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掌編小説

死神トーク

作者: 斎藤康介

会話文が書きたかったのです。

設定は意味ないです。

【登場人物】

マルシェ:死神。おしゃべり。

クラスト:新人死神。無口。

チアル:女死神。


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 高層ビル群の一角にマルシェ・クラスト・チアルが並んでいる。

 ビルの下には人だかり。



マルシェ

「ある人間が居て、その人間は特に人目を引くような才能は何もなくて、家に帰れば奥さんの尻に敷かれ、会社では上と下の板ばさみ。存在価値なんて柄にも無いこと考え始めちゃって、ベンチに座って時間を過ごす日々。まぁそんな男にもささやかなる瞬間を見つけたわけ。それが『覗き』。欲望の奥に潜む魅惑なるパンドラ。箱は開かれ、その男はどうなった思う?」


クラスト

「……」


マルシェ

「で、この有り様」



 マルシェは屋上の縁に立ち、地面を指差す。



マルシェ

「落ちた」


チアル

「落としたの間違いじゃない?」


マルシェ

「いや、落ちたんただよ。僕は何もしてない。ただ見守っていただけさ。落ち行く様を、血が流れる様を」


チアル

「でも人間ってホント馬鹿よね。わざわざこんなに痛いことして死ななくもいいのに。巻き添えになった人間って知ってる? 彼女ね、今日が初めてのデートの日だったの。朝から楽しそうで。まったく死ぬならもっと綺麗に死ねればよかったのに」


マルシェ

「悪い人間ではなかった。面倒な奴ではあったけどね。巻き添えをくった彼女は本当に運がないね。もしこの世を司る神がもっとマシならまともな死に方をしたかな」


チアル

「何も変わらない。結局は死ぬわ」


マルシェ

「死なない人間はいない。死神(僕たち)はそこまで職務怠慢ではないか」


チアル

「あなたが言うこと?」


マルシェ

「ふふっ、これは手厳しい。なぁクラスト、そうは思わないか?」



 クラストは無言のまま立ち上がる。二人を見ることなくビルの縁へ歩き飛び降りる。

 下には血の海と二人分の人を模ったテープ。警察と野次馬。

 クラストは血の海の上へふわりと立ち降りる。



チアル

「あれでいいの?」


マルシェ

「『あれで』って?」


チアル

「ああいう態度よ」


マルシェ

「多感な年頃なんだよ」


チアル

「でも、」


マルシェ

「起きるべきときに物事は起きる。それを楽しむことは有意義な行為だと思わないかい? タネを知ってるマジックショーなんて誰も見に行かない。事情の知れた出来事なんて体感する価値もない」


チアル

「他人事なのね」


マルシェ

「他人事だよ。僕たちはそういう存在じゃないか」


チアル

「……そうね。私も行くわ。さようなら」


マルシェ

「さようなら」



 チアルはマルシェに背を向け扉に向かって歩き出す。

 マルシェは一人で笑っていた。

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