣達を見、チッと舌打ちした。

「あの女、こんな魔法を……!」

 セラが忌々しげに言った時、足音が上がった。エリオットとセラ達とが音のする方へ目を向ける。一歩、また一歩と彼等に近づき、足音の主はエリオットの後ろから姿を現した。

銀色の髪に、褐色の肌。見覚えのあるその姿を見て、エリオットが声を上げた。

「リズさん、何で!?」

 そう呼ばれたリズは、気だるげに首を振って長い前髪を後ろにかき上げた。髪を撫でつけるその仕草には、多分に苛立ちがにじんでいた。

「何でって、こっちの台詞よ。ずいぶん可愛い恰好じゃない」

 疲れのにじんだ声だったが、からかうような響きで言われエリオットは再び赤面した。

「ほ、ほっといてください!」

 食ってかかろうとするエリオットをリズは片手で制し、もがき苦しむ獣達の前で足を止める。動じた様子のないリズに、セラが忌々しそうに口元をゆがめた。

「アンタの仕業ね」

「あら、それが地なの?通りで昨日のディナーがおいしくない訳ね」

 この台詞はエリオットにとっては面白くないものだった。二人のその食事を用意したのは、他ならぬエリオットだからだ。だが、セラにとっては更に不愉快なものだった。リズは最初から、セラを疑いの目で見ていたのだ。

「まさか本当にナバンでこっちを嗅ぎまわるのがいたなんてね……」

「胡散臭い和平に疑問を持つのは、一人二人じゃなかったって事よ。ねー、外務大臣様?」

 カーマンに対するリズの問いかけは、彼を大きく動揺させた。

「なっ、なな……!?何を」

「どーんな話を聞かせて和平を結んだか、是非聞きたいのよ。どっちが先に、どんな取引持ちかけたのかね。手柄話のはずなのに、あなたちっとも言わないそうじゃない。何か秘密があるんでしょ?」

 リズのずけずけとした発言に、カーマンがみるみる青ざめる。セラが、続く言葉を遮るように怒鳴った。

「うるさい!魔女がこんな所で何をしている」

「そっちだって魔女じゃない」

 リズが当然のように放った一言。エリオットは驚いた。セラに目を向けると、彼女は表情を大きくゆがめていた。魔女である事を否定していない。

 リズが足元で今も泡を吹いている獣を見下ろした。

「この怖いワンちゃん呼んだのもあなたでしょ?飼い犬なら首輪をつけておかないと」

 そう言って、リズはエリオットにだけ見えるよう、右の手のひらを見せた。そこに描かれた円の中で、リズを表す中心の円の隣で点が二つ震えている。そして現に、リズの隣には首を締め上げられ息も絶え絶えになっている獣が二匹転がっていた。

「道理であの時私を襲おうとした訳か……!」

 セラの一言で、エリオットはリズの去り際の台詞に合点がいった。

『蜘蛛にあの子を追わせたのは、あたしなの』

 蜘蛛を呼び出したのがリズではなくセラなら、わざわざリズがエリオット達にそう言ったのも納得できる。

リズが蜘蛛の動向を知る事ができたのは、手のひらの図形が蜘蛛ではなく、蜘蛛にはめた首輪を表したものだとしたら話が通る。首輪がリズの魔法によるもので自在に締められるのなら、ある程度命令に従わせるのも不可能ではない。

「せ、セラさん魔女だったんですか!?」

 エリオットが一番衝撃的だった事実について尋ねる。

「そうよ、言わなきゃいけなかった?」

 うっとおしそうにセラ。そのやり取りに、青い顔をしたカーマンが狼狽してセラに怒鳴った。

「お、おい!どうするんだ!?」

「慌てないでよ、あたしは魔女よ」

 そう言うと、すう、と彼女は息を吸い込んだ。

 その途端、辺りの空気の質が変わった。

「編まれし御霊、集いし力。火よりも赤き緋の煙……」

 淀みなく流れるセラの声。空気が石のように冷え、セラに向かって静かに流れる。扉はおろか、窓もしまった密室なのに、だ。セラはなおも何事かを言い続けているが、エリオットには聞き取れず、言葉の意味も分からなかった。

「あら、魔法?」

 リズが動じた様子もなく、訳知り顔で言う。魔法を初めて見るエリオットには、未だに理解できない。

 やがてセラの周りに、靄のような白いものが漂い始めた。セラはなおも何事かを呟き続け、靄はますます広がっていく。色も、白から次第に赤みがかったものになり、それは瞬く間にセラとカーマンとを覆い隠した。

 リズがセラの意図に気付く。その直後、瞬く間に靄は失せた。セラとカーマンの姿も、無い。

「消えた……?」

 エリオットが呆気に取られ、まじまじと二人のいた場所を見る。書架の陰を覗いてみるも、人影ひとつ見当たらなかった。

「あーらら、逃げちゃった。勝てないと思ったんでしょうね、賢明だこと」

 リズが大げさに肩を竦め、倒れた獣二匹を改めて見ると、息が無いのを確認した。

 彼女が右の手のひらにふっ、と息を吹きかけた。それだけで彼女の右手に描かれた図形が全てかき消える。同時に獣達の首から光る輪も消えた。

「さて」

 リズが腰に両手をあて、エリオットに向き直った。リズの目付きは、セラやカーマンに向けていたものよりも鋭い。そんな視線を向けられ、エリオットは委縮した。

「な、何です?」

「よくも勝手な真似をしてくれたものね」

「……へ?」

 エリオットは耳を疑った。

「せっかく現場を抑えようと隠れてたのに、あなたのせいで逃げられたじゃない。アイツ等がヒイロノカネの在処を見つけた時に取り押さえてやろうと思ったのに、台無しよ」

「へ、え?え?」

 何が何だか分からずエリオットは狼狽する。そのエリオットを見下ろし、リズがかわいそうなものを見る目になった。

「まさかあなた、アイツ等の狙いも知らずにそんな恰好で見張ってたの?勇み足もいい所ね」

「え?えと、リズさんは分かってたんですか?」

「そうよー?あたしナバンの、えらーい大臣様に食わせてもらってるもん。その人に頼まれて、胡散くっさい和平の真実を調べてたのよ。まさか、追っかけてた相手と同じ晩御飯食べるとは思わなかったけど」

 エリオットはますます訳が分からなくなり、ついには何から質問していいかも分からず言葉にならない声が喉から漏れるばかりになった。

「え、えあ、うー?」

「あ、壊れた。こりゃあ、この子以外にも聞いてもらうしかないか」

 リズは戸惑うエリオットの胴に片手を回し、もう片方の手を頭上に掲げた。指を一本立て、天井にその先を向ける。

 その指先に、ぽっ、と光が灯った。

 リズの指先が動く。指先の光はその軌跡を空中に残し、文字通り空中に円が描かれた。リズが手を下げても、その光の輪は空中に残り、リズの頭上で浮き続ける。リズはまだ光の灯っている指先で、その円の中にさらに図形を書き足した。腕から力を抜いて描いたそれは、ばねの切れ端を思わせる円の書き損ねのような線だった。リズが手を引くと、浮かび上がった図形は魔法としての意味を成した。

 線を書き加えられた円が一際強く光り、同時にリズの足が浮く。エリオットを抱えた彼女の体はそのまま高度を増し、不意にひゅぽん、と音を立てて消えた。その現象は、まるで二人が円に吸い込まれたかのようであった。円は役割を果たすと、自らもその中心に吸い込まれるようにして消滅した。

 資料室から人の気配がなくなる。

 しばらく経った頃、二つの獣の死体からちりちりと静かな音が上がった。音は徐々に大きくなり、ぼっ、と一際大きな音が上がった瞬間、死体は炎を噴き出した。炎は死体の上で燃え広がるが、どういう訳か床に敷かれたカーペットやすぐ傍にある書架の本に燃え移る様子は全くない。その炎は死体の殻や毛皮だけを焦がしながら蝕み、死体はますますその体積を減らしていく。ついには死体の骨すらも食い尽くした炎は小さくなり、残り火となってちろちろと床の上に残るだけとなった。やがて炎は焦げ跡一つ残さず、ついに消え失せた。

 資料室の中から生き物の存在が完全になくなる。あちこちに灯された燭台の火が資料室を照らし、静寂が辺りを支配し始めた。

 靄が再び現れたのはその時だ。火元のないはずの床の上、ちょうど前までセラとカーマンのいた場所で赤い煙が漂い、濃度を増して広がる。煙が晴れると、それと入れ替わるようにセラとカーマンの姿が現れた。

「い、行ったのか?あれは何の魔法なんだ!?」

 カーマンが未だうろたえた様子でセラに尋ねる。

 セラはカーマンの疑問には答えず、チッ、と舌打ちした。

セラが行ったのは、姿を消す遮蔽の魔法だ。魔法で出した赤い煙を周辺の景色を映すカーテンのようなものに変え、それで自分達を隠す魔法である。それで二人は逃げずに、エリオットとリズのやり取りを最初から聞いていたのだった。

「あの魔女がナバンの大臣様に飼われてたのは予想ついてたけど、まさかずっと泳がされてたとはね。犬蜘蛛に首輪まではめてた上、あたし達の関係にも前から気付いていたみたいだし。……やっかいな女ね」

「どうするんだこれから!ヒイロノカネの出土場所はまだ分かってないんだぞ!見つけても、その瞬間あの魔女が我々を取り押さえる!手詰まりじゃないか!」

 焦るカーマン。それに反して、セラは冷静だった。

「そうかしら?四六時中張り付いてる訳じゃないみたいだし、その合間に見つければいいのよ」

「簡単に言うな!出土場所は私でも未だに分からないんだぞ!そう都合よく見つかるものか」

 青い顔でわめくカーマンとは対照的に、セラに動じた様子はなかった。獣のいた辺りに散乱している本や紙束に目を落としている。犬蜘蛛に追われるエリオットがばら撒いたものだ。無造作に広がった本のページに目を落とし、セラが笑みを浮かべる。

「幸運というのは、思わぬ形で現れるものね」

 そう言って、彼女は本を拾い上げた。

 その本はナバンのおとぎ話をまとめたもので、広げられたページには挿絵として地図が描かれていた。そして、その挿絵に沿うように文章があり、こう書かれている。

『微笑み山から、夕日のように赤く輝く不思議な石がたくさん出ました。これはいつしかヒイロノカネと呼ばれ、人々に親しまれるようになりました……』



拙作に評価をくださった方々や、お気に入りに登録してくれた方々にはいつも感謝しています。

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